ティク達が化学実験室でレインを取り押さえている時、とある教室には2人の人影があった。
2人はゾンビではなく、もちろん学生でもない。
片方は手足がフサフサした毛に覆われた魔獣種のバフォメット。
もう片方は紫の体色をした、ダークスライムだが、見た目が一般的に見られる者と異なる。
彼女は身体を一部変形させて所謂メイド服を象った、家政婦型のダークスライムだった。
とはいっても、クイーンスライムのスライムメイドのような使役される立場ではなく、もちろんこのバフォメットの『メイドさん』と言うわけでもない。
彼女は隣のバフォメットとは異なる部隊の部隊長を勤めるれっきとした魔王軍幹部であり、彼女自身の意思でこの姿をしている。
「で・・・だ、ベリル・・・こいつらはもういいか?」
「ふむ・・・そうじゃの・・・・・・こいつらはこれ以上は無理だ・・・頼むぞリシア」
「任せておけ」
ベリルと呼ばれたバフォメットは大鎌を教室の床に突き立て、片手に何かを携えている。
それはいつか誰かが使った探知魔術。
学園内の状況をつぶさに観察しているようだった。
そして、リシアと呼ばれたダークスライムはベリルの了解を得た上で、魔術を行使し始める。
人間の魔術師など比べ物にならないほどの魔力を持つ、それが彼女達幹部級の魔物だった。
そんな彼女が行使したのは空間転移魔術。
いや、ただ1つの物体を転移させるなら何も幹部級である必要は無い。
そんなことなら一介の魔女でもできる。
魔女とリシアの違い、それは一度に多数の目標を一気に転移させる事が出来る事だ。
それも本気になれば3桁に上る対象を転移させることができる。
最初にゾンビをこの学園に送り込んだのもリシアの仕業であった。
「開け、異界の扉!!」
リシアの気合を込めた一言と共に、魔術が行使される。
目標はゾンビに押し倒され、輪姦の末に完全に意識を手放してしまった男子学生と男性教師。
彼らの下に魔法陣が現れる。
それはこの教室に限らず、他教室でも同じことが起きていた。
「眠れ、眠れ、眠れ、お主等は等しく、我らの胸に抱かれて眠れ、さあいざ逝かん、肉欲と快楽の宴へ!!」
詠唱が終わり、魔術が効果を及ぼしている間、清楚なメイドの格好にも拘らず、悦楽の表情で叫ぶリシアのその姿は、可愛らしさが少し足りない様に感じられる。
間も無く、学園中の魔法陣の上に居る男子学生は沼地に沈むかのように、魔法陣の中に消えていった。
行き先は魔界のど真ん中であったり、ベリルの研究施設であったり、それぞれがそれぞれの結末を迎えることになるだろう。
「ベリル・・・残りは何人だ?」
「そうじゃな・・・捕まって時間が経ってないのが3人、立て篭もってるのが7人じゃな」
「ほぉ、結構スムーズに済んだな」
実に重畳、そう言いながら、リシアは辺りを見回す。
教室には餌となる男を失い、フラフラと彷徨うゾンビ達がいる。
床に伏していた者までが立ち上がり、どこかに男が居ないか探しているようだった。
輪姦の輪に混ざれなかったゾンビ達と同様に、教室の中、廊下へとそれぞれが歩いていく。
「で・・・どうする・・・7人を捕縛するか?」
「・・・・・・いや、そいつらは面白そうだから放置しておいていい、それより街へ進攻させるとするぞ」
リシアの問いにベリルが次の段階への移行を知らせると、リシアはニヤリと笑った。
いよいよか・・・そう呟きながら、彼女の表情はこれから起きる惨事を想像して口唇が歪んでいる。
「ふむ・・・そうだベリル、捕まって間もない3人はどうする?、そのうち1人は立て篭もってる7人のすぐ側だが?」
「そうじゃな・・・折角捕らえたのに助けられても厄介だし・・・3人も転移させておくか・・・」
「・・・ゾンビも一緒に?」
「うむ・・・2・3人一緒に転移させてやれ・・・男に懐いた娘を優先に・・・な」
承知、そう言いながら、リシアは魔法陣を再展開する。
まもなく転移が完了し、この学園での『人間』は化学実験室の7人のみとなってしまった。
「さて・・・ここからが本番じゃ」
「そうだな・・・」
(それに・・・あの7人の中には・・・わしらと同じ匂いがする輩が居る・・・それを見極めてからでないと、大魚を逃しかねん・・・)
ベリルの思案はリシアには汲み取ることが出来ない様子であった。
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― 私は考えている ―
何故私は半分魔物なのにこんな所(反魔物領)にいるのだろう・・・
いや、それは愚問だ。
母が愛した男が住む場所だからだ。
父は反魔物派だったにも拘らず、母と出会ってあっさり鞍替えをした。
私がそれを責めるつもりは無い。
しかし、一緒になっても尚、反魔物派の国で暮ら
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