五、

「こ、こんな、どうして……」

 俺は丸裸にされて、転がされていた。蝋燭の灯が、まるで蛇の舌のように揺れ、それに照らされて、二人の女が立っていた。お妙とお稲さん。俺は、お稲さんの妖術で金縛りにかけられ、動くことが出来なかった。

「ウチ、云わへんかったっけぇ。もし、お妙はんがお兄はんをオとすと決めたら、協力するて。お妙はん、覚悟決めはったそうでなぁ。お手伝いしとるんよ」

「お妙……」

「兄ちゃんが悪い……。あんなことを言ったら、私が抑えられるわけない……」

「聞いてたのか……」

 と云うことはもしかして……

「兄ちゃん、お稲さんの娘を嫁にもらうんだよね。でも、お稲さんは嫁は二人いてもいいって云ってる。狐のお稲さんは……」

 シュルリ、と衣擦れの音を立てて、お妙は帯を解いていく。

 しゅるり、しゅるり。

 帯が解かれるその音は酷く淫靡な響きを持っていた。

「兄ちゃんは、私とシたら、私も嫁にもらってくれるんだよね」

 しゅるり、しゅるり。

 床に落ちた帯は、まるで蜷局(とぐろ)を巻いた蛇のようだった。

 襦袢の合わせから覗く妹の肢体は、まだ幼さを残しながらも、確実に女として花開き始めていた。お稲がくれる食物で、彼女はほどよい肉をつけ始めていて、肌もきめ細やかに、少女と大人の間に存在する、儚さを孕んで美しく、しかし股の間に見える薄いちぢれ毛が、彼女が現実的で、肉欲的な存在であることを示していた。

「待て、お妙、考え直せ。俺たちは兄妹だ」

「でも、血がつながっていないことは知っている」

「…………でも」

「でもじゃない。だったら何で、私に精を搾られるままにしておいたの? だったら何で、あんなに気持ちよさそうな顔をしていたの……」

 俺はお稲を見る。しかし、彼女は愉しそうな顔で見ているだけだった。お妙に正体を明かした彼女は、今や元の狐の姿、頭には狐の耳を生やし、その尻からは九本の尾が伸びていた。美しい金髪が、蝋燭の明かりに濡れていた。

「兄ちゃんも、私のこと好きだって聞いた。だから、イイよね……」

「お妙……ッ」

 お妙に口を吸われた。

「ン、ふ、……ちゅぱ……レロ……」

 彼女は一心不乱に唇をついばみ、柔らかく温かい彼女の唇が、鋭敏に感じられた。俺は去れるがままで、いや、むしろこちらからも求めていたかもしれない。侵入してきた舌に舌を絡ませ、送りこまれてきた妹の唾液を飲み干す。

「兄ちゃん……私の、飲んでくれた……」

 彼女の残り香が鼻にわだかまっていた。彼女は舌を顎に這わせてきた。首元から鎖骨、乳首を舐(ねぶ)って来た。

「どこで……ッ、こんなこと……」

「ウチが教えたんよ」

「なんてことを……」

「でも、兄ちゃん、悦んでる」

 ささやく影のような声音が耳朶を打つ。昏い熱を孕んだ瞳は、俺を見つめて潤んでいた。チラチラと、いきり立つ摩羅にも注がれていた。ほっそりとした指が、腹筋を撫でてきた。

「随分逞しくなったね」その指は徐々に下がって来て、俺の摩羅に触れた。

「わぁ、ピクンとした」

「あんまり強く握ったらあかんよぉ、優しく、イイ子イイ子したりぃ」

「はい、お稲さん」

 彼女たちが何を話しあったから知らないが、今まで目の仇にしていたお稲に、まるで従順な子供のような態度を見せるお妙。彼女はお稲に云われる通り、俺の摩羅に優しく触れ、亀頭を、赤子をあやすように撫でてきた。

「ピクピク動いて、兄ちゃんの、可愛い。なんか、先から汁が出てる。でも、直接触ると、熱いんだ……」

 彼女は指についた先汁を口に運び、恍惚(うっとり)と舐めとっていた。

「お妙はん、そんなに舐めたかったら、直接しはったらええ、ペロペロ、したりぃ?」

「はい」

「だ、ダメだ、そんな汚いもの……」

「兄ちゃんのだったら汚くない。とっても、好きなもの……」

「ウッ……」

 摩羅に触れた妹の舌から、俺の身体に雷が走ったような気がした。カリの裏側に蛇のような舌が這い、舐めあげてきた。

「そうそう、そうやって、舌の先っぽ固くしてぇ、おちんちんの割れ目をつん、つん、と。ああ、じょうずじょうず」

 狐の先生が、彼女に的確な助言を与えるものだから、歯を食いしばって耐えるしかない。

「玉も吸うたり。お口に中でコロ、コロ。裏っかわは……、まだ早いかねぇ。んふふ、もう辛そうや。さぁ、そのお口でぱっくんするとええ」

「そんなことをされたら……、アッ……」

 びゅる、びゅるぅうう。

 俺はお妙の温かい口の中に、盛大に精を吐いていた。かなりの勢いだというのに、彼女は一滴ももらさないようにと、口を押しつけて、涙目になりながらも、俺の欲望を受け止めていた。喉を鳴らして嚥下して、最後の一滴まで吸いつくそうとしていた。
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