ゆらゆらと、私は微睡みの中で揺られていた。
私の視界には切り取られた天井が存在する。楕円の天井。私は自由の効かない体で横たえられ、ただボンヤリと、それを見ているしかないのだ。チラリと辺縁に映るのは、木の柵。それで区切られたこの範囲のみが、私に許された領域。
別段私は拘束されているわけではない。ただ、動かないのだ。私の四肢は自重を耐えられるようにはなってはいなかった。
掌を握る。動きはする。しかし、握り締める、と言う行為にはならなかった。
無力感。それがヒタヒタと、どこまでも影のように湿った足音を立てて後ろにいる。
ゆらゆらと、心地の良い律動を刻む私の寝床。
それがせめてもの慰めか。自らの手で何も成せる行為がない。これはまさしく絶望に違いない。だから、泣く。私は理性としてその衝動を押しとどめようとするが、いかんせん、肉体の要求と、心の渇望は、私の理性の範疇を超えていた。
それに、空腹だった。
私の今のこの体は、どうにも、空腹に弱い。
私は泣き出す。
まるで火のついたように。途端、烈火、炎の中で栗が弾けたかのように、
ドタドタ
すると、私の切り取られた世界に、走り寄ってくるものがいた。
「ロディ起きたッ、次、次おっぱいあげるの私の番なんだから」
「こら、そんなに慌てたらロディびっくりするでしょう?」
可愛らしくも闊達な声音と、おっとりとした響き。初めの少女はいそいそとシャツのボタンを外し、小ぶりながらも丸みのある、美しい乳房を曝け出した。
彼女は私を抱き上げる。そして、
「ほーらロディー、お腹いっぱいになるまで飲んでねー」
彼女の、繊細なまでに美しい桜色の乳首が私の唇に押しつけられてきた。慈愛の籠った表情。そして、期待を込めた瞳。そこには、母性と同時に、女としての昂りが混在していた。
私は一抹の気恥ずかしさを感じながらも。
その甘美な誘惑、そしてこの空腹感に耐えられるわけもなく、
「はむ」
「んくぅううッ」
私が乳首を咥えた途端、彼女は悩ましげな嬌声(こえ)を上げた。私を抱き、乳房に優しげに押しつけながらも、彼女はおとがいを仰け反らせ、官能に乳房を震わせていた。
「あら、赤ちゃんにあげてるのに、いやらしい声ですね」からかいを含んだもう一人の声音が聞こえた。
「だって、ロディ吸い方上手いんだもの。ンッ、くぅッ」
彼女は私に乳首を吸われ、小刻みに柔らかな乳房を震わせていた。私がちゅくちゅくと頬を蠢かせば、まだ母乳は出ないかと思われるほどに繊細な彼女の乳首から、トロトロと、甘美な雫が溢れ出す。
あまりにも美味であった。
まさしく天上の至福といっても、支障はない。
私は空腹感に急かされ、一心に彼女の母乳を吸い上げた。それだけではない。彼女に抱かれ、守られ、乳をもらっていれば、私の絶望感も、その影の度合いを薄め、私は恍惚とするかのような感覚に、内側を満たされていった。
そして、この方が出は良いだろうかと、咥内で迫り上がり出している乳首を、舌で転がす。
「ふぅッ、ンぅうッ」
彼女は私に乳首を、母乳を吸われ、官能に身悶えていた。
やがて彼女は反対の乳首に私を吸いつかせ、私はそちらも同じようにして吸った。
私は腹が満ち、彼女の乳首から口を離した。
「お、おにゃかいっぱいになりまちたねぇ〜。んぅッ」
彼女こそ、お腹ではないものが満たされたような、トロリと眉尻も眦も下げて赤らんだ顔であった。しかし、ウットリとしつつも彼女は、私を小ぶりで柔らかな乳房に触れさせつつ、背を上にし、背を叩き、ゲップを促してきた。
「けぷっ」
「はい、よくできまちたねー」
彼女は私を褒め、再び寝床に降ろそうとするが、彼女の暖かな温もり、そして、乳房の柔らかさがなくなる寂しさに、私は……。駄目だ、それは私の本意ではない。だが、私の大人としての理性と、”赤子”としての本能が、彼女と離れたくないと言う願望となって迸ろうとしていた。
「ふぎゃ」
「あああッ、ど、どうしたの? 泣かないでッ」
彼女は慌てていた。だが、もう一人の女性が彼女に声をかけた。
「ロディは離れたくないって言ってるわ。メデューサのお母さんと」
そう言えば、彼女、私に乳をくれた彼女は、彼女とともにオロオロとしていた彼女の髪の蛇たちとともに、頬を染めていた。
蛇の頬が色づくわけなどないが、この時ばかりは、そうとしか思えなかった。
「ロディ、そうなの? ふふ、わかったわ」
彼女は嬉しそうに、母性に溢れた微笑みを浮かべると、私を小ぶりな胸に押しつけて抱いてくれた。柔らかく、暖かな乳肌に直接包み込まれ、私は、揺り籠の中よりも安心し、悦楽を含む至福を味わった。
私を抱く彼女は、人間ではなかった。
メデューサと言う種類の魔物娘であった。見目麗しい女性ではあるが、蛇の髪を持ち、
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