その2



 「…あ……っと…」

 崩れ落ちるネリーをしっかりと捕まえて抱き寄せるマークの顔には、最初のようなケダモノのような色は決してなかった。どれだけ射精したのか当事者ではないボクには分からないが、結合部から漏れ出し、薄黄色の水溜りに泡を広げるだけの量は、決して一度や二度ではないだろう。流石に両手で数えられないほどではないだろうが、それだけの回数をこなしていればインキュバスと言えど、若干、冷静になる。

 「…とりあえず…ネリーはソファで良いかな?」
 「あ、あぁ、うん。良いと思うよ」

 唐突にマークがボクを見下ろしているのに気づき、ボクは若干どもりながらもそう応えた。それに彼は頷いて、そっとネリーの身体をソファへと横たえる。返事こそ無いものの、意識はあるのか「ふぁあ…♪」と甘えるように声を漏らすネリーからマークがオチンポを引き抜くと、開いたままのオマンコからどろどろと精液が漏れ出してソファを汚した。どれだけマークが、ネリーのオマンコで感じていたのかを見せ付けられるようなその光景にボクの我慢はついに決壊してしまう。

 「…ねぇ…マークぅ…♪」

 ネリーが心配なのか、ソファから離れても心配そうに彼女を見ているマークにボクは自分でも以外だと思う程、甘えた声を出しながら寄りかかった。ボク自身が軽いというのもあるのだろうけれど、服の上からでは分からないほど逞しい肢体を持つ彼はそっと受け止めて抱きしめてくれる。

 「次はボクの番だからぁ…ボクを見てよぉ…っ♪」
 「…あぁ、ごめんね」

 オスに媚を売るような甘い甘い声のまま言うボクの背を彼の手がそっと這う。薬草を磨り潰したりする関係上、ちょっとゴツゴツしている男らしい指がボクの汗を拭うように降りていく。それがマークの指だと知っているボクにとっては、それだけで足元からぞわぞわと蟲が背中を這い上がるような快感が湧き起こった。思わず崩れ落ちたくなるけれど、内股になりながら堪え、ボクはそっとマークの胸に顔を埋める。

 ―あぁ…♪マークぅマークぅぅう……っ♪

 ネリーの甘いフェロモンの残滓こそついているものの、春の草原のような彼の体臭は未だに健在だ。彼女の残り香に若干の嫉妬を感じるけれど、でも、逆にそれがボクとマークだけの時間が回ってきた事を強く意識させ、オマンコからどろりとまた愛液を漏らす。寧ろこの残滓を消し飛ばすくらい甘く交われば良いだけだ、と肯定的に受け取ったボクはそのままマークの胸板に指をつつと這わせた。

 「…まったくぅ……寂しかったんだからねぇ♪」
 「…ははっ」

 ―…あれ?

 てっきり困ったような表情を浮かべるかと思ったけれど、マークは寧ろ嬉しそうな笑みを浮かべている。無論、その中には気まずさのようなものも確かに存在しているが、それよりも大きな喜びの色が見て取れた。思わず首を傾げたくなったボクを見ながら、マークは逃がさないようにぎゅっと抱きしめて耳元に顔を近づけてくる。思いもよらないマークの積極的なアプローチにボクは抵抗しようと言う気さえ起こらないまま、自分からも腕を彼の身体に回した。

 「…昔もそう言ってくれたよね」

 ―え…?昔って…え……?

 けれど、幸せな時間と言うものはそこで終わってしまう。マークの言葉にボクの身体の中の熱がサーッと落ちて、寒気さえ感じた。さっきまでは子宮が我慢できなくなるくらい疼き溶けてしまいそうな熱が全身を覆っていたのに、その片鱗さえも感じさせないほど見事な消え失せた今は寧ろ日差しの中で寒気さえ感じてしまう。

 ―え…なんで……え……?

 確かにボクは以前、マークにそう言った事がある。…でも、それは『ボク』ではなく『私』だったはずだ。…こうやって堕天使になる以前に出会った頃…マークと恋人同士であった頃の『私』だったはずなのだ。

 ―勿論、ボクだって堕天使のまま生まれてきたわけじゃない。天使だった時代は確かにあった。

 天使の中でもそこそこのエリートだったボクは…かつてのネリーと同じように主神である『お母様』の言葉を託宣を授けられ、地上へと降り立った。教会の中枢部に降り立ったボクはそのまま魔界への侵攻を助ける為、様々な祝福を彼らに授け、磐石の態勢で魔界へと攻め込んで行ったけれど……結果は惜敗。何度も何度も戦った『私』たちは魔王軍と一進一退を繰り返し、二年ほど戦い続けましたが…それでも結果は変わりません。目の前で私を逃がす為に戦う騎士たちを助ける事も許されず、気づいたときは私一人でボロボロになって倒れていました。

 ―天使といえど所詮、私は下級天使です。受肉すれば食料が必要になります。けれど、その時の私には『食べられるもの』なんて何もありませんでした。

 無論、きちんとした知識があれば食べられる草やキノコなんてものもあっ
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