「さて、この辺りで食事するとするか」
そう言って街中で辺りを見渡すのはアマゾネスのジラ…
つい昨年。俺こと、ジスはアマゾネスの『男狩り』に遭い、このアマゾネスの伴侶として迎え入れられた。
現在は、戦士として見聞を広めねばと、一緒に旅をすることになった…そしてここは出発してからすぐの街…
「どこで何を食うんだ? 材料さえあるなら野外でも調理はできるぞ」
「男なのだから当然だろう。狩りから帰って待ちに待った食事が不味かったりしたら蹴り飛ばすぞ」
「普通は男女…逆だと思うんだg」
「何か言ったか?」
「なんでもないです……」
アマゾネスというのは男と女の役割が逆と言ってもいい。
女は狩りをし、仲間や家族を守る者。
男は留守を任され、帰ってくる女のために料理と精を提供する。
元々料理が得意な方ではあったからそれほど苦ではなかった…
不幸中の幸いだろう。
「野外で食べるのもいいが、地域の物も食べたくは無いか?」
「まあ…それもそうだな…」
街中を歩きながら良さそうな店を探す。
「あそこは…だめだな。店主から覚悟が伝わってこない」
「お前は何を求めているんだ?」
「料理と言うものは戦士にとっては大切だ。腹が減っては戦は出来ぬ……そして、料理人にとっては調理こそが戦い。技巧、スピード、間合い…全てが揃う事で初めて人を喜ばせることができる…」
ジラ(アマゾネス)が珍しく料理を語っているが…間合いは必要なのか?
「したがって、料理人には料理人なりの覚悟……少なくともそれに準ずる理想や野望があるのだ。わかったか、ジス」
「ああ、全然わからん」
なんだ…と溜息をつかれた。…ジラ……そんなことで俺に期待するな…
「む…あの店…」
そこで見たのは…
『何でも料理店 リファレンス』
「いいぞ…覚悟がひしひしと伝わってくる……これは期待できそうだ…」
だから…覚悟って…
「ご注文はなにになさいますか?」
二人で向かい合って座り、ウェイトレスを呼ぶ…
「おい、まだメニューすら見てないだろう。何にするんだ?」
「ん?いや、既に決めているぞ。この『カップル破壊セット』を頼む」
はぁ?
「か、かしこまりました…(本当に人気があるのでしょうかね・・・この前は河童のカップルが頼んだし・・・)」
「では、失礼します…ジーーッ………はい、ではごゆっくりと…」
ウェイトレスが去った後、俺はジラに聞いた。
「おい、俺はまだメニューをみてないぞ…カップル破壊セットってなんだ…?」
「絆が試されますと書いてあったのでな…お前と私がどれほど深く結ばれているのか試すいい機会だとおもってな」
「後悔しても知らないぞ…」
「ふん、後悔などするものか。…それにしてもあのウェイトレス……何を見たのだ…?」
「カップル破壊セットでございます」
10数分後、ウェイトレスが持ってきたのは俺たちの好みのものだった。
「食感…味付け…どれをとっても私の好みだ…一体どんなトリックを使って…」
「俺もだ……だが…この玉子焼きがなぁ…ソース入りなんだよなぁ…」
ソースは別に嫌いじゃないが…やはり好みではないので微妙だった…
「何?キサマ…ソース入りの玉子焼きを愚弄するか?」
「い、いや…砂糖入りのが好きなだけで別にソースが嫌いというわけじゃ…」
そういうと、ジラが玉子焼きにフォークを刺し、
「では、私の砂糖入りと交換するか?私はソースの方が好きなのだ」
そうして、玉子焼きを俺の皿に置き、俺の玉子焼きを刺し…
「と…言うと思ったか馬鹿者ぉぉ!!」
「むごっ!?」
思いっきり…喉にフォークが刺さるんじゃないかという勢いで口の中にソース入りの玉子焼きを突っ込んだ!
「私の好みを愚弄するとはな……いつからお前はそんなに偉くなったのだぁ?男の分際で…」
髪の毛を掴まれ、残りのソース入りの玉子焼きを全部口の中に突っ込まれる…
「男の癖に…男の癖に…男の癖に…!」
ガボッ!ガボッ!ガボッ!
「ちょ、むぐ、もう!!やめ!!」
「あ、あのお客様…?」
「店員!!この店はテイクアウトはできるか!?」
「え、ああ、はい…できますけど…」
「ならテイクアウトだ!ソース入りの玉子焼きをこの金で作れるだけ作れ!釣りはいらん!!」
「ああ…はい…」
その会話中でも玉子焼きを突っ込まされる俺…
「あ…が……もごもご…」
「旅は中止だ…お前にソースの玉子焼きの素晴らしさをわからせてやる…」
突然の中止…そして…
数週間後…
「ほら…おいしいだろう?お前の大好きなソース入りの玉子焼きだ…」
俺は……あれから数週間、家で両手足を縛られ……言うなれば…
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