水魔

「シッショォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーー(エコー)!!!」
フレイの謎の叫びを聞いた後……私は黙々とパフェとプリンを食べる。
パフェとプリン…甘い物は私を満たしてくれる。さすがにオイシイと声高には言えないが今の私を鏡に映せばさぞ顔が緩んでいるだろうな。私達デュラハンは精を糧に動いているのだから食物を摂る必要は無い……だが味覚があるためか精とは違う味を欲する同族も多い。
ちなみに私は誰の精を貰っているのかは………騎士団員では様々な噂が立っているが大体分かるだろう。あの二人は本当に上質な精を持っていて同じ騎士団員のデュラハンも狙っているらしい。………させないがな。
「さて、そろそろ行くとするか」
二つのスィーツを食べ終わった私はフレイの部屋を後にする…窓はいつ修理させようか…。まあ武器は置いていってしまっているし、また来るはずだからこのままでも良いだろう。
私は令状を見る…内容は秘密裏に会議をしている貴族達の内情の調査……そして可能ならばその証拠を掴み、貴族達を捕縛…証拠が無くても捕縛しろ……だそうだ。
「………フム…」
私は疑問に思う………この手の任務はヤツの方が適任だ。国王は効率ではなく民の心を第一に考えているが私達四聖の中で調査などというデリケートな任務を扱えるのは性格でも技術でも私より適任な人材がいるというのに何の意図があってのことだろうか…?
その疑問を晴らすべく、王室に向かう。本来騎士団は王に謁見するなど夢のまた夢なのだが2年前のあの出来事から、四聖制度ができて、その四聖だけ騎士団の中では謁見可能になった。王室…謁見の間とも言うべき部屋の入り口は重厚で豪華な扉だった。
……この奥に王と王妃がいる。騎士として緊張すべきなのだろうがそんな事になればたちまち雰囲気に呑まれるだろう……それだけは避けたい。
「リデルじゃろう…?分かっておる。さっさと入ればよいではないか」
扉が閉まっていると言うのに女性の美しい声が響く…恐らく魔法で声を伝達しているのだろうが……。
「失礼します……」
扉を開けると子供達が遊べそうなほどの広さの部屋……その奥の豪華な二つの椅子…玉座に座っている二人の人影が見える。
「全く…お主はこの国を改革してくれた英雄の一人だと言うのに…王などに畏まっては妾達が困ってしまうではないか」
畏まっていた私を見て呆れた声音で話す女の声…
玉座には…この場では場違いな豪華絢爛な着物をきて扇子を口元に当てる仕草をする女性がいる。
……王妃だ。
私はすぐに片膝を付き、
「お言葉ですが…私は英雄ともてはやされるほどの功績を残した覚えはありません。例えそうだとしても私はただの少し名の知れた家の生まれ…貴女とは身分が違い過ぎます…ですから」
自分はあくまでもこの国が良き国でいる事を願って騎士を務めているに過ぎない……陛下とは違いすぎる………
「あ〜あ〜あ〜!聞きとうないわそんな身分がどうとかなどなぁ!妾もお主もこの世界に生きる生物。それで良いではないか」
だけど私の言葉は遮られた…王妃はこういう御方だ。身分とか種族の区別をしない。
すると隣の玉座から…
「オイ、興奮していると出てしまうぞ」
王妃の隣に座っている男…この国の王が王妃に注意をする。
服装は王なのだが頬にある傷やその体つきはまだ若々しく、どちらかと言うと兵士の方がしっくりくる。こんな場違いの二人がこの国を統べているのだ。
「お主は五月蝿いのう。この場は妾の秘密を知っている者だけじゃ。隠しても仕方が無かろう」
やれやれ…といった口ぶりで言う…一度目を閉じた彼女の後ろには金の屏風が並んだ。私は東の方にある屏風という物は絵でしか見たことは無い………がこの揺れる屏風に勝る物は無いと思う。
正確には屏風ではなく…狐の尻尾だ。
尻尾が妖しく動き、揺れる姿の中心に王妃がいる。
「はぁ〜〜〜……尻尾が多いと隠すのに疲れる…出す瞬間というのは妾にとって至福の時じゃ」
彼女は…妖狐。しかもその尾の数は既に九本だった。九尾の狐は神に匹敵すると言われるがこの御人は昔の魔王がいた時代からずっと生きてきた数少ない魔物で、尾が九本になってから何百年も経過しているらしい。尾はあくまで魔力のシンボル…恐らく魔力はいまだに増え続けているのだろう。
「全く…身分だとか尻尾がどうとか……いつもこの世に生きる物達はそうやって差別を生んだりくだらない事で戦争をしよる…。リデルもリデルじゃな、身分の違う幼馴染が三人もいて今更身分を考えるか…?そんなだからお主はいつまで経ってもデコリと呼ばれるのじゃぞ」
陛下は何かを思い出したように笑みを浮かべ……禁句を口にしてきた…
「なっ!?陛下、いつその名を!!」
「アルマがたまに妾の所にきて度々言っておったぞぉ♪デコリがデコリでデコリじゃとなぁ」
だから陛下の
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4 5 6 7]
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33