初夜、俺は殺されるかと思った。
彼女は、確実に殺(と)りにきていた。
蝶のように華麗に舞い、蜂のように刺す。
もちろん、挿すのは俺なのではあるが。
今日の俺たちの結婚式は、田舎のもので、俺はどこぞのお殿さまにでもなったのではないかと言う豪勢さと、衣装に着られている感満載だった。そりゃあもう、みゆきちゃんの美しさと言ったらなくって、角隠しならぬ触覚隠しを被った白無垢の彼女は、まるで天女かと思うほどの現実感のなさだった。
地元の友人たちや両親、親戚一同の微笑ましいものを見る目は……、一生忘れられそうにない。
いや、うん、尻に敷かれるのは目に見えてるけれどもね。
あまりにも挙動不審な俺を、彼女はリードしてくれていた。
大恩人の友人にも囃し立てられた。
そうして小っ恥ずかしくも賑々しい結婚式が終わって、夜。
初夜だー、みゆきちゃんを抱けるぞー、といそいそ寝室に向かえばーー蜜を販売する女社長でもある彼女の家は、それはもう立派な日本家屋で、その奥座敷で準備すると言われていたーー、
心臓を、槍で突かれたかと思った。
「ふつつか者ですが、よろしくお願いします」
ほにゃっと微笑まれて、槍が追加された。
ぐふっと、エア吐血をしてしゃがみ込む。
え、え……?
何、そのスゲェエロい衣装。
童貞を殺すには、重装備過ぎますよ?
薄布なのに、重装備とはこれいかに。
彼女は、紫のスケスケベビードールに身を包んでいた。
足の間からは悩ましく膨れた虫の腹部が覗き、スラッとしつつも肉づきの良いおみ足、ベビードールの下には、これまた紫のショーツ。ふんだんに刺繍が施された下着も薄く、淡いヘアが透けている、というか膨らんでいる。
キュッとしまったくびれだと言うのに、豊満な胸部。それを覆っているのはブラではなくて、まるで包装リボンのような布一枚。乳首の形が盛り上がっている。
もう、ね。ひれ伏さずにはいられないと言うか、拝まずにはいられない、と言うか……。
それが俺の嫁だった。
「ぐふぅううッ」
「どうしたの!? 春くん!」
幸せで死ねると言うことを初めて知った。
心配そうに俺を覗き込む、穏やかで可愛らしい顔。形の良い輪郭に、蜂蜜のような髪色。大きめの瞳に、頭の上にチョコナンと乗った触覚。そんな彼女の背中から広がる美しい色彩の蝶の羽は、まるで彼女が花から生まれたような、そうした包装がなされた、贈り物のようにも思えた。
その贈り物の相手は、俺。
「ふ、ふぉあああああああ!」
「春くんッ!?」
「ひっひっふー、ひっひっふー」
「な、何か生まれるの……?」
「大丈夫だ」喘ぐように言う。「みゆきちゃんを見て、こんなに幸せで良いのだろうか、って思ったんだ。みゆきちゃんは、俺にはもったいないくらいのお嫁さんだ、って……」
そんなことを言えば、はにかんだように笑われる。
「良いんだよ。だって……、春くんよりも、私の方が、幸せだもん。だから、ちょっとでも春くんを喜ばせてあげよう、って。春くんの本に載ってたこの服も選んでみて……でも、やっぱり恥ずかしいね」
頬を赤く染める彼女。
あ、らぁあああああああいッ!
嫁が可愛すぎて辛いです。
このまま彼女と暮らしていけるか心配です。
「この服、似合わない……? だったらすぐ脱ぐけれど……」
「それを脱ぐなんてトンデモない! すっごく似合ってるしすっごくエロい」
「嬉しい。……でも、脱がなくちゃ、デキないよ」
アっ、ふぁあああああい!
ビックリした。ビックリして射精したかと思った。
「ねえ、春くん……」彼女が身体をすり寄せてくる。「まるで夢みたい……、春くんと、こう出来るなんて……」
情欲に瞳を潤ませつつも、羞恥に頬を染める彼女。彼女の甘い香りが脳髄を痺れさせる。
「みゆきちゃん!」
「きゃっ」
思わず彼女を押し倒していた。
布団に広がる彼女の羽。美しい色彩は、羽まで興奮して、艶めいているようだった。
情欲に染まる、女の肌。
潤んだ瞳が、俺を見上げてくる。
「優しく、して欲しいな」
ちょっと、目を逸らせて恥じらってくる。
ごめん、それは無理そうです……。
たまらず彼女の唇に吸いつく。
「ン、……ふ……」
直(じか)に伝わる悩ましい吐息。
舌を絡める。お互いの熱い粘膜が触れ合う。蕩けてしまうのではないかと思うほどに甘く、いやらしい舌使い。
それだけで、腰が砕けそうだった。
「みゆきちゃん、うまくない……?」
「春くんのために、練習したから……」
ゴクリと唾を飲む。彼女の感触がまだ舌に残っていた。
「触っていい?」
視線は豊満なおっぱいに。
「うん、どうぞ、召し上がれ」
はにかんで笑う彼女。
心の中に、
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