凶刃が振り下ろされる。
「うわぁぁぁ、痛い、痛い、止めてよお」
光の剣が何本も体に突き立ち幼子の体を地面に縫い付けていた。
神の剣の前ではリビングアーマーの装甲も意味をなさない。
手の甲、手首、前腕、二の腕、足首、下腿、大腿。
中手骨間、手根骨、橈尺骨間、上腕骨、足根骨、脛腓骨間、大腿骨。
あるものは骨を穿ち、あるものは骨の間を通ってブレイブの体を地面に磔にしている。
その剣は実際の傷を与えてはいない。
肉体ではなく精神に向けて与えられる罰。傷を与えず拘束し、ただ痛みだけを与えていた。
「やめ、て。許してぇ」
容量を越える痛みに対して。ブレイブは涙を流してルチアに許しを請う。
弱々しく動く唇、すでに目から光は失われていた。
ルチアは無言。
しかし、ブレイブを見つめる目は熱っぽく、上気した頬と堪えきれず溢れる吐息が彼女の興奮を物語っている。
純白の衣装の内側では下着が湿り気を帯びていた。
「ああ、ブレイブ。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。」
ヴィヴィアンは止めどなく涙を零しながらブレイブに謝り続ける。
私が弱かったから、ルチアに勝てなかったから、ブレイブがあんな目にあっている。
ヴィヴィアンはむせび泣く。
「貴、様ぁぁ!」
ヴェルメリオの額にははち切れんばかりに血管が浮かび上がり、噛み締めすぎた歯からは血が滴っていた。
この身が動くのならば首だけでも構わない。あの女の首を噛みちぎってやる。
ヴェルメリオは呪詛を込めた瞳でルチアを睨みつけながら、体を動かそうと力を振り絞る。
”あ、う、あ…。”
アンのか細い呻き声はブレイブの耳だけに聞こえていた。
僕はブレイブの鎧なのにこの子を守れていない。僕の体で包んでいるのに苦痛を感じさせてしまっている。
自身も苦痛を受けながら、アンは少しでもブレイブの苦痛を肩代わりしようとブレイブの心に深く交わろうとする。
「………」
白衣は無言で耐える。
こんな痛みは何でもありません。早くなんとかしなくては。それまでなんとか頑張ってください、ブレイブさん。
白衣は必死で自分に言い聞かせながら、希望の糸口を掴もうとしていた。
ブレイブが磔にされているのは元から広がっていた血だまりの上。
固まって乾いていく血だまりに、ブレイブの涙は吸い込まれていた。
「あ、はぁ」
ルチアは麗しい唇から艶かしい吐息を漏らして体を震わせた。
背筋を走る快感が堪らない。激しい動悸が肩で息をさせる。
体の奥底で疼く淀んだ感情が彼女を急かす。
「みんな、いい顔をするじゃない。痛い?、坊や、痛いならもっと訴えなさい。彼女たちに救いを。私に許しを。そうすれば誰か、が助けてくれるかもしれない」
ルチアはブレイブの顔を蹴る。適度に加減して。すぐに壊してしまっては楽しめない。
苦痛に呻くブレイブの顔を見て、ルチアの体に再び震えが走って甘い痺れが残る。
「可愛い。今なら、ヴィヴィアンがあなたに入れ込んだ理由もわかるかもしれない」
昏い悦びを宿した瞳がブレイブに注がれて歪む。
ブレイブの前でルチアはしゃがみ込む。この角度ではブレイブからはスカートの中身が見えて、濡れた下着に気づかれてしまうかもしれない。
普段ならばそんなことは許さないが、昂った心ではむしろ見せつけたいとさえ思ってしまう。
ただのナイフを取り出してルチアは弄ぶ。
「次は皮を剥ぎましょうか。どこからがいい?。頭、顔、首、手、足、お尻、お腹。好きなところを選んでいいのよ」
そこでルチアはふと思いつく。
「いいことを思いついたわ。おちんちんにしてあげる。戦乙女様に割礼してもらえるなんて光栄に思いなさい」
ルチアの嗜虐的な笑みが深まる。
ブレイブにはもうルチアの声は届いていなかった。
絶えずに響いてくる苦痛が思考を奪い、希望を、勇気の炎を消していた。
もう殺されてた方がマシだ。
ブレイブの心がそう訴えようとした時、声が聞こえた。
”…、イ…。ブレ、…。…レ、…ブ。諦、…る、な”
幻聴だろうか。痛みのあまりに聞こえてきたそれは、何だか大事な人の声に似ている気がする。
”ブレイブ、…るな。あき、…な”
大事な人とは誰だったか。痛みに塗りつぶされた頭ではたどり着けない。
”諦めるな、ブレイブ!”
靄がかかった頭に力強い声が響いた。ブレイブの目に光が戻り始める。
これは大事な、大好きなカーラの声だ!
カーラお姉ちゃん。
唇から溢れた声は、掠れて音にはならなかった。
だが、カーラにはブレイブの声が届いた。
”そうだ。『お前の』、カーラお姉ちゃんだ”
カーラの力強い声が頭の中に響く。
”ブレイブ。なんだその姿は。相手が強くて負けてしまうことはある。今、勝てない相手というのは存在する”
カーラの声にブレイブは自分の鼓動が早くなるのを感じる。
”だ
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