白蛇の抜け殻

ーー母さま、私は好きになった男性を取られました。
あの方をまだ私のものにしたわけではありませんでしたが、私が好きになったと言うことは、あの方以外は好きになれないと思った私にとって、すでにあの方は私のものでした。
ああ、私はこれからずっと伴侶に巡り会えないのでしょうか。
ああ、私はもうあの方を私だけの手に取り戻すことは出来ないのでしょうか。
ああ、嗚呼。

ーー母さま。
私はあなたが父さまにしたように、あの方を監禁して自分のものにしようとは思いませんでした。私はちゃんとお付き合いをして、あの方を自分だけのものにしようと思いました。ですが、私は間違っていたのでしょうか。
私は、私は。
あの方が百鬼の主と定められた方だと知って、嘆きました。
だってそうでしょう。あの方がぬらりひょんと結ばれて仕舞えば、あの方は百鬼の主の道を歩む。そうなってしまったら、私だけのあの方には出来ない。
でも、あの方とあのサークル室で過ごした日々は、あの方が望むのであれば、ソレでも良いかと私の心を変えていきました。
でもーーダメでした。

ーー母さま。
私はあの方があのぬらりひょんと交わっているのを見て、どうしても我慢ができませんでした。
この、この気持ちは青白くて昏(くら)い炎となって、私を苛んできます。
ああ、私は今頃になって父さまの顔を思い出します。
私と十ほどしか歳の変わらない父さま。
彼は……とても幸せそうでした。
だから私は

あンの憎っッッくきぬらりひょんからあの方を奪い返してやりやがります。
そしてあの方を、奴の事を忘れてしまうくらいに。
ふふ。うふふふふふ。
覚悟しやがれ。



「作戦かーいぎ、だニャ」
「副会長、どうしたらぬらりひょんをギャフンと言わしめるかについてでしょうか」
「ギャフンって、古いニャー。そんニャことじゃないニャ。ウチらは別に百鬼のうちの一鬼になるのは構わんニャろ? 問題はウチの会長ニャ」
と言って、ネコマタ副会長の鈴川たまさんが一枚の手紙を放る。
それを見て、「ギャフン」と言って赤鬼餅つき要員こと、酒井のんべえさんが仰け反る。
それが前述の手紙だった。
「あの怨(オン)にゃ、その呪詛を書き付けたノートを残して姿を眩ましおったニャ。恋する蛇(邪)神の怒りは凄まじいニャ」
「すると、このままだと俺らまで、粛清対象にされるって事じゃねーか、やべーやべー。ぬらりひょんじゃなくて、作戦会議を立ててた会長本人が俺らの敵になっちまったと言うことか」
と、唐傘お化けの杵要員こと、唐草蛇の目が身を震わせる。
「蛇の目っち、名前に蛇の名が入ってるんだからどうにかなりませぬか?」
「そんなおっかねー事を俺に降るんじゃねー」
「傘だけにニャ」「傘だけに」
「狙ってねーよ」
と、姦しく話している彼女たちだが、俺のチンポはお前らのマイクじゃない。

あの妖怪大会議の後、もっと的確な表現で言うならば、ぬらりひょんと俺の見せつけプレイの後、端的に言って次の日である今日、会長はサークルに姿を見せなかった。
サークル室で何が起こるか身構えていた俺には拍子抜けだったが、代わりに現れた副会長が俺にそのノートを見せてきた。そして後からワラワラと現れた彼女たちを加えて、俺は彼女たちに咥え込まれているというわけだった。

チロチロと、たまさんが俺の鈴口を舐める。
猫のザラザラとした舌の感触がする。
のんべえさんが俺の球をチュルンと吸い込み、舌でつつく。
蛇の目ちゃんは俺の竿を舐め上げている。

名前についてのツッコミは、俺はもはやするまい。
妖怪である彼女たちには、人間にはわからない美意識なり、ルールなりがあるのだろう。
他にもツッコミたいところがいくつかありそうだがーーたまさんは球担当じゃないのかよ、とかーー俺は黙っておくことにしておく。
今はただ、三者三様の奉仕を堪能する。

「ふぇも、にゃ」
「だから舐めながら喋らないでください」
「にゃふふー、タメ口で良いにゃよ。もうあんたはウチたちのご主人さまにゃんだからにゃ」
そう言って小首を傾げる彼女の頭には猫の耳がついている。二股に分かれた尻尾が揺れる。
「お、親分……? フェラ加減はいかがですかな?」
「のんべえさん、湯加減みたいに聞かないでくだ……くれ。良いよ」
と言うと嬉しそうに吸い付いてくる彼女の肌は赤く、額には角がついている。
「しゃーねーな。俺も好きに使ってくれて構わねーぜ」
「それは言われなくとも」
「んだよ、馬鹿野郎。……ヨロシク」
と、ツリ目がちの目を逸らす、蛇の目は頭の傘から伸びる舌で俺のペニスを舐めている。
あれ、この子こんな可愛い感じだったっけ?
俺を見ては殴りかかるような狂犬だったはずだ。
昨日の今日
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