ご主人様と一緒

 僕の『ご主人様』はちょっとだけ変わっています。
 水仙のような薄い水色の髪も、ルビーのように真っ赤な瞳も、ぴょこん、と髪から突き出た尖った耳も、ぎょろり、とした目玉が沢山ついていて少し怖いイメージの鎧も、そんな鎧に隠されてるけれど、本当は凄い大きい胸も、鎧から伸びるむちむちの太股も、全部、他の『ご主人様』とそれほど変わりがないように見えます。けれど、それでも僕のご主人様は少しだけ変なのでした。

 「…お外。行こう」

 そんな少しだけ変なご主人様が今日も僕の手を掴んでそう言いました。その表情はまるで能面のように固まって、何を考えているのか僕にはあまり分かりません。

 「えっと…どうしてですか?」

 僕たちが今居るのはご主人様の私室です。魔王軍の中でもそこそこのエリートであるご主人様は大きめの私室を与えられているのでした。しかし、その中はあまり整頓されているとは言えません。基本的に物に無頓着なご主人様は、物を整理する、と言う感覚に疎いのでした。自然、衣服や物はその辺りに乱雑に置かれて、部屋の中が散らかっていきます。それを僕が見かねて整理するのが何時もの休日でした。

 「ピクニック」

 僕の問いに短く応えてご主人様は少しだけさっきよりも力を込めて僕の手を握ります。

 ―これがご主人様なりの自己表現であり、おねだりの仕方であることは分かっています。なので、僕も出来れば応えてあげたいのですが…。

 「駄目ですよ。今日はお部屋片付けないと」

 最近はお仕事が立て込んでいて、ご主人様のお部屋を片付ける暇が無かったのです。今すぐ必要と言うほどではありませんが、僕にとっては我慢が出来ないほど部屋は散らかってしまっているのでした。最近は忙しく休日なんて滅多に取れないので、できれば今日の内に部屋を片付けてしまいたいのです。

 「……ぅー」

 しかし、ご主人様にとってそれは不満なようでした。まるで犬を飼って良い、と両親に聞いて駄目だった子供のように不満そうな色を瞳に溜め込んでいます。

 ―う…可愛い…。

 年上―そりゃもう魔物娘が魔物であった黎明期からずっと一線級で活躍していたご主人様ですから―とは言え、何時までも若々しく、美しいご主人様にそんな目で見られたら心が揺らぎます。

 ―だけど…ここは心を鬼にしないと…!

 次の休日は何時取れるか分かりません。その間に、ご主人様がお部屋を修復不可能にまで散らかしてしまうことも考えられます。そうなれば困るのは僕ではなくご主人様なのですから、ここで折れる訳にはいきません。

 「そんな目で見ても駄目ですよ!」

 そう言って部屋に散らかる衣服を拾い上げます。…しかし、よく見ずに拾い上げたそれは、白いレースで装飾してあったひらひらとした白い布でした。手触りはさらさらしていて、シルクで出来ているようです。

 ―それがご主人様の下着だと気づいた時には、僕は真っ赤になってそれを床に落していました。

 「…初心」
 「う…」

 そんな僕を相変わらずの無表情で見ながら、ご主人様はぽつりと呟きます。

 ―でも、仕方ないじゃないですか!人間の男である僕にとって、それは女の人の大事なもので、刺激が強過ぎるものなんです!

 「何回も見てる」
 「そ、そりゃ、まぁ、そうですが…」

 そりゃ…僕とご主人様は人間の男と魔物娘な訳だから、何度も何度もえっちはしています。昨日も久しぶりの休日前だからと、一晩中ここで繋がっていました。…お陰でまだ腰も痛いのですが、それはさておき。
 しかし、何度もえっちしているからと言って未だにご主人様の出る所は出て、引っ込むところは引っ込む整った身体に酷く欲情を掻き立てられるように、下着に慣れるのとは別問題です。誰がなんと言おうと僕の中ではそうなのです!

 「可愛い…♪」

 思わず、もう片方の手にぐっ、と力を込めた僕にそう言って、ご主人様は抱きしめてきました。今日は休日なのでご主人様も鎧を着ておらず、ラフなパジャマのままです。其のため、下着もつけずに素肌にパジャマを羽織るご主人様の身体の柔らかさはほぼダイレクトに僕に伝わってきました。
 むにむにと身じろぎするたびに動き、僕の顔に密着する胸も、僕の股間に差し込まれて内側を擦る弾力に溢れた太股も、それだけで理性を奪われそうなほど魅力的な部位なのですがー

 ―ま、負けるもんか…!

 最近はこうやって誤魔化されっぱなしなのです。僕としてもそろそろ負けるわけにはいきません。幸い、今までの負けた経験から対策は練ってあります。

 ―まず胸の間にいる時は息をしてはいけない…!

 もし、少しでも息をしてしまえばむせ返るような甘い香りに理性を奪われてしまうことは必至です。大きな胸で一部の隙も無いほど密着させられて苦しいで
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