12.戦闘開始

「そんなことが可能なのですか!?」
「ええ、彼女たちは実際に可能にしました」

私の説明にヴェルメリオが何度目か分からなくない驚いた顔をしました。

神を降ろすには条件を整えてやればいい。
必要なものは、降ろしたい神にまつわる聖具、その神の寄坐(よりまし)になり得る適合者、そして祭壇。
それらの条件を満たせば満たすほど、その神を現す記号を備えれば備えるほど、神が顕現する確率は高まり任意の神を顕現させやすくなる。
彼女たちはそれを調べに調べて整えた。気の遠くなるほどの過程をただひたすら執念のみでひた走る。

今回、森の王冠を奪ってケルンを攫ったことから、おそらくケルンを適合者としてあの神を顕現させるのでしょう。
ケルンはサテュロスなのでバッカスを顕現させそうですが、バッカスの顕現に必要な”最初のブドウ酒”は去年の私の誕生パーティーで空けてやりました。
ざまあみろです。
それに、バッカスの顕現には森ではなく大地に関連する祭壇が必要です。森の中の町であるバーダンでは条件を満たすには弱いです。

そして、神を殺すにも記号を揃えてやればいい。
例えば神殺しの逸話を持つ槍や弾丸など。神殺しの概念を相手に叩き込む。寄坐に降ろされ肉をもった御身を殺すことで、槍の毒は神域に届く。
もちろんそれを使いこなすだけの適性と力量は必要にはなるが、ルチアもモノスのメンバーもそれは備えている。
神殺しは言うまでもなく、禁忌の一つ。行ったものにはすべからく罰が下される。しかし、彼らにとってはそれは誉であり、なんら枷になるものではなかった。

彼女が持っていたのはミストルティンの枝。
かつて光の神を唯一傷つけ殺したヤドリギで出来た槍のレプリカ。
それは神殺しの性質だけでなく、ご丁寧に”世界が滅びた後”にその光の神が復活するという、彼女たちにとって都合のいい性質まで備えている。
しかも彼女たちはそれを複数保有していた。ルチアが仄めかした話から集めただけではなく作ったということ。レプリカであろうとも神殺しの宝具なんて人間や魔物にも作れない。
それが意味するのは、レプリカを作成するためのオリジナルを保有しているだけでなく。

彼女たちの後ろには、神がいる。

地上だけでなく、天界もドロドロです。





「ブレイブさんが捕らわれているのはあの教会です」

私たちは白衣の案内でブレイブが捕らえられている教会に着きました。
街中にある普通の教会です。こんな場所にルチアが陣取っているなんて。もしもルチアとの戦いが長引けば大変です。
私は部下に命じて、私たちが侵入し次第に付近の住人を避難させるように指示を出しています。
戦いになれば、ルチアは周囲のことなんて考えません。むしろ嬉々として被害を大きくするでしょう。

「それでは手筈通りに」
私たちは頷きあって二手に分かれます。

ブレイブ救出チームは、オブシディアン(忘れられていないでしょうかアンの本名です)、白衣。
対ルチアチームは、私ヴィヴィアン、カーラ、ヴェルメリオ。
ブレイブの位置がわかっている白衣が先導してアンとともにブレイブの元にたどり着いたら、ブレイブにアンを装備させて脱出する。その間、私たちはルチアを足止めする。もしかしたら、ルチア以外にもモノスのメンバーが潜んでいるかもしれません。
ここまでくれば白衣の探査魔法でブレイブの周囲の様子もある程度探れるようで、現在ブレイブの周りに人はいないそうです。

もしかすると、ケルンに何かしているのかもしれません。
それならルチアの元に向かえばケルンもいるはずです。対ルチアチームはそのままケルン救出チームも兼ねています。
もし殺されるとしてもそれは神を呼び出した後で最後になりますが、大丈夫とは言えません。彼女も早く助けださなくてはいけません。

白衣とアンは先行して裏口から入って行きました。
白衣の探査魔法を駆使すれば、相手にバレることなく進むことができるでしょう。自分の体を解いて探査糸にするなんて荒技よくやります。
白衣の体を解いた糸が一本、私たちの元には残されています。
ブレイブの元へたどり着いたもしくは敵に見つかった場合に合図が送られ、糸が反応するようになっています。
合図が来たら、私たちは教会に真正面から突入して相手の注意をこちらに向かわせます。ケルンの救出に向かえば、ルチアはこっちに来ざるを得ません。もしもブレイブの所へ向かうとしても、白衣は自分だけならば絶対にブレイブの元にたどり着けると言っていたので、私たちがたどり着くまでは時間を稼げるはずです。
白衣が絶対というならば、絶対と言える方法があるのでしょう。

私たちは白衣の合図を待ちます。



これはブレイブの元にたどり着いたという合図。

上手くいったようです。
私たちは少しホッとしつつ、教会正面から乗
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