真っ赤な誓い

「ねえ、春くん、この木、覚えてる?」

木漏れ日の降る森、彼女に誘われて散歩をしていた。新緑の薫りは深く、春を謳歌する木々は、すでに夏へと向けた準備をしているようだった。

美しい色彩の翅を揺すり、はしゃぐ彼女の背中を追う。虫の腹が、ぷっくりと膨れている。

俺の妻は、パピヨンだった。
蝶の魔物娘。
俺のことを想って、俺の恩人たち(秘蔵コレクション)を勝手に食み、一人蛹になり、ドストライクの容姿に成長した元グリーンワーム。そうは言っても、昔の彼女だって好きだった。その写真を使ってヌけてしまうほどには……。

「ねぇ、聞いてる?」

反応がなくて、少し拗ねたように振り向く彼女。

「ああ、聞いてる。この木、昔よく俺たちが遊んでいた木だ」
「よかった。ちゃんと覚えててくれた」

まるで陽だまりのような笑顔。その暖かさにドキリとしながら、向き直った彼女の後ろ姿には、ギクリとする。

みゆきちゃん、それはワザとなのかい?

大きく膨らんだ虫の腹が、彼女のお尻の方から伸びている。いつもだったらその腹を通す、下着が見えないスカート、もしくは、下着が見えないように虫の腹を下げていると言うのに、今は大きく上げられ、扇情的なショーツが丸見えだった。
ほんわりした、可愛らしい容姿とは裏腹に、挑発的な赤。
しかも、布面積は小さくーーTバックではないもののーー尻肉に食い込んでいる。

それは秘蔵コレクションの一シーンだった。
そんなん見せつけられたら思い出に浸ってられるワケないやろッ!

と、ツッコミたかったがーー何を、とは云うまい、ナニを、とはーー暖かな笑顔を浮かべる彼女に、襲いかかることはためらわれるのだった。

「ねえ、春くん、一緒に、登ってみない?」

尻が喋った。
間違えた。
背を向けている彼女が喋った。

「この木に?」
「うん」

振り返った彼女は、やはり陽だまりのような笑顔だった。

でも、その服で登ったら汚れてしまうんじゃあ、と云えば、毎日ベトベトに汚すのは誰、と聞かれて何も云えなくなる。

「わかった。じゃあ、私が春くんを抱っこして飛べばいい?」
「まぁ、それなら良いかな」

きっと、彼女は俺を後ろから抱いて、パタパタと飛び上がるのだろう。
そう考えていた俺はみゆきさんを舐めていた。

お姫様抱っこされた。
ウチの奥さんはとても男前だった。
だと云うのにこれでもか、と豊満な胸に押し当てられ、もう、俺に勝てるところはないんじゃないのか、と思う。

パタパタパタ、と飛び上がり、彼女が降り立った枝は、かなり高さがあった。
俺はお姫様抱っこをされたまま、彼女の首にしがみついていた。

「もう、春くんってば、甘えん坊さんなんだから」
頬をすり寄せてくる。
「いやいやいやいや、そんな問題じゃないから。メッチャ高いから、と云うか、みゆきちゃん、わかっててやってるでしょ」
「さぁー、どうでしょー」
可愛らしく首を傾げるが、その眼に宿った悪戯っぽい瞳は、かつてのグリーンワームのものだった。

されっぱなしも癪だから、首筋に甘く歯を立ててやる。
「やぁん、食べられちゃう〜。……ンッ」
甘く震える彼女だが、こうして抱かれていると、彼女の甘い香りに包まれて、俺の方が食べられているよう。
それはもちろん、間違ってはいない。

「んしょっと」
彼女に下ろされ、意外と太くて頑丈らしい枝に跨る。

うん、そうするしかない。ここで彼女にナニをされようが、抵抗することなど出来るわけがない。今気がついたところで、後の祭りだった。

さぁ、俺はナニをされるのか。

あんなにも挑発的な下着を穿いてきた彼女なのだ。動けない俺を対面座位で咥え込んでもおかしくない。
股間が、いやでも(いやじゃない)膨らんでしまう。

でも、みゆきちゃんと云えば、俺の顔を見てふんにゃり微笑んだまま。

大きく開いた胸元から、蜂蜜色の谷間が見えている。見ているだけで、その柔らかさがわかる。もちろん、毎日揉んでいるのだから、その柔らかさは指が覚えている。

ま、まさか、これは噂に聞く生殺しプレイ……。
高所で動けない俺に見せつけて、劣情を膨れあがらせる、パピヨン殺法の一(いち)……。

そんなことを思っていれば、
「私ね、ここに春くんを連れてきたかったんだぁ」
それは微笑んでいたけれど、ちょっと、切なそうな瞳だった。

「ここでね、春くんがいなくなってから、私、一人で泣いてたんだ」
遠くを見るような瞳。その瞳に、胸が締めつけられる。彼女は、俺を責めるためにここに連れてきたのだろうか。いや、彼女のことだからそれはないとは思うけれどもーー。
「ごめん」思わず口に出していた。
「ううん、大丈夫」彼女は静かに首を振る。「別
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