貴方のために捧ぐうた

「フンフンフ〜〜ン♪」

元気に鼻歌を歌う一人の少女がいた。
その少女は空を飛んでいる

人ならざる羽で………

「ん?あれって………」

不意に地上を見ると、少女の目には人が写った……

男だ………なにやら下卑た笑みを見せ、遠くからでは何をしているのか分からない……何を持っているのかは確認できる…

パァン……!

少女は人間が嫌いだった……

だって…………

「ホント……なんで……こんな目に…遭うんだ、ろ……」

人間ってよく分からない……なんであんな鉄の筒で誰かを撃つとか考え付くんだろう…




羽から血を滴らせ…少女は墜ちた………










「はい、これでいいよ…」

「ウィルせんせ〜、ありがと〜!」

海辺の近く…とある村では旅の青年が診療所を開いていた。
たくさんの行列がある…そもそも小さな村で、まともな診療所が無いのも理由だが、もっと別の理由がある。

青年が診ていたのはコカトリスだった。

「本当にありがとうございます……街では診てもらえなくて…」

コカトリスの親はペコペコと頭を下げる。

「いえ、いいですよ。いつでもどこでも誰とでもがモットーですから」

青年……ウィリアムは眼鏡を整え、コカトリスの少女を撫でた。
ウィルと言うのは幼少の頃からの彼の愛称である。
この小さな診療所に行列ができる最大の理由……
彼は魔物を診る事ができるから……
基本的に人間よりも体が丈夫だったり、人間とは違った体の構造を持った魔物もいるという理由があり、魔物を診れる医者はそんなにいなかった。

「それにしても……ここ最近は教会の連中の目が厳しくて………ここもそろそろ危ないかも知れませんね」

「まあ、そうなんですか……?」

薬を調合している間、診ている人(この場合はその親)と世間話をするのが彼の日課である。

「ええ、この大陸は元々魔物に対して排他的ではなかったのですが……前に、この村の近くの街に教会ができてから……街は魔物が居づらくなるし、教会の息がかかっている病院は診てすらくれない。…医者としてとても心苦しいです……」

ウィルは溜息をつき……丁度薬の調合が終わる

「はい、もしまた娘さんの羽の付け根が痒くなったらこの薬を塗ってあげて下さい……あんまり塗りすぎると荒れますから塗り過ぎないように」

「ありがとうございます……」

「ありがと〜ございます!」

二人に礼を受け取り、次の患者を招きいれた。






全員を見終わった後、診療所の一室で休んでいるウィル。

「ふう………基本的に誰でも診るんだけど…困ったもんだよなぁ……」

心を落ち着かせるためにお茶を飲む……自分は人間も魔物も診る……見た目や臓器などの体の構造だとかそういうのは問題ない……ただ…

「コカトリスみたいな種族はフェロモンを出すからな……何回か理性が飛びかけたよ………それにスライム……器具を体内に入れるより直接体内に手を入れて診た方が効率もいいんだけど…あれも危険だ…」


性に関しての構造……これは仕方の無い事だが、医者が患者を襲ったなんて事になれば社会的な立場も危うい……ウィルの予想だが、これが魔物を診る医者が増えない一番の理由かもしれない。
休むついでに近くの山で薬草でも摘もうと思いながら、窓から外を見上げる…何かが飛んでいる

鳥…にしてはかなり大きかった。遠目からじゃ分かりにくいが多分ハーピー類の魔物だろう。

「なっ!?」

ズレた眼鏡の位置を直し、そのハーピーらしき影が落ちるのを見た……あれは着地なんかじゃない…明らかに羽か何かの異常で落ちている…!

「クソッ!無事でいてくれ!!」

ウィルはすぐさま医療道具を持ち、すぐにその影が落ちた所に走った。





森の中、ウィルは何とか少女を見つけた。

「羽に爪が無い…セイレーンだったのか……」

医者であるからこそ、冷静にならなくてはいけない。慎重に、迅速に彼女の異常を調べる。
銃の弾…に貫通された痕が肩と脚に一つずつ…落ちたときに枝に引っ掛かったらしい切り傷のうち、少し目立つ傷が数箇所……
肩と脚を撃つ…これは逃げられないようにするために撃ったのだろう…彼女は恐らく密猟者に撃たれたんだ…

「神経も骨も外れてる…不幸中の幸い…か…」

ウィルは周りに気を配りながら治療に取り掛かる……
弾は貫通していて、時間はかかるが適切な処置さえすれば良かった…切り傷も止血をすれば良いだろう…

大丈夫……助かる…

内心ではホッとしているが油断はできない。何が起こるかわからないから。
彼の胸中にあるのは一つの命を救う事だけだった…









あれから一日。
密猟者に見つからずに処置できた後、ウィルはセイレーンの少女を診療所で診ていた。

「ん…うう……」

どうやら目が覚め
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