心の拠り所

数年後...


「パパー、こっち終わったよ」
「じゃあこっちも手伝ってくれるか?」
「わかったー」

リーゼと暮らし始めて10年と少しが経過していた。
リーゼは順調に成長し、今では家のの手伝いもするようになった。
今の作業は彼が猟で獲ってきた獲物の皮を予め剥いでおき、売るための加工をしているところだ。
手先が不器用な彼は自分で服や道具を作るなどという芸当はできない。
よって皮をなめし、革や毛皮として町に売りに行き、その金で生活に必要なものを調達するのだ。

「アハハ、パパおそーい」
「いやリーゼが器用なんだって。俺は普通」

リーゼが手伝うようになってから加工作業は捗る一方だった。
作業スピードは倍以上になり、商品の単価も彼のものより高く売れた。
今ではリーゼにコツの教えを乞うほどだ。
作業が終わり、片付けの最中にリーゼが口を開いた。

「コレ、いつ売りに行くの?」
「明日行くつもりだけど…何か買ってきてほしいものでもあるのか?」

言い出し辛そうにもじもじするリーゼを見て彼は何が言いたいのか理解できた。

「わたしも行きt」「ダメ」

彼は言い切る前に却下した。

「なんでー!?」
「危ないだろ!角とか尻尾とか翼とか、見られたらどうするんだ!」
「ちゃんと隠すもん!」
「なんかの拍子に見えちゃうかもしれないだろ!」
「気を付けるもん…」

叫ぶように言い返していたリーゼは彼の強硬な姿勢に意気消沈してしまった。

「………。とりあえず、コレ片付けて夕飯にしよう、な?」
「うん…」

リーゼは最近森の外に興味を示すようになった。
彼に禁じられていたため、リーゼは一度も森を出たことがなかった。
彼以外の誰にも会ったことがない。
しかもリーゼは好奇心旺盛でいろいろなことを考える多感な時期だ。
森で過ごし続けろというのも無理な話なのかもしれない。
彼はそんなことを考えながらシチューの鍋をかき回していた。

「リーゼ、シチュー出来たから皿持ってきてくれー」
「………」

リーゼはぶすっとした膨れ顔で器を突き出した。
それを苦笑をしつつ受け取り、シチューをよそってやる。

「なぁリーゼよ、町なんてただ店がいっぱいあるだけだぞ?欲しい物があれば買ってきてやる。それじゃダメか?」
「色んなもの見たいもん…。パパが町行ってるときは一人っきりで寂しいし…」

実際に寂しそうな表情のリーゼに、先ほどの考えも相まってそろそろたまにならいいんじゃないかとも思えてきた。

「ダボダボの大き目の服で翼と尻尾を隠すこと」
「え…?」
「フードをしっかり深くかぶって一瞬たりとも外さないこと。さらに俺から絶対に離れないこと。以上3点を守れるなら連れてってあげよう」
「ホントに!?ありがとう!パパ大好き!」

ずっと暗かったリーゼの表情に花が咲くように笑顔が広がる。

「こらこら、約束はどうした?」
「守る守る!!」
「じゃあ3つ言ってみ?」
「『ダボダボの服で翼と尻尾を隠す』、『フードを深くかぶって角を隠す』、『パパから離れない』!」
「よろしい。じゃあ、明日は早起きだからな。早めに寝るんだぞ」
「はーい!おやすみなさい!」
「待てぃ!寝るのは飯食って身体拭いてからだ!」

すっかりはしゃいでしまっているリーゼはあまり彼の話も聞かずに夕飯をガツガツ食べ、濡らした布で身体を拭き、さっさと床に着いてしまった。
明日が心配な彼なのであった。






「ふぁぁ。リーゼ、準備できたか?」
「できた!」

翌朝、朝焼けの中リーゼが彼を叩き起こした。
何度寝直そうとしても強行に叩き起こされるため、彼も二度寝を諦めて身支度をしたのだ。

「じゃあ行くか」
「パパ、朝ご飯は?」
「サンドイッチにしてあるから荷馬車の上で食うぞ」
「わぁ!楽しそう!」

起きてからはしゃぎ通しのリーゼに一抹の不安を覚える。
約束の安否が懸念された。

「リーゼ、昨日の約束覚えてるか?」
「『フードを外さない』、『ダボダボの服で過ごす』、『ずっとパパと一緒』!」
「フム。ちゃんと覚えてたか」
「もちろん!早く行こうよ!」
「貴女ね、魔物だってバレたらここにいられなくなるんですよ?分かってらっしゃいます?」
「分かってるー!」
「ホントに分かってんのかね…」

テンションの高いリーゼに急かされ、馬に鞭を入れる。
町までは大体往復するだけで12時間前後かかる。
リーゼのおかげでかなり出発が早かったため、暗くなる前に帰れそうだ。

「パパ、サンドイッチ美味しいよ!」
「お、そうか?そりゃよかった。俺の分も取ってくれるか?」
「うん!…私が食べさせてあげる!あーん」
「ハハハ…朝早いのに元気だなぁ…」

出発してから約6時間荷馬車に揺られ、二人はようやく最寄りの町に到着した。
リーゼは驚いたことに5時間
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