突然だけど………今日の僕。花上 純一(カガミ ジュンイチ)は眠い。
ここは普通の一軒家。かと言っても広さと言えば7人ぐらいが寝泊りできるだろうこの家に、僕は一人で住んでいる。
眠い理由は他でもない………昨日はアイディアを考えるのに集中しすぎて深夜まで起きちゃったからね。おかげで深夜アニメとかも見られたけど。
アイディアを考えるで僕がどんな仕事をしているかは分かる人もいるかと思うけど……僕は大学に通いながら大手玩具、食品(お菓子)メーカーの発案役を担っている。
本当は社長である叔父が経営していた小さい会社だったんだけど経営難で潰れかけて、もう駄目じゃあ!と泣き叫んでいる叔父に、たまたま自分が思いついた作品を作らせて売ってみたところ、製造が間に合わなくなり一時期発売中止になってしまうほどの大ヒット。それによってノッてきた会社は急成長して様々なヒット商品が売られるようになった。
もちろん………その商品の大半のアイディアは僕が考えたんだけど。
それにより、お前にこの会社の全てを預けるとか言い出して、表面上には叔父が経営しているけど全権は僕が握る形になっていた。
まあ僕はただアイディアを考えているだけだから叔父の手伝いをしている大学生としか周囲の目に映ってないため、日常生活に支障は出ないのは救いだ。
これで社長!社長!ともてはやされてたら目立つのが嫌いな僕は病んでしまうだろう。
現在、朝の9時…もう少し寝たかったんだけど生活リズムを狂わせるわけにはいかない。いくら大学が冬休みだとは言えキッチリしておかないとな。
PPPPP!
「はい、もしもし花上ですけど」
「お〜純一ぃ〜〜。元気かぁ〜?」
突然電話が鳴り、でてみると僕の兄…哲弥(テツヤ)だった。
「なんだ、兄貴か」
兄貴と分かったら言葉遣いで遠慮する必要は無い。いきなり結婚宣言をしてどこかに行ってしまった兄。近くにいることは分かったが会う気にはならない。
「で?……何のようだよ…」
精一杯の敵意を込めて相手に聞く。
「なんだなんだぁ?久しぶりの兄の電話だってのに泣いてくれないのかよぉ。あ〜あ、折角電話してやったのに…俺はそんな薄情な弟を持ってしまったのか」
「うるさい…兄貴が僕に電話する時は必ず面倒事やら嫌な事が起こるからね」
こういう兄なのだ……冗談好きで噂をさらに捻じ曲げ広げるタイプの人間だ。
嫌いではないが自分の秘密を知られたくない奴NO,1と彼を知ってる人達は皆が断言すると思う。
「察しが本当に良いなオマエ。さすがは俺の弟と言ったところか。実はお前にプレゼントがあるんだ。そろそろ宅配便で届くはずだがな」
プレゼント?………ウサンクサ!!今日は祭日でもなければ誰の誕生日と言うわけでもない。それなのにプレゼントなんて……考えただけでもおぞましい。寒気がする。
『宅急便で〜す!!』
何でこんなにちょうどよく来るんだよ!どんだけ計算高いんだ!?
「お?ちょうど来たみたいだな。まあ、仲良くヤれよな」
ブツン…ツー、ツー、ツー。
なんで「ヤ」を強調するんだ。しかも仲良くって…動物でも送ってきたのか?
玄関を出ると営業スマイルで固めた従業員が結構デカイ段ボール箱を持っていた。ドアを開けた瞬間、肌を刺す様な寒さに襲われる。今は冬……キッチリと服を着ているがパジャマは寒いな。
従業員は帽子と…インフルエンザ対策のためかマスクをしている。
「では、こちらに判子を押してください」
この声…どっかで聞いたことがあるような……オォ寒い!雪もかなり降ってるしさっさと判子押してドア閉めよ…。
判子を押して段ボール箱を受け取ると、さっさとドアを閉めた。
……一瞬しか見えなかったけど…あの人、目が笑ってなかった?
まあいいや。受け取ったダンボールはかなり大きい、そして重い。動物でも入ってるのかと思ったけど暴れてないし……何が入ってるんだ?
暖かい居間に着いてからダンボールを床に置いて中身を開ける。
…何が入ってるのか………目を疑った
夢だと思った。
「スゥー、スゥー、スゥー……」
中に入っていたのは一人の少女。十歳ぐらいだろうか…小さくて少し抱きしめたら折れるんじゃないかと思ってしまう程に可憐で細くて……光が散りばめられていると錯覚させる程の魅力があった。
だけど僕の一般人としての常識がその存在を許してくれない。
すぐさま兄貴に電話をかける。
「兄貴!どういうわけだよ!?僕にダッチワイフをプレゼントだなんて何考えてんのさ!!」
「ハッハッハッハッハ!!お前その娘がダッチワイフに見えるのか?どんなDQNの発想だよ。なんなら触ればいいじゃねぇか」
だからって…もし本当だったら僕の人生に終止符が打たれるぞ。というか兄貴の含み笑いまで聞こえる……僕がこんな風に電話をする事を予想してたんだな。
「ん……う〜ん………スゥー
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