魔物娘的新婚生活

 むかしむかし…ある図鑑世界にある夫婦がいました。
 奥様は砂漠の日に焼けた様な見事な褐色の肌をしていて、普段は黒い薄布を胸や秘所などの局部に身につけているだけで、その自慢の肌を見せ付けるような格好です。髪は最高級のジパング人形のような艶のある黒で、ストレートに腰近くまで伸ばしていました。奥様としては長い髪は職務の邪魔になり、手入れも維持も大変なのですが、旦那様が長い髪が好きだとぽつりと漏らしてからずっと伸ばし続けている大事な大事な髪なのでした。
 また、普段は天秤を象った見事な金の尺杖を持ち、腰には金の宝剣を靡く奥様は多くのヒトに命令を下し、管理するのが仕事なので、あまりお家に帰ることが出来ません。帰ることが出来ても夜遅い時間帯であったりするのです。エキゾチックな装飾品を身につけ、それらを狙う襲撃者たちと戦う奥様は、会う時間があまり取れないながらも、心から奥様は旦那様を愛していましたし、責任ある役職について誇らしい反面、スキンシップも取る時間が少ない事を悔いていました。
 そして、旦那様もそれはしっかりと理解していました。著名な考古学者であり古代遺跡についての論文を幾つも発表している旦那様は普段から家へと篭りきりです。身嗜みというモノに無頓着な旦那様は髭も剃らず、一心に研究だけを続けるのでした。けれど、それは単純に知識欲だけのものではないのです。奥様が帰ってきた時、「おかえり」と笑って出迎えて上げられるように、旦那様はあまり家から出ようとしないのでした。
 そんな二人がゆっくりと一緒の時間を過ごせるのは、奥様の休日だけです。自然、夫婦の営みは奥様の休日にばかり集中することになるのでした。その営みは激しく、奥様が帰ってきた日…つまり休日の前日から貪りあうように絡み合う二人は今、ベッドの上で重なり合ったまま眠りあっています。

 ―ピクリ…っ

 大の字になった旦那様に身体を預けるようにしっかりと抱きつきながら、眠る奥様の耳が何かに反応したかのように動き、髪の上でひくひくと震えました。同時にふわふわとした毛に包まれた尻尾が起き上がり、ゆっくりと力を取り戻します。旦那様に抱きつくように委ねている四肢もまた艶やかな黒い毛に覆われ、触れるだけで夢中になりそうなほどです。
 そう。奥様は人間ではなく、アヌビスと言う魔物娘なのでした。考古学の研究の為、遺跡に立ち寄った旦那様と敵対したのが二人の馴れ初めです。それから何度も遺跡研究の為、調査をさせて欲しいと頼む旦那様を追い払いながら、その顔を忘れられなくなった奥様は…砂嵐で追い払うことも出来なかった日、ついに想いを成就され、結ばれたのです。今では旦那様は研究を諦め、奥様に手を貸しながら遺跡の中の一室…遺跡の管理者である奥様の家を愛の巣として暮らしていました。

 「ん…っ♪」

 そんな愛の巣の主である奥様が小さく声を上げながらゆっくりと目を開けました。ぴくりぴくりと周囲を警戒するように何度も震える耳とは対照的に、緩慢な動きで状況を把握しようとするその瞳は寝惚けているのか何処か胡乱なものです。焦点さえ定まっていないそれは自分の下で未だ眠る旦那様の姿を捉えるとはっきりとした喜色を浮かべて、笑みのような表情を奥様に浮かばさせました。

 「アナタぁ…♪」

 そう呼ぶ奥様の顔は普段、マミーたちを率いる管理者の姿とは到底思えません。一枚の薄布も魔法の道具も持たず、愛しいオスの姿に心乱され、身も心も全部捧げたメスそのものなのですから。けれど、その表情は同時に何より幸せそうなものでした。当然です。だって、身も心も旦那様に捧げた奥様は傍に旦那様がいるだけで、世界中の誰よりも幸せな気分になれるのですから。

 ―あぁ…こんなに良い匂いさせちゃってぇ…っ♪

 心の中で陶酔したように声を漏らしながら、奥様はすんすんと鼻を鳴らすように匂いをかぎました。部屋中に広がっている発情したオスとメスが出す濃厚なフェロモンが混ざり合ったそれは、勿論、奥様と旦那様から放たれたものです。昨夜の情事の残滓に、沢山子宮に精液を飲ませてくれた感触を反芻しながら、奥様は下腹部にそっと手を置きました。とくとくと今も律動しているそこは、今も尚、膣内で勃起している旦那様の性器を咥え込み、朝の一番搾りを貰おうとしています。

 「あはぁ…♪」

 喜悦の感情を一杯に込めた吐息を漏らしながら、ぐりぐりと首を擦り付けるように奥様は甘えます。まるで目の前のオスが自分自身のものだと主張するかのようにたっぷりフェロモンをつけた後、奥様は満足げに微笑んで、ゆっくりと腰を左右に揺らし始めました。

 ―また、こんなにぃ…大きくしちゃって…っ♪

 勿論、奥様はもう旦那様と結婚してもう何十年ですから、それが男性の生理現象であることなんてとっくの昔に分かって
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