ここは教団の教えが根付いている、とある都市。
これといった珍しい景観や名産があるわけでもない、ありふれた都市だ。
何か一つあるとすれば、ここからそう遠くないところに親魔物領を謳う都市があるので、近々都市の奪還と魔界の浄化のため、遠征の準備を整えているくらいだろうか。
その遠征軍のリーダーを務めるのが、ラフィアである。
彼女は教団の聖騎士を務めており、実力は勿論のこと教団のみならず民衆からも大変人望がある彼女は、この都市で生まれ育ったこともあり、勇者として選ばれるのも時間の問題と噂されるほどにとても期待されている。
私は、そんな彼女と付き合っている。
……いや、正確には教団に目をつぶってもらって交際をさせてもらっていると言うべきであろうか。
少しでも恋愛に熱が入るようであれば、すぐにでも教団によって引き離されてしまうであろう、あまりにも脆い関係であった。
そのため、二人っきりとなってデートなどをするだなんてもってのほかだった。
彼女と出会うことがあっても、他の騎士を引き連れての巡回をしている時ぐらいなため、挨拶することすら難しく、とても付き合っていると呼べるものではない関係であった。
教団としては特に大切に扱いたいらしく、巡回の途中で民衆に呼びかけられて手を振ったりていると、周りの騎士達が『ラフィア様は大切なお方なので……』と言って、早く切り上げさせたこともあるほどだ。
私は、なんとかしてもっと一緒にいたり色んな事をしたいと思うものの、上手い方法は思い付かないでいる。
もし『聖騎士を辞めて一緒に暮らそう』と言ったとしても、期待の星でもある彼女を教団や他の人達が許してくれるとも思えず、思い悩むばかりであった。
いよいよ魔物領へと出兵する準備が整ったある日。
結局その日を迎えるまで何も考えが浮かばないまま、彼女は遠征に向かってしまった……
そして何日か過ぎたある日、魔物領に行った遠征軍は全員が行方不明になったということを風の噂で聞く。
教団側も消息を調べるために何人かを派遣したようで、その報告が『その部隊が敷いたであろうテントなどを見つけたものの、襲われた様子もなく人だけが綺麗にいなくなっていた』というものだった……
死体として地に転がっていないらしいことにほんの少しだけ安堵する。
が、二度と彼女と会えないと思うと、あの時にもし言っていれば……などと、今更どうしようもないことを思っては後悔をして、その日は涙を流すばかりであった。
その話を聞いてからも、彼女のことを忘れ去ることが出来ず、生気の抜けた人形の様にただ呆然とした日々を過ごしていた。
そんなある日の夜。
外はもう暗く、みんなが寝静まったであろう時に誰かが戸を叩く音が聞こえる。
こんな時間に誰だろうかと開けると、目の前には美しく黒い翼を持つ魔物が立っていた。
「えへへ、こんばんわぁ……
#9825; 二人っきりで会うのはいつ以来だろ?」
初めて魔物を目の前にしたことと、あまりに突然のことで足がすくみ声も出ないでいると、魔物が続けて言う。
「もう、ラフィアだよぉ
#9825; ラ・フィ・ア
#9825;」
「え……」
魔物の異形にばかり気が向いてしまっていたが、声や赤い瞳を持つ綺麗な顔にすらりとした身体は間違いなくラフィアだった。
「いや、そんな……まさか……」
しかしその翼や足は明らかに魔物の身体で、胸元と腰以外に服を着ていない肌の露出の激しさからは、以前の様な聖騎士の高潔さなど微塵も感じられなくなっていた。
それに彼女の左横腹には、ハートの形にも見える大きな紋様が刻まれていた……。
「う〜ん、すぐに気付いてくれなかった彼氏さんにはお仕置きが必要かなぁ?」
そう言って彼に抱き付いて唇にキスをする。
彼は驚いた顔をしたが、全く気にせず何度もキスをする。
彼とのキスと匂いによって、自分の中で興奮が高まってきているのがわかる。
これだけじゃ足りない……。
もっともっと欲しい……!
「んっ……
#9825; ちゅっ
#9825;」
口の中に舌を入れ舌同士を絡ませたり、互いの唾液を交換するかの勢いで情欲の赴くままにキスをする。
きっと今の私は酷くみっともない蕩けた表情をしているのだろう。
こんな姿を前の私が見たらどう思うだろうか。
下品ではしたなく、汚らわしいと軽蔑するのかな。
でも、恋人らしいことが全く出来ずにいたあの頃よりも……今の方がとっても幸せぇ
#9825;
こうして二人っきりになれて、抱き締めながらキスが出来るんだもの
#9825;
…………けれども、それでもまだ満たされず物足りないと感じてしまっている私がいる。
彼とのねっとりとした濃厚なキスは気持ち良くて、身体に刻まれたルーンもあるせいか、どんどん身体が熱くなっていく。
火
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