「なん、じゃと」
エルタニン陥落の報を受けた王の声が部屋に響く。
「はい、しかもそれに関わっているのが2日前にこの国を出発した勇者ブレイブだということです」
信じられん。なんということだ。魔王討伐に出発してわずか二日で親魔物国家ではなく、自国を保護する国を落とすとは。
王は憔悴してしまっていた。
「この国はどうなるのじゃろうか」
自分の立場も忘れて報告してきた相手に問いかけてしまう。
エルタニンを落とす原因を出したこの国に、他の属国だった国からの糾弾は免れないだろう。最悪、有無を言わさずに攻め込まれる可能性もある。
「王よ、ご安心を」
相手はにこりと微笑んだ。
「エルタニンの属国は同様に落とされました。もちろんこの国も」
そこには妖艶に微笑む美女がいた。
「お主、魔物!?」
「はい。これから王妃様ともどもよろしくお願いしますね」
「王妃ともども?、貴様まさか」
扉が開いて若返り、当時よりもより美しくなった王妃が入ってきた。
「あなた。魔物になることがこんなに素晴らしいことだとは知りませんでした。さぁ、早くあなたもインキュバスになってくださいませ」
王に迫る二人の美女。
こうしてエルタニンの属国はブレイブの出身国カッカブを含めて、親魔物国になるという宣言を出した。
「まだ足りない」
しかし、その報告を受けたヴィヴィアンは爪を噛みながら険しい顔をしていたそうだ。
◆
私たちはエルタニンを出発して次の街に向かいます。
カーラが用意してくれた馬車での移動です。流石、貴族様、勇者様様です。もちろんお姫様である私はその上をいきます。
馬車での移動は私が提案したことです。ヴェルちゃんがドラゴンモードで背中に乗せてくれると言っていましたが、私たちの旅が早く進んでも深紅の天災が軽々しく飛び回っていては周りの人々はたまったものでありません。
それに、旅の醍醐味も何もなくなってしまいます。昔の偉い人だって、旅は馬の速さで行くのが一番と言っていました。
手綱を取るのはヴェルちゃんです。あんな提案をしたのに、馬車で移動するのが面白っかたようで名乗り出ててくれました。
ヴェルちゃんの操縦に一流の内装で馬車は快適です。でも、ヴェルちゃんは操縦したかったのでなく、この空気に耐えられなかったのかもしれません。
「さぁ、ブレイブきゅん。今度は私の膝の上にくるといい」
「いいえ、ブレイブさんは私に包まれたいと思っていますよ」
「ダメです。ブレイブは私のおっぱい枕に夢中なんです。私が一番大きいのですから」
「ふっ、ただ大きいだけではダメだろう。私の方が弾力は上だぞ」
「ギュってしたら、バンって弾かれちゃうから、寝心地は悪いんじゃない」
「いやいや、そんなことはない。弾かれないようにギュッと」
「カーラさんにギュッとされたらキュッと逝ってしまいそうですね。そんな危ない肉ッションより、私の体の方がいいですよ。手触りはもとより、弾力も大きさも感触を変化させれば思いのままです。ブレイブさんは誰を選びますか?」
「えと。じゃあ、じゃんけんで決めたらいいんじゃないかな」
「よぉし!。ブレイブきゅんが言うのならば、そうしよう。」
「最初はグー。じゃんけん、「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」」
「ちょっと待って。やると思ったけど、二人して私を狙うのは卑怯ですよ。ブレイブバリアー!」
「ヴィヴィンアン!?。僕を盾にするのやめてくださーい」
「くっ。卑怯な。これはパーにして撫でるしかないではないか」
「おっと、手が滑りました」
「白衣さん、手をチョキにして股間を挟むのやめてください」
「貴様らぁ!。二人してチョキだとぅ!?」
「「ふっふっふ、カーラ敗れたり」」
「ぐぬぁぁぁぁぁ!!」
ブレイブ争奪戦。負けられない戦いがそこにはあるっ!
私たち、ブレイブとセックスできた組の美しーい争いを見つめるリビングアーマーが一体。
早く素直になってブレイブを襲ってしまえばいいのに、アンちゃんは出発してからこんな調子です。
私たちのやり取りを蚊帳の外で眺めています。
せっかくのハーレムパーティなのに、それではこちらも寂しいです。もうブレイブに装備されて彼の体に合わせた形に変わっているのですから、もう何も止めるものはないでしょうに。
さぁさぁ、本体もブレイブ用にされちゃってください。
私たちが交代でブレイブを愛でていると、
「騒いでいるのはいいですが、そろそろバーダンに着きますよ」
ヴェルちゃんから声がかかります。
「オッケー。じゃあ、ブレイブ。ちゃっちゃとアンちゃんと合体しちゃいなさい」
「ええっ。合体って、装備、するってことですよね」
「そうよ。まだまだ未熟なブレイブを守るためにはアンちゃんに身を包むのが一番なんだから。それに、アンちゃんに動いてもらってあなたは戦い方を身に
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