俺と二人の彼女の夏祭り

「夏祭りに行くぞ」

「夏祭りにいきましょう!!」


ある家で二人の少女が男に言った。
少女というには一人は大人びているし、一人は幼児体型よりな気もする。
しかしそれよりも、

二人は明らかに人間とは違う体をしている。

大人びているほう、犬の体を持つアヌビスは几帳面でなんでもスケジュールどおりにしたがる。

一方。もう一人は鳥の体を持つコカトリス。非常に臆病で従順な子だった。

そんな二人が一人の男に夏祭りに行こうと誘う…

「お、おう…それはいいけど…さ……」

二人からの好意を知っているこの海斗(カイト)という男は是非二人と夏祭りに行きたいとは思っていたが…

「その、二人とも…魔物だろう?それじゃあちょっと目立つんじゃねえかなぁ…」

二人はシルエットこそは人間に近い。だがやはり人とは違う見た目をしているのは事実。
そこが彼には気がかりであった…

「大丈夫だ。この街には、秘密裏に行われている夏祭りがある」

「そうなんです!わたしと海斗さんとお姉さまで、この祭りにいくんですよ!」

そうアヌビス・・・ノイゼルは言って、コカトリス……深鳥(ミドリ)が差し出したのは

「ボロリもあるよ…ドキッ☆魔物娘だらけの夏祭りぃいい?」

それを海斗が復唱した。
正直、どこかで見た事があるようなフレーズだ。

「いや、こんなもんいくらなんでもガセだろ…こんなあからさまなっておい二人とも!!?」

そう言って心配する海斗をよそに二人は彼の目の前でいそいそと着替え始めた。
まるで彼に見せ付けるように…流し目を送りながら…

「なんだ。信じていないのか?…大丈夫だ。どうやら内容は日本の祭りとなんら変わらないらしい…安心してよいのだぞ?」

ノイゼルはそう言う…
日本語がぺらっぺらではあるが一応外国人であるノイゼルは日本の文化に興味があるし海斗に好意を寄せている。
そのノイゼルを慕って、なおかつ同じように海斗に好意をよせている深鳥も行くのは通りだろう。

「もう、海斗さん…エッチな目…してますよ…?」

臆病ではあるが性にはとても積極的な彼女は、恥ずかしがりながら嬉しそうに彼を見ている…

「フフッ…♪ だが今日はお楽しみは夜までとっておこう……今は私のスケジュールでは性行為には及ばないからな…」

…服を脱いでいる二人の姿は…目に毒…いや、保養だった。
とても魅力的である肢体に、それぞれ特徴のある尻尾…耳…それらがなお、艶やかさを際立てた…

「お、おい…」

海斗もさすがになんにもいえず、黙る……

「さてと、サービスタイムは終了だ。お前は部屋の外で待っていろ」

二人の姿に見とれていると、いきなりノイゼルが海斗をひっつかみ…

「うわぁっ!!?」

部屋に放り出された…

「何を着るかは…お楽しみですよ♪」

深鳥は楽しそうな声で言ったのが、ドア越しに聴こえる…
海斗は溜息をついた…

「ほんとに…こんな祭りがあんのかね〜…?」

その夏祭りのビラは…人間にはとてもうさんくさい…







「着替えが終わったぞ…♪」

そう言って、二人はリビングでテレビをみていた海斗に顔を出した。

「お…おお……」

遅かったなと言おうとしたが、その服装…

「すみません…着付けが上手くできなくて手間取ってしまいました…」

二人の着物姿に、言葉を失った…

ノイゼルは艶やかに着こなし、着物で露出は少ないというのにとても扇情的な姿だった…

一方、深鳥はまるで七五三のよう…とても愛らしく、それでも魔物特有の色気は失っていなかった。

「ど…どうですか…?」

顔を少し赤らめながら、深鳥は訊いてきた…
ノイゼルも口にはしていないが、彼女と同じことをききたいんだろう…

「ああ、二人とも……綺麗だ…可愛いよ…」

「海斗さん…嬉しいです!」

「あ、当たり前だ…私に似合わぬ格好などないわ…!」

二人とも、反応の仕方は違えど…同じ想いのよう…

「特に深鳥なんて…」

彼のその言葉に二人の心は天秤のように…一方が上がり、一方が下がり…



「七五三みたいで可愛いぜ」

そして…天秤は逆になった……


「……ううう!!! 早くいきましょお!」

子ども扱いされたことをやはり怒り、深鳥はさっさと玄関までいってしまう…

「フフッ…では、行くとするか…」

何処へ?と訊こうとしたが、その前にノイゼルに手を握られ、有無を言わさず引っ張られてしまった。






「ふわぁぁ! いろんな屋台がいっぱい並んでます!!」

そこは海斗達…人間の方の祭りの会場であったが、そこには少数の男と多数の魔物娘がいた。
彼女達、魔物娘の説明によると、どうやらミミックや、高度な魔法が使える魔物たちが次元をずらし、普通の人には干渉できない祭り会場を作ったとのことらしい。

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