「淫らな夢を見る?」
山間の小さな村ノクタリアにある教会の懺悔室で、ジャックスは神父の問いかけに頷いた。「はい、ちょうど一週間くらいになるでしょうか。毎日、淫らな夢を見るのです……」
「今までにそうした夢を見ることはなかったのでしょうか?」
「あるにはあるのですが、こうも続くことはありませんでした。主神さまの教えを守る身としては、お恥ずかしい限りですが……」
壁を挟んだ向こう側の神父の顔は見えないが、彼の声は優しげなものだった。
「いいえ、この村の敬虔な信仰には、私も感心しております。身を引き締められる思いです」
「そ、そんなめっそうもございません」ジャックスは慌て、神妙な声を出す。「これは、魔物の仕業なのでしょうか……」
「分かりません。ですが、奴らは狡猾。隙あらば堕落の道へ引き込もうと、私たちを狙っています。その夢とは、どのような内容だったのでしょうか?」
「内容を、お話しなくてはならないのでしょうか……」
「はい。もちろん他言はいたしません。信徒の告解を明かしてはならないという法もあります。あなたに心苦しい思いをさせることにはなりますが……、魔物と一口に言っても、その種類は数多く存在します。相手がどの魔物であるかを知ることは、退治するために必要なことです。夢に入り込む魔物にはナイトメアという種族がおりますが、魔物は邪悪な魔法を使います。決めつけてしまえば、裏をかかれることもありえます」
「分かりました……」
神父の説得に、ジャックスは消え入りそうな声で答えた。魔物につけ入られた自分を恥じているのだろう。そんな彼を勇気づけるためか、神父は優しげな声音で彼に語りかける。
「話していただければ、もしかすると、魔物の仕業ではないことが分かるかもしれません。あなたは男性です。いくつになろうとも、秘められた情欲が夢の中に現れてもおかしくはない。人間たるもの、時には情欲が溢れることもありましょう。十分恥じいり、それを正そうと教会にいらっしゃったあなたを、褒めこそすれ、どうして咎めることができましょうか」
「神父さま……」ジャックスは意を決したようで、膝の上に置いた拳をぎゅっと握りしめた。「分かりました。お話しいたします」
「ありがとうございます。迷える子羊を救う機会を与えてくださった、神に感謝を……」
神父は、強い思いを秘めた口調でそう言う。
◆
そいつは、ふと気がつくと、私を見ているのです。
そいつの姿ですか?
分かりません。
なにせそいつときたら真っ黒で、その形は女であることは分かりますが、顔も見えないのです。だと言うのに、まるでウサギを見つけた狼のような視線だけはヒシヒシと感じるのです。獲物の気持ちとはこういうものなのか、と。
他の特徴は、ですね。羽? ありません。はい、尻尾もありません。ただただ真っ黒な女の人型なのです。
…………はい、確かに。そいつの体は私が好ましく思う体型ををしておりました。
もっと、詳細に……。
分かりました。魔物の種類を特定するためには必要なことなのですね。
そいつの体は肉付きが良く、胸も片手では掴みきれない大きさです。それでいて柔らかく……ええ、触りました。そいつがのし掛かってくると、私はダメだと思いながらも、その胸に手を伸ばしてしまうのです。今も思い出せば、手のひらに吸い付くようなそいつの胸の感触が……。はい、尻も太もももムッチリとして、触ることをやめられないほどに魅力的なのです。
奴はナイトメアなのでしょうか?
ああ、これだけではまだ分からないと言うことですね。
それは本当に夢か?
分かりません。
そいつの感触はあまりにも生々しくて、夢だとは思えないほどです。しかし、起きた時に確かめて見ると、私の衣服は濡れも乱れてもおらず、寝た時と同じような状態なのです。
え? はい、妻ですか。
妻も同じ部屋で寝ております。ベッドは別です。
妻に聞いても、私はぐっすり眠っていたようで、妙な寝言を口走ったりも、寝乱れることもないそうです。……妻も敬虔な主神教徒です。嘘をつくことなどありえません。
ああ、いえ。申し訳ありません。真実を明らかにするために神父さまがお聞きになっていることは分かっております……。
はい、夢の中では、私はそいつから与えられる快感にあられもなく呻き……。
詳細に……、分かりました。悪しき魔物を打ち倒すためです。恥を捨てて、つまびらかに語らせていただきます。
私を見ていたそいつは、布団を剥ぎ取ると、私の上にのしかかり、体をしっかりと押さえつけてくるのです。私が抵抗しても跳ね除けられないものすごい力です。そいつは、丁寧に私の寝着を脱がしていきます。その指の動きは艶かしく、脱がされてい
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