― とある自警団との対峙 ―
リシアは20人ばかりの自警団達と対峙していた。
時間としてはティク達がベリルに出合った頃である。
自警団達は今の今までゾンビ達と戦い、中央区で何とか生存者を救出しようとしている一団だった。
だが、それはリシアとしてはとても迷惑な話。
よって、逃げた学生達はベリルに任せ、自分は抵抗を続ける自警団の制圧に乗り出したのだった。
「さて…お前達をどう料理してやろうか…」
「黙れ!、よくも俺達の街をこんなにしやがったな!!!」
1人の自警団員がご自慢の剣を構えて切りかかってくる。
当然リシアも黙って切られてやる義理は無い。
3本目の腕を胴体(腰の辺り)から伸ばし、硬質化させて彼の斬撃を受け止める。
元々スライム種である彼女がそんな斬撃を受けたところでコアが傷つかない限り死ぬことは無い。
だが、彼女は敢えて彼らと剣の打ち合いがしてみたくなった。
他の自警団員の参加も考慮し、彼女は更に腕を3本増やす。
元々の腕も硬質化させ、剣のように鋭く尖らせる。
切りかかってきた彼に、ニヤリと妖艶な笑みを返すと、彼女は動いた。
「さあ、私の剣をとくと受けるがよい!!!」
「!!」
6本の腕はそれぞれが別々に動く。
彼の剣を受け止めた1本以外の5本が、突き、袈裟、左右からの横薙ぎ、切り下ろしを時差をつけて放つ。
全て受けきる事など一介の自警団にできるのか……否、それができるなら彼らは自警団では無く、騎士団に入っているだろう。
彼は受け止めている1本を弾き、突きを躱し、袈裟に左肩を切られ、横薙ぎを辛うじて避けたところに、振り下ろされる腕で左目を切り裂かれた。
硝子体と鮮血を撒き散らし、男は倒れる。
彼の仲間達は同僚をあっという間に切り倒した6本腕の異形に驚愕しつつも、闘争心に火をつけられたのか、一斉に切りかかってきた。
リシアはとても艶やかな顔を歪めて笑うのみ…
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至ること30分。
既に勝負は決している。
辺りには血溜まりが赤い川を作っている。
だが、この場に死者は1人も居ない。
彼女は人をいたぶるのは好きでも殺すのは大嫌いである。
それが例え自分たちを殺そうとする者であっても。
そんな感情を抱けるのは、この 感情を含めても人間と自分の実力に大きな差が有るからなのかもしれない。
いずれにしても、この場で唯一立っているリシアはそんな風に考えている魔物である。
同じ魔王軍の中にあって、考えが真っ向から対立するどこぞの吸血鬼とは仲が悪い。
そんな彼女に習ってか、腕に付いた血を舐めてみるが、血の味に苦い表情をしつつも魔物としての血肉を喰らった時代を思い出してしまう。
やがて、表情が冴えないまま、リシアはその場を去る。
彼女が姿を消して間も無く現れるのは、すっかりゾンビ化した女学生や街の女性達。
中にはまだ完全にゾンビ化していない個体も混じっていたが、彼女達はこれから完全にゾンビ化するだろう。
なぜなら、運動に重要な部分だけを切られ、逃げることも適わない哀れな自警団の面々がそこに居るのだから…
スライム特有の治癒術で出血だけは止まっているため、これから行われる激しい乱交(逆輪姦)においても、彼らが命を落とすことは無いだろう。
いずれにしても、彼女の働きでこの街で未だに抵抗活動をしている集団は壊滅した。
後は自宅や仕事場に辛うじて立て篭もっている人間があちらこちらに点在するのみ。
それすら、いずれワーバットやバブルスライム達に駆逐されていくだろう。
自分の仕事はあらかた終わったと、リシアはベリルの居る場所…ヴィルート河に向かって移動を始めた。
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― ヴィルート河 ―
火球が弾け、残った火種が河原や河に降り注ぐ。
草を焦がす苦い臭いと、川に落ちて火が消える音が何度も聞こえた。
『私』の魔力は抑えを外した事で余裕がある。
だが、肉体的な変異は既に始まり、理性は徐々に崩れ落ちていく。
手足が変異し靴が意味を成さなくなる。
私は靴を脱いだ。
頭皮は裂け始める。
血は殆ど出ないが鋭い痛みが私の神経を苛んだ。
私は、『私』本来の姿に戻っていく…
気が付くと目の前のバフォメット、ベリルは第2撃を撃ち込もうと既に構えている。
今度は突き出した両掌の前に、氷塊が生まれる。
次の魔術は氷術!
ベリルほどの膨大な魔力を込めたそれは、私はともかく、仲間の命を奪うには十分すぎる。
私も彼女程ではないが急いで魔力を錬成する。
幼少…ほぼ記憶に無い頃の経験が、私が本格的な攻撃魔術を行使した最後らしいのだが、身体に染み付いていたのか、スムー
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