「…オウル」
「ん?wwwwどうかしたwwww」
「美味しいぞ。とっても美味しい。お前の料理は何時も最高だ」
―その言葉が何時も口には出てこないものではあった。
勿論、今までも迂遠には伝えたことがある。だけど、最高だなんて一度も言った事はなかった。本当は心の中で思っていたのに、おくびにも出さななかった賞賛の言葉。それが今、私の口からスラスラと出てくる。それが妙に気持ち良くて、私がそれがもっともっと欲しくなってしまうのだ。
「どうしたのwwwファニーちゃんwwww」
「どうもしない。ただ…少しばかり素直になろうと思っただけだ」
そんな私の姿が意外なのだろう。オウルは不思議そうにそう尋ねてきた。それも当然だろう。私自身、こんなに素直になれる事が不思議なのだから。目の前でいきなり豹変された彼にとっては尚更だろう。
―思い返せば…そんな彼に今まではとても辛い事をさせてきたな。
毎日、律儀に私へと料理を運ぶオウルに私は今まで何の褒美もくれてやらなかったのだ。それが嬉しかったのに、それが唯一の楽しみであるといっても過言ではなかったのに、私はそれを認めず、ただ享受しているだけであった。何時かそれが無くなってしまうことを内心、恐怖していたのにそれを持続させる努力など欠片もしていなかったのである。
だが、それはいい加減、止めにするべきだ。私にはオウルが必要でいなくなられるととても寂しい。いや…とても悲しい。その想像だけで背筋が凍ってしまいそうなほど私は彼に入れ込んで…いや、好きになっている。ならば…彼にも私を好きになってもらえるように…誰かの代替品ではなく、私自身を好きになってもらえるように努力するべきだ。
「なぁ、オウル。お前は気持ち良いのは好きか?」
「そりゃwww痛いのよりは好きだけれどwwww」
「そうだな。私も…気持ち良いのは好きだ。ふふっ…♪お揃いだな」
勿論、世の中で痛い方が好きという特殊な性癖なヒトを除けば、それは殆どが共通する要素であろう。そんな事は私にだって分かっている。しかし、オウルと私の中のそんな小さな共通項を見つけるだけで今の私は嬉しくなってしまうのだ。その表情を綻ばせ、笑顔を形作ってしまうほどに。
―そしてお揃いであるという事が私の最後の躊躇を見事に破壊した。
「お揃い記念に…今日はお前を気持ち良くしてやろう…♪覚悟するんだな…
hearts;」
「えwwwwちょっと待ってwwwそれってwwww」
「お前だって…薄々感づいているんだろう?私が本当は…何を欲しがっていたかって事に」
「そりゃwwww魔物娘なんだからwwwwそういうものだって分かってるけどwwwww」
「それなのにお前は私の傍にいてくれた。私を構ってくれていた。こんなに可愛げのない私に優しくしてくれた。それは…お前自身もそれを期待していたからじゃないのか?」
それは彼の優しさを貶める暴論である。そんな事は私にだって分かっている。それでも彼の優しさを見返りを求めて行われた浅ましい行為に堕とす無茶苦茶な理論を口にしたのは私自身がそうであって欲しいからだ。オウルもまた私に何かを求めてくれていて、私はそれにちゃんと応える事が出来た…いや、もっと言えばそうする事で彼に好きになって貰いたい。そんな期待が篭った言葉にオウルは呆れたのか、それとも気圧されたのか口を噤んだ。
―ならば…今が好機だ。
「ならば、私がそれをお前にくれてやる。お前の欲しがったそれを最高の形で与えてやる。お前が今まで私に優しくしてくれたお礼として……な♪」
そう言って私は皿をテーブルへと戻し、ゆっくりとベッドへと乗り上げた。そのまま柔らかいベッドに膝を立て、一歩二歩と移動する。そんな私を呆然とそれでいて何処か期待の眼差しで彼が見上げていた。微かな興奮に頬を紅潮させる姿が妙に可愛らしい。少なくとも今の抵抗出来ない彼の姿から私よりも遥かに大きいという印象は欠片も感じられなかった。
「ふふ…♪可愛いぞ…♪そうやって期待する顔が…とても唆る…
hearts;」
「う、うぅwww信じて送り出したファニーちゃんがww素直になる事にドハマリしてwwww痴女みたいなセリフを言うなんてwwww」
「そう言う私は嫌いか…?」
―まぁ…そんな事はないのだろうが。
実際、彼の表情に悪いものは見えない。少しばかり恥ずかしそうではあるが嫌悪感は欠片も見当たらなかった。実際、首を傾げて問うた私の言葉にオウルは応えない。きっと応えようにもプライドが邪魔して難しいのだろう。私にもそのような経験がある――と言うか殆ど毎日であっただけに理解出来るのだ。
―だったら…私の方から歩み寄ってやらないと…な
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