墓場フィールド

草木も眠るウシミツアワー。
こんな時間に彼らはそこにいて、彼女たちもそこにいた。

「皆のもの、シルフゴーグルの準備は十分か?」
「おぉーっ!」と声を控えた返答が返る。
ここは郊外の墓場。街中にあるものとは違って街灯もなく、昔ながらのおどろおどろしい、いかにもといった墓場である。倒れている墓石はあるし、何者かに食い散らかされたお供え物、枯れた樒、朽ちた卒塔婆は触っただけで呪われそう。むしろヒトダマが飛んでいないことの方が不思議なくらいである。
彼らは手に手にスマホを持っている。そして課金で手に入れたゴーグルをはめている。不審者の集団でしかないが、彼らは大真面目だ。
心霊写真を取りに来た? 肝試し?
違う違う。彼らはここに嫁をハントしに来たのである。
彼らはオカルト研究会のメンバー。

アプリまもむすGO。
この世界には人間に化けて暮らしている魔物娘たちがいる。
このアプリ彼女たちの正体を暴き、ゲットして嫁にするというコンセプトで配信されている。
実際のところ、オカルト研究会の彼らは初め魔物娘に興味はなかった。だが、部員の一人がアンデッド属の魔物娘の存在を知り、もしかすると、オカルトの正体は魔物娘だったのかもしれない、という論を唱え、彼らはそれを確かめるべくここに集ったのである。
その最後の後押しとなったのは、アンデッド属の魔物娘を映し出す機能を拡張する課金アイテムが実装されたことであったがーー部室で宙に現れたゴーグルに彼らは歓声をあげたーーそんなものに課金せずとも魔物娘を写すことができるのを彼らは知らない。アイテム屋の狸さんは今日も真っ黒である。
という名目だが、魔物娘のことを調べるうちに、もちろん彼らの目的は嫁探しへとシフトしている。

「よし、サーチをするぞ」
それぞれがアプリを起動させ、サーチ機能を展開させる。
静かな歓声があがる。そこには彼らの目論見通り、魔物娘たちのシルエットが浮かび上がっていた。そこにはいくもの『get me』の文字が、それに彼らは息を飲む。被っている。ということは……。
「お目当ての子は早い者勝ち、という事だな」
誰かのつぶやきに生唾を飲み込む音がした。
「それは構わないが、独り占めだけはダメだぞ。ユウジョウ」
会長の言葉に、口々に「ユウジョウ」「ユウジョウ」と返ってくる。それは彼らの友情を確かめるための合言葉。もしもそれをやぶってヌケガケしようものなら、ムラハチにされてしまう。
ムラハチとは口も聞いてくれないというような、社会的なリンチのことである。だが、彼らにそんなことをする度胸はきっとない。
彼らはそうして墓場に足を踏み入れていくのであった。
この後にどんな恐怖が待ち構えているとも知らずに……。



「桜の下には死体が埋まっている」
とはよく言ったものだが、スケルトンが花見をしているのはいかがなものか。骨村はボンヤリと桜を見上げるスケルトンを見つけた。
「さて、どうやって捕まえるか……」
思案する彼だったが、彼女の切なげな横顔に見惚れているうちに、
「私に何かよう?」
声をかけられた。その声は乾いた骨のようで、どうにも悲しそうだった。だから彼は、彼女に対する恐怖を微塵も感じず、何か、力になってやりたいと感じた。だから、先に彼女をイかせるべきだったのに、声を返してしまった。
「どうしてそんな顔をしているんだ」
「この桜、私たち姉妹を養分として咲いたの」
「…………」彼女の言葉に彼は何も返せなかった。
「私はね、むかし昔、この桜の樹の下で死んだの。でも、妹は……」
時代がかった彼女の服装は、江戸とかそういった時代のものだろうか……。
「えっと、妹さんもスケルトンに?」
彼女は首を振る。「いいえ、まだ。だから、協力してくれないかしら」
彼女がニコリと笑ったと思うと、「へ?」彼は間抜けな顔で墓場で押し倒されていた。彼女には淫靡な笑みが浮かんでいる。
「は……え?」
状況の掴めない彼は目を白黒とさせる。
「私と交わってインキュバスになってください。そのありあまる精力で彼女の骨に精液を振りかけ続ければきっと、また私たち姉妹は会うことができる」
「ど、どういうこと……?」
「つべこべ言わずに私とまぐわえばいいの。そうすれば、すぐに何もかもどうでも良くなるから……」
サラリと闇に染み込む衣擦れの音。ヒンヤリと闇に浮かび上がる彼女の真っ白な肢体。むき出しの骨の艶かしさ。彼は彼女を押し退けようとするが、骨だけの体のはずなのに、彼女はビクともしなかった。やがて彼のズボンはむしり取られ……冷たい彼女の外側と違って、
「う、うわぁあああああああ!」
彼女のナカは蕩けるほどに熱かった。



「さーてと……さっそくいたよ」
天野という少年は墓場の上に腰
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