砂漠の番犬 〜使命〜

「熱い…熱すぎる…」
カンカンと燃え盛る太陽が俺を暑く照らしている。ここは砂漠のド真ん中。
その砂漠をシーフのような軽装備で歩く俺はバカなんだろうか。
そもそもなんでこんな所をこんな装備で歩いてるのかというと、ただの金欠さ。
依頼を受けてそれを遂行し報酬を貰うという仕事に就いている以上、依頼が来なければ金欠になるのは当たり前だ。
腕にはある程度自信はあるが他の便利屋やギルドの知名度が高すぎるためあまり依頼が来ない。
「ま、今回の依頼はかなり高額だ。成功すれば当分は安泰だな」
依頼主はかなりの金持ちの貴族だ。
権力を振りかざすような貴族は嫌いなのだが生活がかかっている。絶好のチャンスというしかねぇ。
汗にまみれた顔がニヤける。おおっといかん、そういうのは依頼をこなせてから考えるもんだ。
そんなことを考えているうちに今回の目的の遺跡が見えてくる。
俺は日光から逃げたいあまり走って遺跡に突入した。
「暗いな…」
遺跡の中は暗く、辺りを見渡すには明かりが必要な状態。
肩がけの収納しやすいバッグから魔力が原動力のランタンを取り出す。金はあまりないが俺には人脈がある。
その中に試作品のテストという名目で様々な魔法道具を提供してくれるやつがいるのだ。
ランタンを腰のベルトに括り付け、なるべく両手が空くようにする。こうしないと、もし何かがあった時に困るからな。
遺跡の中は意外に広く高く跳躍しても天井には頭をぶつけなさそうだ。
だが横幅が狭い。こんな通路で罠にあったらひとたまりも無いな。
明かりを頼りにどんどん地下に進んでいくといよいよ本番。
ーーー遺跡の醍醐味…罠だ。
明らかに不自然な線が床に刻まれてる。
「見え見えだな。…と見せかけて」
その線よりも奥のスペースに石を投げ、石が地面に落ちると床がバクンと開く。
線を怪しんで跨ごうとしたら落とし穴に落ちるという典型的なトラップだ。
古臭い手だがこのタイプの罠は応用が利くのは承知の上、まだまだ連続で仕掛けられているだろう。
そんな予感が的中し、後ろから槍が突き出してくる気配を感じる。
「おおっと!」
前方に跳び落とし穴を飛び越え着地、どうやら落とし穴が作動すると動く仕掛けのようだ。
さらに後ろの両サイドから巨大な刃が回転しながら押し寄せ、天井が少しずつ低くなっている。顔が冷や汗にまみれる……奥に逃げるしかない。
「うおああああぁぁぁぁぁ!」
迫り来る刃は予想以上に速く、声を上げながら走る。
前方に突然、壁が出現する。その不自然さからどうやらこの遺跡はカラクリではなく魔法で動いているらしいことがわかる。
「邪魔すんじゃねぇ!」
俺は腰のホルスターから二つの銃を取り出し前方に向ける。
コレも例の試作品だ。俺の魔力を弾丸に変換させ撃つという仕組みの二丁拳銃。その威力は込める魔力の量に比例する。
壁を貫通させるために大量の魔力を込めて引き金を引く。
すると、銃口に魔方陣が展開され魔力の塊を発射する。
巨大な弾丸は壁を貫通し人が通れる穴が開いて思わずよしっと小声で言う。
が、まだ油断してはならないと警戒する。
案の定、壁を壊して発生した煙の奥で光るものが押し寄せて来るのがわかる。
煙から出た光る物体は…回転する刃、後ろから追ってくるものと同タイプの物なのだが、状況が状況だ。
「後ろも前も手詰まり。天井は低くなっていて飛び越えることができねぇ…」
逃げ場が無い…一瞬だけその言葉が頭をよぎったが。
「まだ下があるんだよぉ!」
半ばヤケクソに叫び地面に向かって銃口を向け、弾を撃った。
老朽化しているせいか予想以上に穴が開きそこに身を隠す。
壁に刃がしまわれ、何とかやり過ごすことができたが天井はゆっくりと…だが確実に低くなっていく。
「チッ!」
舌打ちをしながら穴から出て次の通路へとスライディングの形で逃れることができた。
呼吸を整え、奥に進んでいく。



ここら辺は照明があって明るい。ランタンは消したほうがいいだろう。
しばらく進むと大広間のような部屋が見え、その入り口の脇に隠れ息を潜める。
……何かがいる。そんな気配を俺は感じた。
懐から試作品である小型のサーチャー(名前の通り周囲の生体反応を見る道具)を取り出し、辺りを調べる。
一匹…いや、一人と言うべきなのかサーチャーが探知した方を壁越しに確認すると人影が見えた。
これ以上はヤバイと思い身を潜めようとするが…
「そこにいるのはわかっている…。出てきたらどうだ」
とても澄んだ。だが冷たい声があたりに響き渡る。
その声は美しく、思わず従ってしまいそうになるが、そういう訳にもいかない。
まず声からしておそらく女だろう…女は声音からいって警戒している。
俺は戦う気など全く無い。だからまずそれを示さなければいけないだろう。
まず肩がけのバッグを放り投げ、二丁の拳銃
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4 5 6..10]
[7]TOP
[0]投票 [*]感想
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33