「は〜い、いらっしゃいませ〜」
鰻女郎の店主が客を呼ぶ。
「生きが良くてぷりっぷりの鰻ですよ〜。今なら一匹五百えーん」
「五百円って、これが?」
出店の前に立ったのはとある料亭の板前。
「はい 」
鰻女郎がにっこりと微笑む。
彼は美しい彼女の柔和な微笑みに目を奪われてしまう。
ぼうっ、とする彼を彼女はにこにこと見つめている。
「ゴホン。この質の良さでそんな値段は安すぎるだろう」
咳払いをしてごまかしつつ彼は尋ねる。
「大丈夫ですよ〜。なんせ私の家の近くの川で取ったものなので〜」
「ほー。これだけの質ならばうちの店にも卸してもらいたいくらいだ」
板前が感心した様子で彼女に言う。
「本当ですか、嬉しいです〜」
ほんわりと笑う彼女。
「本当かい。じゃあ、今日はまず一匹もらって味を確かめてみてから明日話をさせてもらおう。明日も店をだすんだろう?」
「はい、出しますよ。でも、あなたが望むならいつでも」
淡く頬を染めながら答える鰻女郎に板前はドギマギしてしまう。
「じ、じゃあ、五百円だね」
板前は鰻女郎に五百円を手渡す。
「ありがとうございます〜。それでは好きな鰻を掴み取ってください」
「よしっ。どいつにしようかな。お、あいつなんて良さそうだ」
板前は中でも大きく太く悠々と泳ぐ鰻に目をつけた。
「おりゃ」
ザプン。音を立てて水槽に手を突っ込むとその衝撃で鰻たちが暴れ出す。
バシャバシャと波打つ水槽の中で板前は目当ての鰻に掴みかかる。
「おっと、これは思ってたよりも生きがよすぎるな」
笑いながら板前はなんとか鰻を掴み上げようとする。
ぬるぬる滑ってなかなかつかみ上げることができない。
今まで何匹も鰻を扱ってきた彼でも持て余すくらいにその鰻は生きがよく、太くて掴み上げることが出来ない。
「せいっ、うわわっ」
なんとか水の中から持ち上げたものの、鰻は手から滑って飛んで行ってしまう。
「きゃっ」
鰻は店主である鰻女郎の方に飛んでいき、あろうことかその豊かな胸元へと入り込んでしまう。
鰻が服の中で暴れる。
「きゃっ、アんっ、にゅるにゅる動かないで〜」
にゅるにゅる、にゅるにゅる。鰻が胸の中で動くたびに彼女の豊満な乳肉がぐにぐにと形を変える。
鰻についていた水分と粘液で着物がべったりとして形の良い胸に張り付く。
今にもまろび出してしまいそうに、暴れる暴れる。
「ぅう、ん〜」
艶めかしく彼女自身もくねる。
ゴクリ。板前は彼女に聞こえてしまうくらいの大きな音で生唾を飲み込んでしまう。
「お、お願いいたします。取っていただけないでしょうか。ハァんっ」
「えぇっ」
鰻女郎の熱っぽい懇願に板前は戸惑う。
「早くしていただかないと、私ィ」
にゅるにゅる。
ひときわ大きく身を捩らせて身悶える鰻女郎。
「いいのかい?」
「お願いしますぅ」
覚悟を決めた板前に向けて鰻女郎の艶っぽい吐息が漏れる。
「よ、よぅし。行くぞ」
覚悟を決めて板前は鰻女郎の胸元に手を突っ込んだ。
「ひゃァン」
鰻女郎の嬉しそうな声とともに着物の裾から鰻が飛び出して水槽へと戻る。
「あ、あれ?」
後に残ったのは鰻女郎の胸元に手を突っ込んだままの板前。
手にはぬめりながら熱を帯びている柔らかいモノの感触。
「ごっ、ごめん」
「ふわァ」
急いで手を抜こうとするものの滑ってむしろさらに手が入りこんでしまう。
腕をむにゅむにゅ、にゅるにゅるとした柔肉に挟み込まれる。
「えっ、えええっ」
慌てふためけばふためくほどに彼女に滑り込み、体ごとのしかかってしまう。
「そ、そんなぁァ、ンぅ」
板前に押し倒され体を弄られながら、鰻女郎は嬉しそうな喘ぎ声をあげる。
そうして、自分の粘液でぬるぬるになった板前を抱きしめて胸の谷間に押し付けながら。
「私が掴みとられちゃいました」
えへへっ、と幸せそうに笑う彼女に、板前は苦笑いを返すしかないのだった。
後日、料亭には鰻女郎の女将も立つようになる。
せいのつく鰻を食べられるということで料亭は大評判になったという。
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