5.リトルブレイバー

「ヘレン、さん?」
「はい、ヘレンです。カーラ様の従者で、一般人の」
くすくす笑う私を困惑した瞳が見つめています。
私も赤く輝く瞳で彼を見返します。
「でも、ごめんなさい。私、皆さんに隠していたことがあるんです」
私はようやく収穫できる果実を前にして逸る気持ちをなんとか抑えます。

それでも、魔力を開放してしまえばもう止められないでしょう。
彼女たちはぐっすり眠っていて邪魔をするものもいません。

「まず、私の名前はヘレンではありません。本当の名前はヴィヴィアンと言います」
「ヴィヴィアンさん、ですか」
やっと名前を読んでもらえた。初めて彼を見たときからどれほど待ちわびたことか。
背筋を這いのぼる甘い痺れに思わず頬が上気してしまいます。
「そうですよ。でも、あの子達みたいに特別な呼び方をしてくれると嬉しいですね」
「特別な呼び方?」
「ええ、カーラお姉ちゃんとか、ヴェル姉さんとか、そういったものです」

ああ。考えています。ブレイブ君が私のためだけに頭を使ってくれています。
私はワクワクして待ちます。

「じゃあ、ヴィー姉、さま?」
はぅぅっ
#10084; この子ったら、この子ったらあ!
そんな上目遣いでおずおず言われてしまったら、イってしまいそうだったではないですか。
危ないですね。カーラのことをとやかく言えはしません。
それにしても、やはりこの子は逸材ですね。私の目的にも大きく貢献してくれそうです。
でも、今はそんなことはどうでもいいことです。
もっと大事なことがあるのですから。

「いいですね。ヴィー姉さま。でも、何故さまをつけたのです? 私は従者ですよ」
「なんだか今の雰囲気がお姫様みたいだったから」
いたいけな少年の上に跨っている私をお姫様みたいだなんて、とんだ王子様とお姫様がいたものです。
それでも、彼の直感には素直に感心してしまします。

「当たりです。私は確かにお姫様です」
私は魔力を解放します。仮初めの姿を捨てて、本来の姿に戻ります。


灯りのない世界では月明かりはとても明るいものです。
全てを強く照らし出す太陽とは違って、月は見ようとしたものだけを淡く浮かび上がらせてくれます。
窓から差し込む月影の下で、私の白い髪は静かに淡く銀に輝きます。
私の赤い瞳は部屋の中に入り込んだ赤い双子の月。彼を色欲の狂気に導きます。

頭の角の開放感が清々しい。
堅苦しいメイド服から解放された自慢の胸もお尻も、嬉しくて踊り出してしまいそうです。
くびれた腰も彼の幼い手に触ってもらいたくて、くねりたくてウズウズしています。
部屋の空気は溢れ出した私の魔力を孕み、月の光で清められます。
質の良い調度品が整然と並んでいる様もあって、まるで神聖な祭壇のようです。
新しい勇者の誕生の場所としてはふさわしいと言えるでしょう。


満を持して私、リリムのヴィヴィアンは舞台に上がります。
語り部からキャストの1人へと役所替えです。
いえ、語り部は続けるので、兼役でしょうか。
これから私は、私たちの夜を貪ります、愉しみます。

皆々様も良い夜を。





リリムの姿を晒した私の顔をブレイブ君は息を詰めて見つめています。
それから、半分ほど顔を出している私の胸を見て、滑るようにおヘソを、チラッと見えている下着を視界に収めて。
ゴクリと生唾を飲み込む音が聞こえてしまいました。
幼くてもやはり男の子ですね。それとも、私が魅力的にすぎるのでしょうか。
彼に視姦されて嫌が応にも高まってきてしまいます。

「そんな舐め回すように見られては恥ずかしくなってしまいます」
私は頬を染めながらブレイブ君に言います。気を抜くと口許がだらし無く緩んでしまいそうです。
「ご、ごめんなさい」
ブレイブ君は顔を赤くしながら、慌てて目をそらしました。
「いえ、いいのですよ。私は大歓迎です」
私はブレイブ君に顔を近づけます。至近距離に現れた私の方を向いてくれないので、両手を頬に当ててこちらに無理矢理向かせてしまいます。
「ブレイブ君はどこを見ていたのでしょうか」
私は意地悪く尋ねます。
「顔?」
ブレイブ君の手を取って頬に触れさせます。触られた部分が熱くなってきました。
「顎?」
指を取って輪郭をなぞらせます。時折掠る固い爪の感触がむず痒く、感じてしまいます。
「それとも、首、鎖骨?」
ゾクゾクする感覚が降りていきます。鎖骨の窪みを軽く押し込ませると、彼が浅く息を吐くのが伝わりました。
「やっぱり胸でしょうか?」
彼の細い腕が私の谷間に挟まれて埋もれてしまいます。私の呼吸に合わせて微かに胸と彼の腕が擦れます。
彼の口からは微かに呻き声のようなものが漏れました。私の体温だけでなく、高まっていく鼓動も彼には伝わっているでしょう。
谷間から顔を出している彼の指を私は咥えました
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