「ぬぅ…何故だ…!我が渾身の一撃が確かに直撃した筈…!それなのに何故、貴様は立っていられる…!?」
「そんなのも…わかんねぇのかよ…はは……案外、神様の尖兵って奴ぁ頭が悪いんだな…」
「魔の者どもに心奪われた軟弱者が減らず口を…!どの道、次で終わりだ!」
「それは…どうかね…?…言っとくが…俺ぁ…しぶといぜぇ…?」
「どれだけしぶとくても我が信仰は有象無象の区別無く遍く全ての魔の者を打ち砕く!!受けろぉぉぉぉ!!」
「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
―ガシャァァァン!!
「な…何故だ…!?何故…満身創痍で我がメイスと…主神に祝福された筈の我が信仰の証と打ち合える…!」
「…信仰…ねぇ…それじゃ俺には勝てねぇよ…」
「なん…だと…!?我が信仰を…!生涯全てを捧げた我が神を侮辱するか貴様ァァァ!!」
「だって、そうだろ?…信仰って奴は盲目的に神様って奴を信じるんだろうが。それがどんなことであろうと間違っているなんて考えず、受け入れる……その程度の芯じゃ俺の心は砕けねぇ…!」
「ぬぅ…!!」
「良いか…!教えてやる…!愛って奴ぁ辛いんだぜ…!相手が間違っているときもあれば、こっちが間違っているときもある。迷うことなんて数え切れないくらいだ。上手く行かないことなんて山ほどある。でも…それでも、愛って奴ぁ…キラキラしてて…だからこそ耐えられる…!」
「愛…だと…!?魔の者に誘惑された身で何を血迷ったことを!貴様の抱いているそれは愛などではない!ただ、奴らに植え付けられた性欲だ!!」
「…そうかもな。でも、それがどうした?」
「なっ!?」
「俺が愛だって言ったらそれが愛なんだよ!それを否定させることは誰にもさせねぇ…!貴様にも…神様って奴にもなぁぁ!!」
「ぬ…ぐぉぉぉぉぉ!!」
「貴様らが攻めてくるんだったら…それを愛じゃねぇって否定するのなら!!何度だって…どれだけだって戦ってやるさ…!お前らが否定するその性欲って奴を原動力にな!!」
「ば、馬鹿な…っ!押し切られ……っ!!ぬぉおおおおおっ」
「…はっ…テメェも一度…頭冷やして考えろよ。…信仰じゃなくて…テメェの頭と心って奴で…な」
「もうやめて!!!俺のライフはとっくにゼロよ!!」
― どうやら小芝居は終わったみたい。
そんな風に思いながら厨房から顔を出すと、しっかりとした体付きをした男性がゴロゴロと悶えるようにカウンターに突っ伏していた。どうやらさっきまでの小芝居は彼に多大なダメージを与えているみたい。それがちょっと可哀想だと一瞬、思ったけれど、面白いから放置しようと思う。
「いやぁ…まさかアレだけ大見得切るとは思わなかったんよ」
「まるで主人公ですねー。いやぁ、憧れちゃうなぁ」
「ショタ先輩にまで弄られた。死にたい」
そんな男性の左右を固めるように二人の男性が座っていた。一人は少年のような若々しい姿をした人。何処か気弱そうなイメージが付きまとうけれど、それが何処か保護欲を擽られるタイプだ。けれど、思わず抱き締めたくなるようなその顔は強い安心感に満ちている。それだけ話している二人の事を信頼しているんだろう。それが透けて見えるような態度に思わず私の頬も緩んだ。
その少年の逆側に座る男性はそこそこ整った顔立ちをしている。甘いマスクってこういうモノを指すんだろう。良くこの店に顔を出してくれるあのナンパ師さんほどじゃないけれど、街を歩いていれば視線を集めてもおかしくない。けれど、その顔はいやらしそうな笑みに染まっていて、まるでその素材の良さを感じさせなかった。意図的にやっているのか何なのか私には分からないけれど、もしこれがワザとやっているのであればかなりの曲者だろう。
「でも、実際、格好良かったんよ。何より大手柄だったし」
「へぇ…見てみたかったなぁ…」
「もう勘弁してください……」
そして、涙さえ流しそうなくらい重苦しい表情で突っ伏している男性は三人の中では最年長と言えるだろう。顎に無精ひげを少し生やした姿は歴戦と言える貫禄さえ伺わせた。引き締まった顔をしていればそれだけでも背筋が伸びていってしまいそうな姿ではあるが、その顔は今やとても情けないものに変わっていた。よっぽど今の話が彼の心に触れるのだろう。話を聞いている限り、ついこの間の戦いでの再現らしいが、その活躍に触れられるのは苦痛みたい。
「俺が愛って言ったらそれが愛なんだよ(笑)」
「信仰じゃ俺には勝てねぇよ(笑)」
「元中隊長ですが、友人二人がガチで黒歴史を弄ってきます」
― 『ミルク・ハーグ』のママですが、カウンターの三人が楽しそうです。
そんな楽
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