目が覚めると暗い暗い水の底にいた。
目を開けても暗く、目を閉じても暗い。
ここは・・・? 寒い・・・
ミクは、、、どうしてここにいるんだろう?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お誕生日会の後、ミクはお部屋に引きこもった。お母さんのお説教なんて聞きたくなかったし、お誕生日なのに今日もお仕事で遅いお父さんなんかに顔を合わせたくなかった。
でも本当は、お兄ちゃんにあんなことを言ってしまった自分をどこかにやってしまいたかったから。
バカだな。そんなこと出来るわけないのに。
一人、布団に包まってお友達のエミリーを眺めてた。エミリーはミクを責めたりしない。励ましてもくれないけど、抱きしめてるとほんのり温かくなるから、優しいお人形なんだなって感じる。他にも、リコルに、レイレ、ミーシャに、クラリー、みんながミクを見てる。
優しいお人形さん。
そう言えば、エリィはどうしたのかな?
ま、いっか…。ミクに嘘ついたお友達なんて、どうでも。
お兄ちゃんに嫌われてないかな…。
そんな風な思いが頭の中をぐるぐるして寝付けないよ。はぁ、だって始めてお話できるお友達だったんだもん。あんなに仲良くしてたのに。
お布団を被り直して、エミリーを抱きしめる。ギュッと、ずっと、もう残ってるのはこの子達だけ。お兄ちゃんも、エリィも…。
<ガタッ、ガチャガチャ・・・ ヒュォォー…
耳が痛い。冷たい風が頭の上を通り過ぎて、ほっぺたや耳たぶを冷やしていく。寒くて、冷たくて、痛い。
「…んっんぅ、あれ?おかしいな?」
窓が開いてる。
バサバサと揺れるカーテンの隙間から夜の冷え切った空気が、まるでコップから溢れ出す水のように流れ込んでいた。重たい空気はお部屋の床一面を埋め尽くすとベッドの上まで溢れてきて、ミクのお布団の中を濡らしていく。
とてもじゃないけど、ベッドの中になんて居られない。…、窓、閉めなきゃ。
ベッドから起き上がる。お布団の中とは比べ物にならないほどの冷たさが、手に、足に、パジャマの中にまで…。
寒い、
もし…、もし、エリィがお兄ちゃんに気に入られなくて、途中で捨てられてたりしたら。
<ブルッ!
怖すぎて体が震えちゃった。そんなことあるはずないのに、あるはずないと分かっていても、怖いよ。
今のミクみたいに、お兄ちゃんが居なくなったら、お兄ちゃんが消えちゃったら、お兄ちゃんに…………捨てられたら…………。
「窓、閉めなきゃ…。」
水のような空気の中に足を下ろす。水をかき分けながら窓に近づくと、
<クス♪クススス♪
聞こえた、あの子の声が。
「コンバンハ♪ミクちゃん
hearts;」
ミクのお友達が窓の外に立っていた。
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綺麗にロールした髪をなびかせて、エリィは立っていた。ミクが驚いて床に座り込んでしまうと、またクスクス笑って窓の淵に腰掛けた。すると、勝手に窓がぴしゃりと閉じた。
窓が閉じると、つけっぱなしだったクーラーの風がミクを励ましてくれた。
座ってる場合じゃない、何か言わないと。でも、何を?今のエリィはなんだか普通じゃない。お友達だったエリィは喋れるけど、ただのお人形だったのに、今は、なんだか生きてるみたい。わけわかんないよ。
そうやってまごまごしていると、エリィの方から近づいてきた。
窓枠からフワッと飛び降りると、軽い足取りでミクに近づいてきて、お膝の上に乗った。
「もう、こんばんはって言ってるのに。ミクちゃんのはエリィのこと忘れちゃったの?」
「う、そ、そんなことないよ、ぜんぜん。ビックリしちゃったから、それで…。」
「今頃、お兄さんのお家で仲良くしてるはずなのにって思ってたから?」
「ち、ちがうよ!何言ってるの!?」
ミクはただ心配してただけなのに。でも、本当になんで戻ってきたんだろう?やっぱり…。
「フフ♪知ってるわ。ちょっとイジワルしただけヨ
hearts;」
ほっ…。そうだよね。お兄ちゃんがお人形さんを捨てるわけないもんね。それにこんなに可愛いし、お喋りもできるし、髪だって作り物の筈なのにサラサラのキラキラでロールも巻いてるし、…………ミクとは、全然違う。
「お兄さん、怒って私を捨てちゃったんじゃって思ってたんだよネ?大丈夫よ。お兄さん、怒ってないし、私のこともすっごく大事にしてくれてるのヨ
hearts;」
「そうなんだ。」
<チクッ
あれ?なんだろう?エリィのお話がすごく聞きたくない。
お兄ちゃんに大事にされてる。それでいいはずなのに。
いやだ、何これ?思わず胸の前でパジャマを握り締める
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