「ねえねえ、夕飯何が食べたい?」
「ん…?そういうお前は何が食べたいんだ?」
村を歩いている俺と河童のキリは今日の夕飯の事を話していた。
「アタシはあんたにきいてんだけど…」
そう言って近くの水場で溜めておいた水を頭にかけて彼女は聞き返す。
河童というのは外出する時には水を携帯しておかなければすぐに皿が乾いてしまう…だから水をかけるのはわかる…
「…服が透けるから…量には気をつけてくれ…」
「あっははは♪ごめんごめ〜ん……でも、興奮してくれてるんでしょ?」
そんないつものやり取りをしている俺達……彼女は幼少の頃からの…言わば幼馴染と言った間柄だ。
こういったやりとりには慣れっこなのだが…
「………そういうのは二人きりになったら…な…」
「いやん♪」
ってこんなこと言ってるんじゃなくて
「とりあえず何を食うか……ん?」
そこで目に止まったのは…
「料理店・・・? それにしてもこの国に合いそうにない・・・洋風な感じがするね・・・」
「何でも料理店・・・リファレント?」
「何でもってことはお肉もお魚もきゅうりもだしてくれるってこと!?」
何でもという言葉を聞いてきゅうりという単語を思い浮かべたらしい。
河童というのはやはりそういうものなのだろうか。
「まあ、ちょうど腹減ってるんだし・・・メニューでも見て決めればいいか」
何でもというからには…少し期待した。
「お客様。御注文が決まりましたら、こちらの呼び鈴を鳴らして下さい」
そう言って、ウェイトレスの中でも最も場慣れしている感じの人がメニューを差し出してくれた。
「ふんふんふん…ホントにいろんなものがあるねぇ」
といいつつも彼女が見ているのはサイドメニュー。きゅうり一筋か…
「いつも思うけど、そんなんで腹の足しになるのか?」
「なるよぉ…でも、それよりも君の子種だったら…違う意味で膨れちゃうかな♪」
そう言ってスレンダーな胴の…へそのあたりを優しく撫で回す…
そういうことは店の中で言わないでくれると助かる…
「ば、ばか…そういう事は二人っきりの時っていってんだろうが…しかもここ店だし…」
「いつもそうやって…アタシと君の仲なんだよぉ?」
「ほ、ほら、そんなこと言ってないでさっさと何食うか決めるぞ…ん?」
その時、一つ…目に止まったのが……
「何ソレ?……カップル破壊セット…カップルの絆が試されます…だって」
そこに乗り出したキリが目を輝かせた……
「頼もっか!」
「嫌な予感しかしねえよ!」
とは言ってみたものの…うわぁ…瞳に十字型のキラキラが写ってる…こうなった彼女は誰にも止められない。
「じーーーーーーー……(キラキラキラキラ)」
「…………………」
「じーーーーーーーー……(ギラギラギラギラ)」
もはやギラつかせてる……
「………わかった…」
今までコイツのギラギラ熱視線に打ち勝った事はない。いや、むしろこいつが折れなさ過ぎるんだがな。
そして、俺達は呼び鈴で店員を呼んだ。さっきの店員だ…
「ご注文は何でしょうか?」
「あ、はい…このカップル破壊セットというものを…」
「……そう…ですか…」
一瞬だけ…そう、本当に一瞬だけだがこの店員は目を丸くした。……そこまで以外だったか?
「では、少し失礼します。……じー…」
ほんの少しだけ、俺とキリを見ると、なにやら手帳のようなものに書いてそのまま厨房に行ってしまった。
数分後
「わぁぁぁ!!!きゅうり…きゅうりきゅうりきゅうりきゅうり!!!」きゅうり尽くしだよぉ!!」
「これって…俺達の好きなものばかりじゃないか……どういうカラクリだ?」
キリはきゅうりのサラダ きゅうりの浅漬け、その他諸々…きゅうり尽くしである。
かくいう俺の出された料理も全て好みのものであり、さらに好みの味付けなのだ。
キリに出されたメニューの通り、どうやら人の好みにあわせているようだが…
「いつ好みがわかったのやら…というかカップル破壊セットって感じじゃねえけど…釣りか?」
「ポリポリ ん? 別にポリポリポリ いいんじゃポリポリポリポリ ないのポリポリポリポリポリ?」
「ポリポリうるせぇ!」
「ん?そういえば君はきゅうり苦手なんだっけ?」
「………ん…まあ、な…あの食感というか……まあ、見るのも嫌なんだよな…」
「おいしいのに」
「その苦手な原因を作ったのがお前ってこと忘れてないか!?」
「ポリポリポリポリん?ポリそうポリだっポリポリけ?」
「食うのをやめろ!!!」
小さいころにきゅうりで全ての穴という穴を塞がれた記憶を思い出す。
………悲しくなってきた。
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