ヘンゼルとグレーテルとお菓子な魔女

 むかしむかし、ある大きな森の近くに貧しい樵の家がありました。
 樵にはヘンゼルと言う男の子とグレーテルと言う女の子の子供が居ました。
 ヘンゼルはお日様に当たるときらきらと反射する太陽のような金色の髪をしていて、まるで夏の雲ひとつ無い空のような瞳を輝かせています。目尻は垂れ下がっていますが、それがまた柔和な印象を人に与え、優しそうな顔をしています。
 グレーテルはヘンゼルと同じ金色の髪ですが、お日様には中々、反射しません。しかし、まるで透き通るようなその金色の髪は静かで、まるで満月の夜のお月様のようです。二人は兄妹ですから瞳も同じ色をしていますが、きらきらと輝くヘンゼルの青とは違い、魚も棲めないほど透き通った湖のような蒼をしています。ヘンゼルより一歳年下のその輪郭は、ヘンゼルより幼く、まだまだ発展途上であることを感じさせ、全体として静かなイメージを人に与える少女でした。
 樵はどんな奴なのかって?どうしようもねぇくず野郎であることだけは確かです。
 二人は貧しい樵の生まれですから、その服装は近くの村の子供のお下がりを継ぎ接ぎしているものしかありません。また、二人とも本当は多くの人が振り返ってしまうほど美しい姿をしているのですが、毎日、樵の手伝いばかりしていて、顔は汚れ、食べるものも少ないので何時もお腹を空かせてがりがりにやせ細っていました。

 ある夜、お母さんが樵に言いました。

 「あんた。もうすぐ食べ物がなくなっちまうよ。明日、子供たちを山に棄てちまおう。じゃないと私たちまで飢え死にしちまうよ」

 この意地悪ですが、割と現実をはっきり見てるお母さんはヘンゼルとグレーテルの本当のお母さんではなかったのです。…と言うかどう見ても原因は樵ですよね。森の中なら食べるものがそこそこあるはずなのに、子供を手伝わせて樵の仕事もやっているのに家族四人も養えないとは。今で言う自宅警備員の色が強い人だったのかもしれません。

 「何てことを言うんだ!そんなことをしたら子供たちは狼に食べられてしまうかもしれないじゃないか!そんな可愛そうなことできるはずが無い!」
 「じゃあ、今すぐ、四人分の食べ物を買ってきておくれ」

 へタレなりの樵の反抗は、継母のその言葉であっさりと止められてしまいました。個人的に継母のこの言葉は夫に発奮してもらいたかったのではないでしょうか、とも思いますが、やっぱり樵はへタレなので、どうしようもできません。結局、樵は継母の言うことを聞いて、森に子供たちを捨てに行くしかありませんでした。
 そして…そんな残酷な話を隣の部屋で子供たちは聞いていたのです。二人はお腹が空いて眠れなかったのでした。

 「お兄ちゃん…私たち棄てられちゃうの…?」

 話を聞いたグレーテルは悲しくなって泣き出してしまいました。…しかし、それはヘンゼルも同じです。家計が苦しいのは知っていましたが、まさか親に棄てられてしまう日が来るなんて…、と半ば呆然としていました。
 ですが、ヘンゼルは隣のへタレ樵とは違い、すぐに立ち直りました。何故ならヘンゼルの傍らには妹が居るからです。遊びたい盛りを―まぁ、それはヘンゼルも同じなのですが―樵の仕事の手伝いに浪費し、村へと遊びに行っても、小汚い格好なので子供の仲間に入れてもらえない可哀想な妹。その妹を自分が護らなければ誰が護るのか。ヘンゼルはそう決心すると、グレーテルの髪を手で撫で梳き、安心させるように抱きしめます。

 「大丈夫だよ、グレーテル。僕が何とかする。安心して」
 「うん……」

 そのままグレーテルが泣き止み、寝付くまでヘンゼルは彼女を抱きしめつづけていました。自分も辛いでしょうに、なんと言う男前でしょう。この辺りの気遣いが人気の秘訣に違いありません。
 …まぁ、それはさておき。グレーテルだけでなく、樵と継母も寝静まった深夜になりました。ヘンゼルはこっそりと家を抜け出し、月明かりの下で光っている小石を沢山、拾い集めます。小石とは言え結構な量を集め、ポケットが一杯になった頃。ヘンゼルは家へと帰ってきました。


 次の日。ヘンゼルとグレーテルは朝早く継母に起こされました。

 「さ。今日は森へ行くよ。これが今日のパンだ。お昼まで食べるんじゃないよ」

 四人はどんどん森の奥深くへ入っていきます。
 ヘンゼルはみんなの一番後ろを歩いていました。そして時々、後ろを見ながら、ポケットの中の小石を一つずつ道に落としていきます。正直、子供用のポケットでそれだけ小石を詰め込んだら膨らみまくって気づくんじゃないか、って気がしないでもないですがきっと樵はへタレなので気づかないし、継母は薄々感づいていて言わないでいてくれたのでしょう。
 そして、そのまま森の奥深くに着くと継母は二人に言いました。

 「良いかい。お
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