「これで・・・よしっと。どうかな?動きにくい?」
「ううん、大丈夫。」
翌朝、アレンはフェブの包帯を換えてやっていた。全身に軽い擦り傷があったが、泥汚れで酷く見えていただけで実際の傷は大したものではなかったのが幸いだ。
フェブは軽く部屋の中を飛んで動きにくいかどうか確認した。
欠けた羽が痛々しい。あんなに綺麗な羽だったのに。
「羽はごめんね。僕にもどうしようもなくて。」
「へっちゃらよ。魔力が溜まれば直せるもの。」
「そ、そうかい///」
「?なんであんたが赤く・・・あっ///」
魔物にとって魔力を貯めると言うことは必然的にあっち方向になるわけで・・・
「い、今のなし!!あんたとあたしはあくまで建前上奴隷なんだからね!!絶対、ヤらないからね!!」
「わ、解ってるよ。てか、そんな直球で言わなくても、いてっ!」
フェブは軽くアレンの頭の上を回って髪の毛を引き抜き、ベッドに着地した。
「ふん!」
「はぁ。」
黙ってればかわいいのに。アレンはそう思わざるおえなかった。
「ねぇ、そう言えばこの服、やけに綺麗だけどなんで?昨日、泥だらけだったと思うけど。」
「ああ、それは僕が君をお風呂に入れるのにn・・・」
「 脱 が し た の !? 」
フェブは、今度は包帯を切るのに置いてあった鋏を持ち上げて襲いかかってきた。
「うわ!危ない!落ち着いて!仕方なかったんだ!他に怪我してないか診ないといけなかったし、それに、汚れたままだと君も嫌だと思って!」
「バカバカバカバカバカーーーー!!変態変態!!」
「変なことは何もしてないから!ちょ、まじ危ないからっ!うわっ!!」
「うるさーーーい!!ふぇーーーん!!」
段々狙いが正確になってきているのがなお怖い。このままでは本当に刺されかねない。
アレンは何とか機嫌を取ろうと考え、ピンッと閃いたことを試してみた。
「ほんとにごめん!!お詫びに新しい服買いに行こう!ね!」
「!!!」
フェブはアレンの喉元数センチのところで鋏を止めた。
「(マジヤバカッタ!!)ほ、ほら、そこまで汚れたり、解れてたら嫌だろ?今日、今から買いに行こう、ね?」
「ぐすっ、ほんとでしょうね?」
「うんうんうんうん!ほんともほんと今から行こう!」
「そっちじゃない。変なこと・・・しなかったでしょうね?」
「シマセンデシタ。カミサマニチカイマス。」
「・・・まあいいわ。(ぽいっ」
フェブは鋏をベッドの上に落とし、枕の上で寛ぎ始めた。
「すぐに用意するから待ってて。」
何とか機嫌を取ることに成功したアレンだったが、本当のところかなり危なかった。
入浴させているときのフェブの身体は、その大きさに不釣り合いなほど柔らかく、スベスベしていた。
アレンはその時、「よく洗わないと」と自分に言い聞かせ、入念に指を這わせていたのだ。ピクシーにしては大きい胸も、細い手足も、ぷりっとしたお尻も、入念に、入念に。
もしその気配を少しでも見せていたら鋏は止まらなかっただろう。
アレンはフェブを肩に乗せて街へとくり出した。反魔物領ではあるがこの街だけは堂々と魔物を連れ立って歩くことができる。
フェブはひっきりなしに感嘆の声をあげている。
綿菓子屋を見つけては買ってくれとねだり、射的屋を見つけては勝手にやろうとした。アレンはそれを止めるのにてんてこ舞い、何故なら彼には本当にお金が無かったからだ。
こんなところで要らない出費を出すわけにはいかない。それにフェブは、たいそう不満がった。
「いいじゃない別にあれくらい。アレンのケチ!貧乏人!」
「僕は本当に貧乏人だから仕方ないの。フェブもあんなのより新しい服が欲しいだろ?」
「イーだ!」
フェブはビュンビュンと一人で飛び立ってしまった。
「待って!そんなに飛ぶと危な・・・(ガイィン!!」
制止する暇もなく、フェブは通りに立っていた鎧にぶつかった。
「(ヤベッ、警備兵だ。)」
警備兵はここでは嫌われものだ。無駄に偉そうだし、しょっちゅう〇〇違反だと言っては罰金を取ろうとするからだ。貧乏人にとっては平謝りでやり過ごしたい相手だが・・・
「この唐変木!こんな真ん中で立ってんじゃないわよ!」
僕らのフェブさんはそれでは赦してくれないそうです。
「ああ?何だとこの羽虫が。」
「誰が羽虫よ!こんなかわいい羽虫がいるわけないでしょ!目ん玉付いてんの?」
「てめぇ、魔物のくせにいい気に・・・ん?」
「?」
「お前、首輪が着いてないな。」
「そうだけど?何よ?」
「野良の魔物はこの街では見掛けた瞬間に斬り殺してもいいことになっている、フッ!(ブンッ!」
「キャッ!!」
警備兵はいきなり剣を抜き放ちフェブに斬りかかった。幸いにも的が小さかったので初撃は外れたが、本気で
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