最近、先輩の顔を見ていない。

お題:ブラックハーピー

「くそったれ!くそったれ!ああ、くそったれ!」
夏の真昼砂漠、こう書けば今その男が居る場がどれだけ暑苦しいかが誰の脳裏にも鮮明に思い浮かぶだろう。しかしそれよりも男は、冷やかな気分で一杯だった、というのは、今この男が絶体絶命の危機を迎えているに他ならない。言葉の継接ぎに弾丸を込め直す。クラシック鉄砲に拘っていたのが間違いだった、僅かな装填の隙が大きな欠点となっている。
その欠点を狙い男を襲う黒い影。数は一つではない、五つ。影の、先ず一匹が男に襲いかかる。一匹目の爪は余裕で避けた。二匹目と三匹目が絶妙なタイミングで襲いかかるがこれも回避した。だが四匹目で完全に体勢を崩してしまい、五匹目の爪は避ける事が叶わず、その肩に爪が食い込んだ。
そしてほんの一瞬の間に男は空高くに居た、落ちれば両足骨折は免れないだろう、もうこれで完全なゲームオーバー。
「やったわねお姉様!」
「ええ、久し振りの獲物よ!」
「頑張ったかいがありますわ。」
「これも皆のお陰だわ!」
「後でパーティね!」
けたたましく鳴く五匹は、ブラックハーピー。仲間と共に執拗に獲物を狙う黒い狩人である。男は自分を持つハーピーを打ち抜こうにも後に待っているのは無残な墜落である、今はどうする事も出来ない。だが彼女達は自分を巣に持っていくはずだ。その時にこそ脱出のチャンスはあるはず。
「あぁ、もう後は好きにしてくれ。」
降参の振りで鉄砲を地面に落して両手を上げる。後は彼女達の性格を冷静に観察するのみ。
「ふっふーん、諦めの良い男は、私は好きよ?」
「でも油断ならないわ。まだ私達の隙を伺っているだけかもしれないし。」
「そうね。じゃあとりあえず慎重に私の巣に運びましょう。」
「え、ちょっと待ってよ。何であんたの巣に運ばなくちゃならないの。」
「今の作戦思いついたの、私よね?私の巣に運ぶのが当たり前なんじゃないの?」
一斉に沈黙する五匹のブラックハーピー。
何かに気付き始めた男から先程彼女達に追い込まれた時よりも遥かに多い汗が湧き出る。ほんの一瞬の緩み、その隙を狙って男をぶら下げたブラックハーピーが群れから飛び出した。
「あ、逃げた!」
「こら、待ちなさい、それは許されないわよ!」
「私、あの子の巣に先回りしてるわ!」
「上等じゃない!誰が一番早いのかを思い知らせてやる!」
「うわわああああああああああああやめろおおおおおおおおおおおおおお!」
ブラックハーピーのカーチェイスが始まった時、その一匹に捕まった男がどうなったのかは、言うまでも無く。


お題:猫又と妖狐

秋の寂しい風の吹く、既に覚えている物は近所の高齢者くらいしかいない程に知名度の寂しい神社。何故かそんな場所、否、古来より英雄の戦いに場所は関係ないのだ、で、信仰を巡る激突が行われようとしていた。
一組は妖狐の傍に控えた男、もう一組は猫又を控えた男。
実はこの妖狐と猫又、それぞれがこの神社で祀られている神様なのだが、何故か一つの神社に二柱居た。神が二柱居れば争いが起きるものだがそれもう昔の話、今彼女達に仕える者は各々の傍らで侍る男一人しか居ない。
男達が前に出る、例えかつての名は無くとも、神を心知る者として勝利を捧げる責務を果たさなくてはならないから。双方は既に何度も戦い既に相手の手を知り尽くしている、ならばと、奇策に打って出たのだ、それは。
「ふん、よく怯えもせずに現れたな。」
「そっちこそ、布団に包まって震える覚悟は出来たか?」
「…もう言葉は不要だな。」
「ならば始めようか!」
狐の男が取り出したマタタビ、猫の男が取り出したのは油揚げ、それぞれを天高く掲げたかと思えば、あらぬ方向へと放り投げた。
「己が信じる神の品を知る戦い!」
「これで貴様が祀る神の下品さがよく分かる!」
「ふん、どこで子供を作っているかも分からない猫に、品でとやかく言われたくないな!」
「な、何だと!猫又様、貴方は決してそのような事は…。」
猫の男が振りむいた時、彼が信じる神は居なかった。まさかと思い、狐の男が投げたマタタビを注目すれば、そこで幸せそうな顔をする猫又が。
「ば…馬鹿な…猫又様ーーーーーー!」
「はっはっは!見たか!所詮は猫!この程度の誘惑にも負けるとは神の恥晒しもいい所!そうですよね、狐さm…。」
狐の男が振りむいた時、彼が信じる神は居なかった。まさかと思い、猫の男が投げた油揚げへと注目すれば、そこで幸せそうな顔をする妖狐が。
「…。」
「…。」
居た堪れない風が吹く。
「きょ、今日の所はこのくらいで勘弁してやる!」
「そ、それは俺の台詞だ!だが次はこうも行くと思うなよ!」
「俺の台詞を取るな!では、さらばだ!」
二人の英雄は走り出す。二人が信じる神様(笑)の元へ。
「うぽおおおおおおおおおおおおお狐様ぁあ
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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33