「キャー、私のカバンがー!」
白昼の街中に少女の叫び声が上がる。
「へっ、トロトロしてるお前が悪いんだよ」
盗んだのは少年だ。少年は雑踏の中を駆け抜けて路地裏に逃げる。
「まったくこの街はやりやすくてタマンねぇな」
彼は少年らしからぬいやらしい笑みを浮かべた。まるで中年の男が嗜虐的な笑みを浮かべたような。
彼は手慣れた手つきで金目のものだけ抜き取ると、そのままカバンを捨てていく。
路地裏から出て行くのは先ほどとは違う顔をした少年だった。
彼はなんと馬鹿なことをしでかしたのだろう。
いくら彼が変装の魔術に長けていたとしても彼は捕まる。
何せ、この街には彼女たちがいるのだから。
◆
「今日の獲物はど、こ、か、なっと」
今日も彼は狙いやすそうな子供を探して、街をウロつく。
「お、あいつなんて良さそうだ」
彼の視線のの先にはホルスタウロスの少女がいた。可愛らしい魔女のキャラクターがついたカバンを脇に置いて、のほほんとソフトクリームを舐めている。見た目は幼いとはいえ、流石はホルスタウロス。同年代の少女よりも胸は膨らみ、ソフトクリームの舐め方も牛のようにねっとりとして将来が期待できる。
「カバンだけじゃなくて、あいつもいただききたいぜ」
少年は下劣な笑みを浮かべる。
「だが、下手な欲を出して足がつくわけにはいかねぇな」
邪な欲望の対象を金銭だけに押しとどめて彼は少女に近づく。
彼がカバンに手をかけ、引き寄せたその時、
「そこまでじゃ。悪党よ!」
少女の声が響いた。
驚く少年は咄嗟に逃げようとするが、足が地面に縫い付けられたようになって動けない。
「なんっ、だぁ!、これはぁぁ!」
なんらかの魔術によるものだろうが、少年の実力では解除できなかった。
「チィッ」
舌打ちをする少年の前に声の主が現れる。
「お主、新参者じゃな。この街を守るワシらのことを知らなかったと見える」
自信満々の笑みを浮かべたバフォメットが、腕組みをして薄い胸を張りながら立っていた。
彼女の登場に周りの人々から歓声が上がった。
「ウォォ〜。キョニューちゃん、マジ巨乳(虚乳)ー!」
「キャー、かわいいー。頑張れー」
馬鹿にされているようだが、人気者には違いない。
声援を受けたバフォメットはますます得意顔になる。
「何者だ。テメェ!」
少年のセリフに待ってましたとばかりに、新たな人影が現れる。
屋根の上から軽やかに飛び降りたのはクー・ シーの少女。まだ幼い彼女の毛並みはふわふわだ。
そして彼女はポーズを取った。彼女のふわふわな毛並みをこれでもかとアピールした上につぶらな瞳でじっと見つめる。
どこかの金融機関の宣伝を思い出してしまう。
「パウカー!!」
彼女は叫んだままそのポーズで固まった。
抱きしめてたくなる衝動を必死で押さえながら、少年は目の前の状況を理解しようとする。が、できなかった。
混乱してきている少年をよそに次の影が近づく。
人垣を優雅に掻き分けながらダンピールの少女が現れる。
固まっているクー・シーの横で腰に下げたレイピアを抜きはなった。
少年は切っ先を向けられて、逃げようともがくがやはり足は地面から離れない。
ダンピールはそのままのポーズで、
「ニークン!!」
と叫ぶと、クー・シーと同様に固まった。
少年は訳が分からず混乱するばかりだ。周りの人たちはさっきまでの茶々が嘘のように、静まり返っている。
それがさらに少年に混乱をもたらす。
混乱していく少年の目が蠢く小さな粘体を捕らえた。
紫色の粘体が四方八方から続々と集まって集合して、少女の形を作っていく。
全ての粘体が集まった時、そこにはダークスライムの少女が立っていた。
「ト、トリンバルっ!」
彼女はビシッとポーズを決めつつ叫んだ。若干ぎこちなく、羞恥に頬を染めている。
続々と少女が集まり、最初に現れたバフォメットを中心にしてポーズを決めた姿勢で固まっていく。
その光景とダークスライムの少女の様子を見て、少年はだんだんと悟ってきた。
これは、あれだ。何か戦隊物、みたいな。
少し冷めた目になってきた少年は、次の瞬間顔を驚愕に染めることになる。
轟音とともに何かが空から降ってきた。
砂煙りの中、地面には小ぶりながらも邪悪な剣が突き立っている。
剣の主は剣から現れた。柄の部分から黒い血液のようなものが流れ出し、少女の形を作る。
人々から感嘆のため息が漏れた。
少女は剣を抜き、天に掲げて叫ぶ。
「k」
少女の口が塞がった。まるで強制的に口を閉じさせられたかのように。
バフォ様がにっこりと少女に微笑んでいた。が、目は笑っていない。
剣を持った少女は少し涙目になりながら、コクコクとバフォメットに頷くと、少女の口が開けられるようになった。
「マーラっ!」
そして、そのまま少女はポーズをとって固ま
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