最初にかアレンを襲ったのは鋭い痛みだった。ピキッ!と言う音がよく似合う痛みが左肩から頭の天辺まで突き抜ける。何とか叫び声を上げることだけは我慢し、アレンは目を開けた。
最初に見えたのはやたら近い天井。頭を横に向けようとするがあの痛みがジリジリと肩から流れてきたので止めた。
ぼーっとする頭で何か考えようとするが何も思いつかない。確か、大切な何かの心配をしなければならなかったはずなのに、霞がかかってアレンは思い出せずにいた。
アレンは、とにかく体を起こそうと少しづつ体を動かし、自分が寝ているベッドらしき物のフレームに上半身を預けた。肩の痛みが引くまで目を瞑って耐えているとお腹の上から何かがころんと落ちた。
「ん、んぅ〜。…すぅすぅ。」
ベッドに転げ落ちたものは可愛らしい寝息を立てていた。蒼く透き通った羽はキラキラと変わらず、小さな体は少女らしい柔らかな曲線を描き、ピクシーらしい衣装があるがままの魅力を表現していた。
片手で持ち上げられるほどの小ささが保護欲を掻き立て、アレンは愛しいお人形さんがら目が離せないでいた。
「うーん、ふっあぁーーーあ!……あれぇ?あたし、寝ちゃって。………あ。」
「おはよう、フェブ。」
「…。」
「?フェブ?フェブさーん?」
「う。」
「う?」
「うえええええぇぇーぇっええぇぇえええぇぇえーーーえええぇぇぇん!!」
「ちょ、えっ!?なんで?フ、フェブさんえーっと、」
「びええーーーーえぇぇええっぇえええぇえぇん!!!アレェンのぉばぁがあああぁぁぁぁああああぁぁーー!!!!」
ぐしゃぐしゃに泣きながらなので言葉の大半は何を言っているのか解らなかったが、最後の言葉だけは鈍感なアレンでも何とか理解できた。
フェブの泣き声を聞いているうちに頭もスッキリとし始め、今更ながらにアレンはどんな状況にいたのか思い出すことができた。
押しつぶされそうな恐怖と緊張、腐臭と血臭、その先にあった痛みと死の実感、はっきりと覚えている紅と蒼に煌めくフェブ。溢れ出た安堵感にアレンも目頭が熱くなってきた。
「う、ぐすっ!ふぇぶぶじだったんだね。よかったよ゛がったよ゛ぉ〜!」
「えぐっ、な、なんであんたまでな゛いでんのよ゛ぉ。ばあぁかあああぁぁぁああぁ〜!!」
「ご、ごめんよぉ〜。ご、うぐっごべんなさい〜!!」
「うえぇええぇっぇ〜〜ん!!」
<ガチャッ!!
「あらあら、え〜と、これはどう言った状況なんでしょう?」
大声を聞きつけて駆付けたリールーは、大泣きしている一人と一匹を目に苦笑を漏らしながら考え、取り敢えず泣き止むまでに温かいホルスタウルス印のスープでも作っておこうとその場を放置した。
しばらく泣き続けた一人と一匹は、アレンの腹の音で少し心が落ち着き、頃合を見たリールーに促されて食事を取ることにした。家にはアレンとフェブ、リールー以外にも幾匹かのフェアリーやピクシーが住み込んでおり、
食事の用意も何もかも彼女達が用意してくれていた。
当然ながら、アレンは、ベッドでの安静を言い付けられたので、食事の場所は寝室に広げられた。ベッドの上やら横やらで小さな女の子達がきゃあきゃあ騒ぎながら取る食事と言うものを経験したことのないアレンにとって、
一種の家族団欒の雰囲気を感じていた。
「ずずずぅ〜。ぐすっ!……………美味しかった。」
「ふふ、逃げてきた方の中にホルスタウルスの方がいらして、助けてくれたお礼にとミルクを分けてくれたんです。」
「そ、そうだ!そこら辺どうなったのか聞きたいんですけど!僕が倒れてどのくらい経ったんですか!?てか、ここどこなんですか!?」
「まあまあ、落ち着いてください。ここは妖精の国で、倒れてからだいたい二日ほどですよ。作戦については、私も詳しい内容を聞いていないので教えることはできません。
それよりも!アレンさんは他に気にすることがあるんじゃないんですか!フェブさんは二日間ずっと付き添ってたんですよ!」
<ブッフゥー!!
「な、ななな、何言ってんのよ!?あ、あぁたしがそんな事するわけないいじゃない!今日は、その、たまたまよ!たまたま!
ご主人様に倒れられたら食い扶持が無くなるからよ!そうよ!そうに違いないわ!」
アレンがフェブを見つめるとフェブは顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。如何に朴念仁なアレンでもこの仕草だけで本当の事なんだと解る。
フェブの優しさにまた目頭が熱くなるが、同時に彼女を悲しませた事に対しても申し訳なさが込み上げてくる。
「フェブ、ごめんね。心配かけて。でも僕はきm…」
言いかけたアレンの言葉は横で聞き耳を立てていたフェアリーの人差し指で止められた。飛び上がってア
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