洞窟の奥深く…そこにはドラゴンが住まう……自分で言うのもなんだが私はそのドラゴンの一人だ…
きらびやかな金銀財宝…たくさんの魔道具…
私はこの洞窟で宝を守っている…
生まれた時…は言い過ぎかもしれんが…少なくとも物心の付いた時から集めていたものだ。
宝を守る…それ以外の事は何もしていないし、する気もない。
強いて言えば爪を磨ぐぐらいか……
ここに来るモノ好きな冒険者達も暇つぶしにすらならない。
例えそれが屈強な男でも私が姿を現し、出て行けの一言だけで片付くこともあるぐらいだ…
軟弱な男達だな…相手をする気にもならない……
私が認める…そんな男はどこかにいないのだろうか…?
男に興味が無いわけではないのだ…理性はあっても……魔物としての本能には嘘をつけない…
ただ…私を楽しませてくれる男は今の所…いない…
この、退屈しないまでも充実もしない毎日……
そろそろ飽きてきたのか?
いや、宝を守る事は使命だ。飽きる飽きないの問題ではないが………
……?
ふと、誰かの声が聞こえる……
子供……泣いているのか?
宝を守る者として、追い出すなりせねばな…泣き声も耳障りだ…
声のする方へと向かう…
「パパ……ひっく……ママ…」
私のいる場所から少し離れたところにその子供はいた。
この通路の曲がり角を行った先にいるようだ……
「おい、少年」
「…だれ?」
私は曲がり角から声をかけた……それで引き下がらないのなら姿を現そう。
「早急に立ち去れ……ここはお前のような子供がいるべき場所ではない…」
誰かがいることに安堵したのか…見えていなくても雰囲気で伝わってくる…
「パパとママ…みてない……?」
両親か…こんな子供がいなくなった両親を探して洞窟の奥まで来るのは不自然…かと言ってここに置き去りにするのは普通の神経を持った人間ならしないはず…だとすると、捨てられたか…
「お前の両親など知らん、今日は人間すら見てはいない…」
「じゃあ…来るまでいる………ここでいい子してたら帰ってくるって言ってたもん…」
…かわいそうだな……自分が捨てられたということも理解できず…そんな愚かな人間を信じて待とうなど…
哀れみ…同情……おそらく前者が私の持っている大きな感情だ。
これ以上は時間の無駄だな…すこし脅してやればすぐに逃げるだろう。
そう思い、私は姿を現した…
「ここで良い子にすれば……か。残念ながらそうなると私に迷惑が……っ!!!?」
私は涙を浮かべている少年を初めて目にした…洞窟に入るのは冒険者。つまり大人で、人間の少年など初めてだったのだ…
(か、かかかかかかか………可愛い!!?)
可愛いものなど目にした事が無い…だが私は本能的にこれが可愛いのだと悟ってしまった。
「…おねぇ…ちゃん?」
きょとん…無邪気な子供は上目遣いに私をみつめた……
(み、見るな…!そんな目で私を見るな……なんだこの胸の高鳴りは…?)
「そ、早々にた、立ち去るがいい!!お、お前の両親ぐらい……私が見つけてやる!」
(な、なにを言っているのだ私は!この少年を追い出すんだ…私はドラゴン…私はドラゴン…私はドラゴン…!)
「ほ、ホント!?」
(断れ…断るのだ私…ああ、でも…そんな目で見つめられると…)
「あ、ああ本当だ…う、嘘は言わない…」
そうだ…このような少年を置き去りにするその人間が悪いのではないか…さっさと探して連れて来れば……け、決してこの子が可哀想だとか何とかしてあげたいとかそんなのではないぞ…最も手っ取り早い方法だと私は思ったのだ…
「えっ?どこ行くの?」
再度、少年は訊いてくる…もう相手の顔を見ることすらできない…
「お、お前の両親を探しに行くのだろう…?な、なら善は急げと言う……早急に探し出すのだ…だからそこで大人しく待っていろ!」
「い、行っちゃうの!?」
そうすると、少年は目に涙をいっぱいに溜め…私に抱きついてきた…!
丁度、私の腰に腕を回せるぐらいの背だった…
「いっちゃやだぁ…!僕も…僕も一緒に行く!」
(や、やめろ……ダメだ…冷静に……冷静になれ………)
「は、離せ……ひっつくな!」
「………ダメ?」
上目遣いに抱きついたまま私を見上げる……
強さとは……なんだろうか…
暇な時に考えた事がある……例えば、肉体が世界一強靭な男がいるとする。どれだけ強かろうが毒を盛ればそいつは終わりだ。では、毒殺する知将こそが最強なのか?
いや、だが策士、策に溺れるという言葉もあるように、ミスをしない策士などいない……
肉体が世界一で策士で尚且つミスをしない?
そんな存在がいるわけない…
私は思うに…強さとは心だと思う……
例え力は無くても…例え馬鹿でも……
真っ
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