救出 (後編)

スライムのセリアティは同僚のレッドスライム、アルセの絶叫で目を覚ました。

(ぁぅ…ここは…私は…)

肉体は開放されたことで一時的に正気を取り戻しているが、精神は飢えに蝕まれ、正常な思考が失われつつある。
それでも、何とか周りの情報を集める。
(敵、この地下室に10人…外に30人……リーゼはもういない…たすけは…くるかどうかはふめ…?)

正気が音を立てて崩れ落ちていく中、彼女が気が付いたのはこの場にいないはずの仲間の魔力。
その気配が外の人間の数を減らしている。
ふらふらと、そしてゆっくりと身体を起こす、入り口の扉には木製の閂が通され、締め切られている。

(しらせなきゃ…ここにいるって…)

セリアティは男達に気づかれないように、そっと枯れ果てた魔力を練る。
不足分は自分の身体を崩しながら、彼女は術式を組み上げた。

それは爆発術と魔力による周辺への連絡術。
彼女は自分の身体が徐々に形を失うのも構わずに、自分の身体の一部にその術式を書き込み、その部分を千切り、扉に投げつけた。

刹那、扉が爆ぜる大きな音がスラム街中に響き渡った。


木製の扉が砕け散る爆発音は、アルセを痛めつけていた男達を驚愕させた。

「うわっ!!!、何が起きた!?」
「あのスライムの仕業だ!!」
「くそっ、まだ動けたのか、あいつにも脱水剤をぶっかけてやれ!!!」

男達が騒ぎ出した途端。
地下室の松明が一斉に消えた。
憤怒の叫び声は困惑へと変わり、男達は暗闇の中を右往左往する。

すると、騒乱の中にあって、やたら耳に残る声が男達全員に聞こえた。

「み〜つけたっ♪」

「!!?」

指を鳴らす音が聞こえ、松明が一斉に灯った。

明かりに照らされ浮かび上がってきたのは2人の少女の姿。

片方は重厚な鎧を着込み片手に大剣を掲げる短髪・栗色髪をしたデュラハン。
もう片方は逆に露出の高い服を着込み、長髪・緑色の髪をし、ニコニコと笑っている下半身が大蛇のエキドナだった。

だが、どちらも怒りに震えているのが良く分かる。
デュラハンは既に大剣を抜いて構えているし、エキドナは瞳孔が縦に細くなっている。

「な…いつの間に…」
「そんな事を心配している場合か?」

デュラハンがそうつぶやくと同時に、彼女の姿が視界から消えた。
次に背後から声が聞こえる頃には、男達は全員床に崩れ落ちていた。
あっという間にあがる呻き声と苦痛の叫びが上がり、それら恐怖の合唱は二人を幾分か満足させた。

「あ〜…もう〜…ちょっとスレイ、私の分も残しておいてよ」
「ルーイェはねちっこいからな…まずはボクが先制して動きを止めておいたから、後は好きに吐かせればいい、ボクは2人を助けてくるよ」
「む〜分かったわよ、そっちは頼んだわ」

スレイと呼ばれたデュラハンはあっさりと剣を収め、アルセとセリアティを開放しに向った。
一方のエキドナのルーイェは蛇腹を床に擦りながら、足の腱を切られて動けなくなっている男に近づいていく。

「くっ…来るなぁ!!」
「おっと♪」

一番近い男が1人、手投げ用のナイフをルーイェに投げ付けて来た。
ルーイェはあっさりとそれを叩き落とし、返礼と言わんばかりにその男に身体を巻きつけた。
ゆっくりと締め上げていくと、男が呻き声を上げる。

「さ〜て、貴方方には2つの道があります」
「?」
「何も言わずにじわじわと嬲り殺されるか、知ってることを全部吐いて楽に死ぬか、選んでくださいね♪」
「ふざけるn、ンギャァァァァァ!!!」

男が抗議の声を上げようとしたところで、彼女は更に男を締め上げた。
全身の骨が軋み、悲鳴を上げる。
他の男達は足を動かせないため、ずりずりと体を引き摺って逃げるしかない。

「さて…教えてくれるかしら?、貴方達が売り飛ばした娘達の行き先を…」
「…しるかぁ…ぐぁ」

男の減らず口に、ルーイェの瞳孔は更に縦に細くなった。
足首が、太腿が、腹部が、胸部が、首が、ギリギリと締め上げられ、男は苦悶の表情と声を上げた。

「…そろそろ、冗談ではすまないわよ?」
「くっ…くそが…」
「口が悪いわね〜」

ルーイェは中々口を割らない男の指に尻尾の先を絡めた。

そして…

「何の…アギィィィィィィ!!!!」

指を…

「あはははは〜、早く吐かないと、体中の骨をぐちゃぐちゃにしちゃうわよ〜♪」

真横にへし折った。


それでもニコニコしながら、彼女は手を緩めずに、隣の指に尻尾を絡める。
尻尾で指を左右に軽く揺らしながら、彼女は男を脅しつけた。

「ヒィィィィ!」

あっという間に、男は情報を垂れ流しにするスピーカと化してしまった。
拉致した少女の情報、取引のあった娼館、儲けやその他もろもろを聞き出したり、記憶を覗いたりして、ルーイェは情報を集めた。

そうこうしている
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