俺は彼女に勧められて、カップを口に運ぶ。
ふんわりと紅茶の香りが届き、それは花がほころぶように、俺の鼻腔を満たす。口をつければ、まるでよく熟れた果実のような重厚なコクを感じる。それでいて口に残らず、香りだけが誘うように頭に残る。
胃に落ちると、ジンワリと体に行き渡り、まるで陽だまりの花畑に包まれたような心持ち。
どこか懐かしく、俺は思わず安堵のため息を漏らす。
「気に入ってくれたようで何よりです」
目の前の女性は柔らかく微笑んでいた。
「こんなに美味しい紅茶は初めてだ」
俺の素直な感想に、彼女は笑みを深めて頷く。
「そうだろう。取って置きの茶葉を、さらに特別な方法で入れているからね。その方法を知りたいかい?」
そう言って彼女は、手元のミルクポットを自分のカップに注ぐ。
やけにトロミのある白いミルクが茶褐色の液体に落ちる。カップの底にたどり着いた重みのある白は、花開くように茶褐色へ混ざっていく。
それを見つめる彼女の瞳には、どこか怪しい光が宿っている。穏やかなティータイムであるはずなのに、俺は、どこかいけないものを見ている気分になる。
彼女はその形の良い鼻にミルクポットの香りを吸い込み、薄い笑みの中、その唇を舐める。ティースプーンがかき混ぜる音。ピンクの唇が白磁のカップに口づける情景を、俺は呆けたように見ていた。
「うん。やはり、いいね。君の味がする」
彼女は俺を、恍惚とした目で見てきた。
その視線の前に、俺はまぎれもない情欲がうごめくのを感じる。
それだけの仕草に反応するとは、溜まっているのだろうか?
彼女のたおやかな指がカップから離れ、クッキーに伸びる。愛しそうにつまむその仕草は、官能的で、俺は澱のような欲望が下半身に溜まっていくのを感じる。
俺は思わず頭を振った。
どうしたのだ、俺は。
確かに彼女は魅力的な女性だ。男であれば10人中15人は振り向くような色気がある。彼女の豊かな胸は燕尾服のジャケットを押し上げ、ぴっちりと止められたボタンで、彼女の腰の細さが浮き出ている。
彼女は、女性としての魅力を抑え込むために男性的な服装をしているのかもしれない。だが、それはかえってーーそれでも抑えきれない女性の芳香を際立たせている。ボタンの一つでも外せば、魅惑が溢れ出し、俺の理性を粉微塵にするーーそんなことまで思ってしまう。
もしも、それが。
もしもそれが現実に起こり得たならば、俺は体面も体裁もなく、ただの雄の野獣となって彼女を組み伏せ、その柔らかな肢体を舐め、嬲り、弄び、本能のままに彼女の秘裂に押し入り、欲望の限りを放つかもしれない。
その時、彼女はその澄ました顔にどのような表情を浮かべるのだろう。
すました切れ長の瞳は快楽に、それとも屈辱に歪むのだろうか。
漏れだす喘ぎには官能が、それとも罵倒が混じるのか。
いやいや、ただじぃっと、目も唇も閉ざし、嵐が過ぎ去るのを待つ、少女のような顔を見せてくれるのだろうか(それも捨てがたい)。
整った顔が、切れ長の瞳が。果実のようにみずみずしい唇を、白磁の器よりも白い肌を。
俺が、俺は、俺のモノにして。
完膚なきまでに汚してーー。
俺は視線を感じた。
彼女は舐めるような視線で俺を見ていた。
「どうか、しましたか?」
まさか、俺の頭の中をのぞいていたわけではないだろう。
俺は努めて平静を装う。
しかし。
俺は、
そんなことは望んでいない。
「いいよ。君、とてもいい。あれほど楽しんだというのに、まだまだ元気だと見える」彼女は一口紅茶をすすり、
「ッ!?」股間に感じた刺激に身をすくめる。
これは、足の感触だ。テーブルの下、向かいの席から足が伸びている。足は俺の股間をまさぐるように動く。
いつの間にかはち切れんくらいに硬くなっていた俺自身は、彼女の足の刺激で、今にも爆発してしまいそうだ。
「何を……」
俺の呻きに、足の感触は消えた。
「どうかしたかい?」
彼女は何事もなかったかのような顔をしている。
「今、足で……」
彼女は白々しく小首を傾げ、嘲るような瞳の形をとる。
「まさか、君は私が君のペニスを、足でなぶったとでもいうつもりではないだろうね。それはひどい侮辱だ。出会ってまだ一日も経っていないというのに、私はそんな見境のない行為はしない。
そうだな、するとしたら、そうやって搾り取ったザーメンを、こうして紅茶に入れるくらいさ」
彼女は再びミルクポットから、やはりやけにトロミのある白濁した液体を、紅茶に注ぐ。
…………それの方がひどい。
だが、彼女がそうして作ったミルクティーを、暗い情熱を込めた瞳で俺を見ながら口に運んでいるのを見ていると、本当に、そのミルクポットに入っているものは俺のザーメンで、彼女は
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