日本昔エロ話『コンキツネ』

 むかーしむかし。ある山に「コン」という一匹の子狐がいました。コンは一人ぼっちの子狐でシダの一杯、茂った森の中に小さな巣穴を掘って住んでいました。勿論、それはコンの両親が今流行りの育児放棄をしたとか虐待があったからなどではありません。結婚して早百年。その間、まったく愛情を衰えさせない両親の生活を邪魔しないようにコンは自らの意思で親元を離れたのです。今風に言えばコンは空気の読めるれでぃなのでした。
 
 さて、そんな子狐のコンではありますが、両親から食べ物を得る方法はしっかりと教わっています。偉大な七尾である母親にも褒められたその技術を使えば、食料を得るのはそう難しい事ではありませんでした。着物も家へと帰った時には母親から素晴らしい手縫いの一品を贈られるので、一人暮らしでも特に不満はありません。
 
 しかし、そうやって満ち足りたからこそ、好奇心一杯の子どもであるコンは色々と疼いてしまうのです。特に悪戯心に溢れたコンは夜でも昼でもふもとの村へと降りて悪戯をしてしまうのでした。畑に入って芋を掘り返したり、菜種殻の干してあるのへ火をつけたり、百姓の家に吊るしてある唐辛子をむしりとったり、いろんな事をしました。
 
 ある秋の事でした。二、三日雨が降り続いたその間、コンは外へも出られなくて穴の中へとしゃがんでいました。その心は勿論、退屈さで一杯です。七尾である母親の力を借りて作られたその穴の中はベッドに囲炉裏などが完備されている上に保存食もしっかりと残っていました。三日程度、外に出られない所で何の支障もありませんが、それでも退屈なのは変わりません。
 
 「早く雨あがらないかなぁ…」
 
 コンが何日も振り続ける雨を扉から見て、そう呟いたのは一度や二度ではありません。子どもながらの活力に溢れたコンは家でこもりきりでいるよりも外へと出て思いっきり身体を動かすほうが好きなのです。悪戯をしない時でも思いっきり山の中を駆けまわってその幼い身体に収まりきらない活力を発散してるのですから。
 
 「…ふぅ」
 
 そう溜め息を吐いた瞬間、コンの目に自らの姿が目に入りました。ふんわりとした金色の髪はまるで黄金そのもののように光か輝いています。肩ほどで短く切りそろえられているその髪は思わず指を梳き入れたくなる魅力に溢れていました。妖しい光を放つ紫の瞳は幼いながらに蠱惑的で見るものをドキリとさせる輝きを湛えています。まだまだ発展途上の肢体は小さいものですが、そのきめ細やかな肌は大人にも負けない張りと艶に溢れていました。
 
 その身体を包んでいるのは目も覚めるような鮮やかな赤い布地に金色の刺繍をされた独特の服でした。胴体を上から一枚の布ですっぽり覆ってしまうその独特の形は彼女の住む地域にはあまり見られないものです。コンは良く知りませんが、それはお隣の霧の大陸という場所で広く見られるタイプの衣服なのでした。しかし、一般的にあちらで見られるものとは違い、コンの丈は犯罪的に短いものです。少し動き回れば、見えちゃいけない大事な所まで見えてしまいそうなその短さは彼女のはつらつとした活力の中に混じる退廃的な色気を掻き立て、村の男衆をドギマギとさせているのでした。
 
 「ふふ…♪」
 
 そのままコンがクルリと後ろを向けば、今度は小さな尻尾が鏡へと映ります。一人前の淑女としてコンが毎日、手入れを欠かさないその尻尾は髪にも負けない立派な輝きを放っていました。彼女の自慢の一つでもあるその尻尾を鏡の奥にいる誰かに見せつけるように揺らしながら、コンはひとつ笑います。
 
 「えへへ…♪」
 
 コンは自分の姿が大好きでした。だって、それは大好きな両親からそれぞれ受け継いだものの結晶なのですから。スラリと通った鼻筋や切れ長の瞳こそ母親似ではありますが、目元は父親にそっくりです。ジパングでは珍しい髪の色も母親譲りですが、ちょっと跳ねた癖っ毛は父親から受け継いだものでした。その他、コンの身体は両親の要素が合わさって出来上がっているのです。寂しい時でも自分の姿を見れば、両親の存在を感じられて嬉しくなってしまうのでした。
 
 
 
 そんなコンが退屈さに飽き飽きしていたある日の事。ようやく上がった雨に負けないように太陽は輝いていました。雲ひとつないカラッとした快晴にコンは思わず嬉しくなって外へと飛び出しました。まだ地面が少しばかりぬかるんでいるのにも構わず、走りだせば、小さな家の中に閉じ込められていた身体が歓喜するのを感じます。そんなコンに負けないように木では百舌の声がキンキンに響いていました。
 
 そのまま勢い良く村の近くの川辺へと飛び出せば、コンの目にキラキラと輝くものが入ります。それは辺りに生えたススキの穂に雨の雫が残っており、太陽の光を反射しているからでした。
 
 「
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4 5 6..38]
[7]TOP
[0]投票 [*]感想
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33