照りつけるような朝。太陽の光が降り注ぐ…。
「う〜〜ん…むにゃむにゃ…」
マインデルタ城、城内の一室・・・その中で僕はベッドに潜り込んでいる。
コツ…コツ…
廊下に続く扉から何者かが歩く音が聞こえる…その音は、だんだんと近づいて来た。コンコン…と扉は軽く叩かれてその後、勢い良く開かれる。
「起きろ!!もう会議が始まる時間だぞ!」
扉が開かれた瞬間、女の人の怒号が僕の耳を突き刺す。
もう起きないといけない…でも寝たい…起きたい…寝たい…。
僕はその二つの願望の中で葛藤しているうちにまた夢の世界へ…うつらうつらと…zzz。
バサッ!!
「言っても起きないのなら…」
部屋に入ってきた女の人は僕を毛布ごと掴んで頭を振り上げてきた。胸ぐらを掴まれているような体勢になった僕の頭はちょうど今、その人の頭と同じ位置だ。
「わわわわ!?ちょ、ちょっと待って!!リデルさn」
僕は目を覚まして目の前に近づいて来るものに気づいて止めようとしたけど。
ゴチン!!
時すでに遅し。言葉が言い終わらない内に頭突きを喰らった。
「いっだーーーっ!!何するんですか!?」
頭突きを喰らった拍子にベッドに落ちた僕は、涙目のまま頭を押さえ転がりまくる。
そんな僕を面白いのかクスクスと笑いながら見ている女性…リデル・シュテンリヒ。
「…毎度の事だが、その仕草が猫が転がるようで可愛いんだ」
猫じゃない…僕は断じて猫じゃない。顔だって鏡で見ても猫と似ていない。というか頭突きをしたら互いに痛むはずなのに、リデルさんは何も無かったかのようだ…不公平だと思う。
「とりあえず早く寝巻きから着替えて会議室に来い。茶ぐらいは出してやるから」
彼女は少しも謝る気も無く言ってきた。
「ふぁ〜い…」
「ちゃんと返事をしろ!」
やる気無さげに言った返事を、生真面目なリデルさんは許さない。
「ハイ…」
さすがにこれ以上はマズイから返事を改めた…怒ると怖いんだもん。
着替え終わった僕はリデルさんと一緒に廊下を歩いてく。
その豪勢な廊下は思わず歩くのを躊躇ってしまうほど…正直な所だけど、豪華な造りは好きじゃなかった。
隣を歩くリデルさん。まだ任務でもないのに重厚な鎧を着てる。だけどその足取りは静かで鎧を着ているなんて思えないんだよなぁ〜。軽いのかな?その鎧。
歩く度に青みがかった銀の長髪がなびいてふわりといい香りが漂って来る。鎧と銀髪は不釣り合う事はなくむしろ凛々しく見えちゃう。
「そういえば僕のこと猫って言いましたよねぇ…」
少し見とれてちゃったけどさっき言った言葉を思い出して睨んだ。だけど僕の場合、背が彼女の身長の高さも相まってリデルさんの胸のちょっと下ぐらいまでしかないんだよ…僕が見上げていると、それがまた猫のような気がしてならないんだとか。
僕が睨むのに気が付いた彼女は柔らかな笑みを見せ、
「…よしよし…猫と言った事は謝ろう…だが寝坊しないように気を付けて欲しいのだがな」
からかい混じりで僕の頭を優しく撫でてくる。気持ちいんだけどかなり遊ばれているような気がしてムカつく。だからつい…
「デコリめが…」
禁句だというのに呟いてしまった。頭を撫でていた手に力がこもり、寒気に襲われ、恐る恐る見上げると…
「そうかそうか…そんなに私の頭突きが気に入っているのか…。お前にそんな性癖があるとは思わなかったぞ…」
黒いオーラを身に纏った騎士がいた。ヤバイ…見た目は笑ってるけど肝心の眼が笑ってない。
デコリ…というのは幼い頃の彼女の愛称である。あの頃はカチューシャで前髪を纏めてたし、何より頭突きが得意だったからねぇ〜。
そして身長を合わせる為に抱っこしてきて、頭を思いっきり振り上げる!!
「わわわわ!!?タンマ!!タンマ!!タンm」
ゴォォォォ……ン…!!!
後日…鐘の無い城には城内七不思議の七つ目に「朝に鳴る幽霊の鐘」と言うものが記録された…。
「オッス、リデル。んでお前に抱きかかえられてんのはぁ〜…なんだ、アルマじゃねぇか」
目を覚ました僕の視界に入ってきたのは蜥蜴の尻尾を持つ女性…リザードマンだった。
「フレイ…お前は遅刻せずに来たようだな。色々あってアルマが気絶したのでな…私が運んできた」
だけど姉ちゃん…フレイ・リザイアはさっきの鐘の音を聞いたのか、赤い燃えるような髪を束ねたポニーテールを揺らしながら苦笑いを浮かべた。…そろそろ下ろしてもらいたいんだけどなぁ。
僕の意図を察してくれて、リデルさんは僕を床に下ろしてくれる。
「しっかし、アルマをそんな風に抱きかかえてると、リデルはお母さんに見えてくるな〜」
「な!?何を言っている!!私達はただの幼馴染じゃないか!そ、それにまだ私は母になるほど老けているつもりは無いぞ!」
姉ちゃんの一言にリデルさんは顔を赤くして反対する。
そう…僕等は幼馴染。
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