デザート;日替わり娘の冷やし根っこ

「うっはぁ〜/// な、なにこれぇ〜!?」
「う、むう。これは何とも。原型が無いな。」
 久しぶりにゴルド邸を訪れたフランソワ・ローライラスとその妻アリシアは、変わり果てたゴルド邸を見て驚愕した。
 邸の窓という窓からはツタと根っこが飛び出し、邸の壁を伝って庭園の土へと突き刺さっていた。地面が露出していない場所では、石畳をめくり返してまで土を求めていた。ツタはと言うと、根っこの逆で、屋根へと伸び、妖光と魔風を受けてガサガサと気味の悪い音を立てていた。
 荒れ放題の邸。その半分内側から破られた大扉に、銀ひげを蓄えた執事長が立っていた。
「ローライラス卿、伯爵婦人。ようこそお越しくださいました。しかし、何分邸はこの有様でして、十分な御持て成しは致しかねます。」
「執事よ!これは一体どう言うことなのだ!?この荒れ具合、たったの数ヶ月でなるようなものではあるまい。」
 ローライラスの問いかけに、執事長は深い溜め息で答えた。
「はぁ〜、仰る通りでございます。まぁ、まずはこちらに。口で説明いたしますより、見ていただいた早ようございます。」
 執事長が促すまま、二人は邸へと足を踏み入れた。


「(あれ?でもこの感じ。何か知ってるような…?)」




 外側から見たとおり、案内される廊下にもびっしりとツタが生え、床は根っこが縦横無尽に走っていた。
 とてもではないが車椅子での移動は困難であったため、ローライラスはアリシアを抱きかかえて移動する破目になった。
 いつもならいそいそとメイドたちが手伝いに来るはずだが、今日は一人として見当たらない。それを不審に思ったローライラスが詰問する。
「執事。いつものメイドたちはどうした?お前の女達ではなかったのか?一人も見かけないが。」
「メイドたちはお嬢様方のお世話で忙しいのでございます。ご不便を強いて申し訳ありませんが。」
「シャルに子供ができたの!?すごい!おめでとうございます!」
「ありがとうございます、アリシア様。しかし、いささか問題がありまして、このような様になっている次第で。」
「問題とな?」
「はい。あぁ、丁度いいところに。あちらをご覧ください。」
 執事長が手で示す方向を見ると、メイド二人がなにやら大きな容器の横に立ち、談笑しているかのようであった。
 容器の大きさは1m程度、円柱の形をしており、上からは黄色い特徴的な花とツタが伸びていた。
 見覚えのある黄色い花。あれはもしや…。
「お察しの通り、あちらがコンデ公とシャルロット様の姫君でございます。」
「あの容器はなんなのだ?普通、マンドラゴラの子は産まれてから直に何処か別の場所に植えるのではないのか?」
 実際、アリシア達も先月産まれた種を反魔領に程近い街道に植えてきたばかりだ。よい旦那と巡り会う事を期待して。
「実は、シャルロット様は今動けない状況にありまして、御子を植えに行くことができないのでございます。そして、やっと授かった御子を簡単に手放すのは忍びないとのことでしたので。なので、東洋に伝わる水栽培なる技術を用いているのです。水栽培とは、土ではなく水に植物を植える栽培方法。あのように透明な容器に入れて育てれば、いつでもお顔を会わす事ができますし、お嬢様方も気に入った男性を見つけられるというもの。」
「う〜む、なるほど。さすがコンデ公。発想が我ら凡人とはかけ離れておる。」
「さっきからお嬢様「方」って言ってるけど、シャルは何人産んだんですか?」
「あの子で43人目になります。」
「えっ?」「えっ?」
「ささ、こちらでございます。」
 二人の驚きを無視し、大食堂へと案内する執事長の顔には、疲労、気苦労を通り越した達観の相がにじみ出ていた。


「ゴルド様、ローライラス卿とアリシア婦人をご案内いたしました。」
「うむ、ご苦労。久方ぶりだな、フランソワ。」
「コ、コンデ公!?貴方なのか?」
 大食堂はかつての荘厳で豪華絢爛な佇まいをそのままに、上から緑のペンキで塗りつぶされていた。ペンキはすなわち部屋中に張り巡らされたツタと根っこであり、それらが集約された一点、上座の主が座るべき場所にゴルドとシャルロットは居た。
「座ったままで失礼する。なにせシャルが動けないものでな。うっ・・・
hearts;」
「あー
hearts;またでひゃー♪」
 根っことツタで構成された玉座に腰掛けた全裸のゴルドに腰掛けるシャルロット。小さな身体に異常に膨らんだ腹を垂らし、焦点の合わない目で虚空を眺めながら涎と愛液とあふれ出た精液を垂れ流す。伸びた足先の根っこは大樹のそれであり、床の上にさらに緑の床を形成していた。
 うねうね動く緑の床は、動けないゴルドとシャルロットのかわりに玉座を動かす、大掛かりなピストン運動装置なのだ。
「ちょっと!シャルに何したのよ!
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