序章

ここは超なんでも料理店「リファレント」

ここでは、様々な大陸の食材が、様々な料理に形を変え、客の舌を唸らせる事だ

ろう。

「最近の売り上げは良好ですね。」

一人のウェイトレスが、紅茶を淹れながら男に話しかけた。

「そうだな…世界中のミミック達の協力を得て、様々な大陸の食材を産地直送…

新鮮な状態でここまで届けさせ、世界中の腕利きの料理人がそれを調理する…こ

こは世界の料理が味わう事の出来る場所となった」

長かった…そんなことを思っているかのように、男は虚空を見上げる。

「オーナーだからこそ、皆がついていくのですね…」

ウェイトレスはオーナーと呼んだ男性に紅茶を差し出し、近くの椅子に腰をかけ

る。

「私は…この店も…この店で働いてくれる同志達も…誇りに思っている」

フフフ…と笑いながら、ウェイトレスはオーナーの話を聞いている。

「わたくしも…こんな店で働くことが出来る事を誇りにおもっています…」

オーナーもその言葉に小さく笑う。

「ところで、例の料理はできているのか…?」

ふと、オーナーはウェイトレスに聞いた。
それに彼女は一瞬考え込んだが、

「例の………『カップル破壊セット』というものですね…?」

「そうだ…あれは君の類稀なる洞察力があってこそのものだ」

オーナーは彼女を見る。

「新たな魔王に代わってから、この世界では魔物と結ばれる人間も多くなってき

た…魔物と人間の趣向の違い、そしてお前の洞察力を元に分析し料理を出された

カップルや夫婦が必ず言い争いを始めてしまう…簡単に言えば嫌がらせメニュー

だ」

その説明に不安を覚え、さすがのウェイトレスも怪訝な表情を隠せない。

「し、しかし…わたくしにはこんなものがヒットするとは思えないのですが…」

「安心しろ。私もヒットするなど思っていない」

ズルッと体勢を崩しそうになったのだが、

「それでは訊こう。本当の愛とは何だと思う?」

この料理と何か関係があるのだろうか。
怪訝そうな顔つきをさすがに隠せないが彼女は答えた。

「人それぞれ…ではないのでしょうか?」

ごく普通の回答だろう。

「確かにそうだな。だが私はそれぞれの愛には共通するものがあると思う」

そこで一呼吸し、続ける。

「ただ愛し合うだけが本当の愛ではない…お互いの違うところを意見し、時には

いがみあうこともあるが、それでも相手を許すことがどの愛でも必要だと思う…



ソコまで考えていたとは…確かにそれはあるかもしれない…

「それで、さっきも言ったとおり、これは君の洞察力があって初めて実践ができ

る。それで経験を積ませているのだが、どれほどになった?」

ウェイトレスは実は最近は仕事には出ていない…その代わり、オーナーから人の

顔を見ただけその人の好み、趣向を読み取ることができるように訓練をしていた



「う〜ん…あとは実践でしょうか……もうほとんどハズレることもなくなってき

ましたよ」

「…では、もうメニューに出す事ができると言うのだな…?」

それにはっきりと頷く。

「ええ、流石に絶対に失敗しないとは言い切れませんがね」

オーナーはフッと笑い、

「そうか……ではメニューに追加するぞ…明日から忙しくなるな」

「望むところですわ」

こうして…カップル破壊セットは生まれた…



〜fin〜
10/11/04 20:48更新 / zeno
[1]作者メッセージを読む

[6]次へ
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33