―ガキの頃は女が煩わしくて仕方が無かった。
多くの傭兵と同じように悪ガキであった俺にとっては、女なんて足手纏いなのに口だけは五月蝿いお節介焼きだった。だから、困らせたくて、ちょっとした子供心ながらの悪戯をしたことも沢山、あったが…あれは今思えば、愛情表現の一種だったのだろう。ガキであった頃の俺は煩わしい煩わしいと言いつつ、凄い意識していたのは…まぁ、多くの奴が経験のあるものだと思う。
―センズリを覚えてからは何か見ていると興奮するような相手になった。
例えばガキの皆で、川へと水遊びに行ったり、水を使った悪戯をする時に、水にすけて張り付いた肌とかさ。少しずつ女の色香を身につけつつある少女って言う奴は俺にとってとても眩しい存在で…まぁ、スカートめくりの後とか、下着を恥ずかしくなるくらい見つめて物陰で思い出してセンズリとか誰だってやった経験はあるだろう。無くてもあるっていうことにする。
―傭兵を目指した頃には、性欲処理の道具になった。
陳腐な英雄譚に憧れて、住んでいた故郷を離れ、ある傭兵に弟子入りした頃には精通も始まっていたな。師匠は子持ちで傭兵やってるって言う色々ぶっ飛んでいたが気の良い人で、童貞のまま死んだら死に切れないだろう、と行く先々で娼館に連れて行ってもらった。童貞でなくなっても、勝ち馬に乗れた時には必ずと言っていいほど奢りで連れて行ってもらったな。根無し草として各地を転々とする生活だったので、一人の娼婦に入れ込むことも無い。けれど、様々な娼婦の技を味わい、そして様々な技を教えてもらったこの時代は俺にとって傭兵としてだけでなく、男の下積み時代でもあった。
―この街に着いた時、俺にとっては愛しい相手になった。
教会とでっかいドンパチをやると聞いて、師匠と俺がこの街に着いたのは必然だった。けれど、こんなでかい街で様々な娼婦を夜を明かした俺が何の変哲も無い飯屋の看板娘に一発で惚れこんだのは、今でさえ運命だと思っている。…例え、その先に待っている展開を知っていても、俺はその女に入れ込んだだろうし、結婚したであろう。それほど、俺にとってその相手は愛しい相手だった。だからこそ、俺は戦いを終わった後、傭兵を辞めて、ここで根を張る事を選んだのだから。
―俺が一年、街を空けると別の男のモノになっていた。
傭兵を辞めて警備隊に入った俺は傭兵時代の腕を買われて、領主と教会との条約を結ぶ場に連れて行かれた。しかし、そこでちょっとしたゴタゴタに巻き込まれて、領主ごと街へ帰れなくなっていた訳だ。勿論、手紙を出せば足が着いてしまうし、死亡説さえ流れていたのだから、俺としてはその事を責めるつもりは無い。出会った頃、清純で優しかったはずだとしても…相手の男は街へと立ち寄った傭兵で恋に恋しているのだと知ってはいても、例えその腹の中に、俺のではなく、その男の子供が宿っていても、俺はそれを許していた。
だって、そうだろう?何もかも投げ出して本気惚れた唯一の女の子供なんだ。別の男の血が入っていても、俺にとっては宝物であるのに違いは無い。
―子供を生んだ後は裏切り者になっていた。
俺を捨てるのは構わない。彼女の心の中には俺の姿はもう無かっただろうし、彼女にとっても死んだと思っていた男との生活は辛いものであったのだろうから。産後間も無い体で失踪したのは旅を知るものとして止めたかったが、死んだとの噂も聞かないし、何処かで生きてはいるのだろう。
けれど、そんな風に思える俺でも自分の子供を捨てて、男のところに走ったのは許せない。別に子供を連れて行け、と言う訳ではない。生まれたばかりで離乳食も咽喉を通らないような子供を連れて行くなんて自殺行為でしかないのだから。けれど…母親としての責務を一切捨てたその行動には惚れた女とは言え、吐き気さえ感じる。
―裏切られた後…俺にとって女は娘になっていた。
だからこそ、俺は誰よりも娘に愛情を注いだつもりだ。母親が居ないのを引け目に感じさせないように、若干、自分でも親馬鹿だと思うほど、溺愛した。その結果、娘はすくすくと育ち、何処に出しても恥ずかしくない―いや、出すつもりはまだまったく無いが―良い娘に育ってくれて…親馬鹿としては鼻が高い。
無論、その間、仕事にも打ち込み、片親や逃げられたという境遇に同情的であった同僚の助けもあって、俺は大隊長まで上り詰めた。公式な場にも出ることのある俺は普段の一人称も『私』になり、精力的に仕事を続け、特に女には目を向けず娘だけに愛情を注いできた。
―そしてそんな娘が今日、旅立つのだ。
「旅立つって…パパ…そんな大げさな」
「大げさなものかっ!!!!教会で寝泊りしなきゃいけないなんてパパにとっては旅同然だぞ!!!」
いつの間にか口に出してい
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