ep1「唐突な旅の始まり」

俺の名前はシュート・アッシフォード。
皆からはあだ名で「シュー」と呼ばれている。
実家に帰ってから数年が経ち、俺は二十歳前半の年齢になった。
そして、ある日俺は母親に呼び出された。

「……相変わらず広いよな?」

俺の家は和風の大きな屋敷で昭和時代の物をリフォームしたようなものだ。
俺は縁側を一人歩きとある部屋の前に立った。

「母さん来たよ?」
『うむッ、入ってきなさい』

俺は襖の向こうから入ってくるように言われたのでゆっくりと開けた。
そこには広々とした居間で、普通の家の三倍はある広さだ。
奥あたりには大きな鎌が壁に掛けられている。
俺はそれの刃を撫でるように触ってから後ろに居る者に話しかけた。

「凄い大物だよなこの鎌は?」
「そうね……私が旧魔王世代の時に愛用していたものよ?」
「……母さんは人間だったよね?」
「えぇ、今ではバフォメットだけどね?」

俺は後ろの方を振り返った。
そこには座布団の上に正座で座っている紫の和服姿のバフォメットが居た。
名前はサフィア・アッシフォードという俺の母親で元人間だ。
黒の腰まである長い紙を後ろで束ね、顔付きは幼さが残り、体型は普通のバフォメットなのだが……―

『ぷるんッ♪』

…和服を着ているが分からないが我が嫁に劣らないほどのお乳様をしています。
本当に母さんはバフォメットになったのだろうか気になった。

「それで、話ってなんだよ?」
「えぇ、そこに座りなさいシュート」

俺は母さんの前にある誰も座っていない座布団の上に正座をしてから母さんと向き合った。
母さんはクスクスと笑いながら見つめてくる。

「それで、もう一度聞くけどさ?」
「えぇ、話をしましょう。シュート、もう一度魔界に行ってきなさい」
「……はッ!?」

俺は驚きながらもそのまま立ち上がってしまった。
母さんは俺の行動が分かっていたかのように手を手招きの湯にしてから顔を縦に振った。

「気持ちは分からなくもないけど取り敢えずは座りなさいな?」
「……あ、あぁ、そうだね」

俺は再度正座をしてから座り母さんと目を合わせた。

「きゃッ、そんな目で見ると母さん妊娠しちゃう♪」
「……それで、何で俺は魔界に行かないといけないんだ?」
「まぁ、簡単な話よ?魔界に住んでいる私の同僚が『ギルドのメンバーを募集しておるから息子をこっちに寄越してはみんかの?』って親友に言われたらね?」
「別に良いけどね?俺はこっちの世界は退屈で仕方が無い」
「……そう言うと思って私は貴方に聞いたの」

俺は一息ついてから母さんに真剣な表情を見せた。
母さんは俺の眼差しを受けて真剣な表情になった。

「俺は、母さんの親友の元に行けばいいんだね?」
「えぇ、そうよ?それと向こうに付いたら何度か連絡を頂戴」
「あぁ、わかってるさ」

俺は立ち上がってから大きな背伸びをしてから母さんに一度頭を下げてから居間の襖を開けようとした瞬間だった。
俺の背後から母さんが俺に抱き着いてきたのだ。

「……良いこと、必ず何日かで良いから帰ってきなさい」
「……あぁ、わかってるさ」
「御健闘をお祈りしていますよ……我が息子よ」
「……はいッ!!」

母さんは俺から離れたので襖を閉めて俺の部屋へと向かった。

「……私が知らない間に逞しくなっちゃって」

今には小さく呟いてからその場に崩れて小さくすすり泣く母さんを俺は見ることはできなかった。
これは、決して別れでは無くて「行ってきます」と言う体での表現だからだ。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

俺は一息漏らしながら縁側を歩いていると目の前を桜の花びらが舞い降りてきた。
ふっと庭の方を見てみるとそこには綺麗に整えられた庭の中心に大きな桜の木が咲き誇っていたのだ。

「……向こうでもこういう綺麗なものは見れるのだろうかな?」
「見れるよきっとね?」
「……ヴァン?」

声が聞こえた方を見るとそこには黒のヘビィメタル衣装を身に纏ったワーウルフ。
右目に狼の刺繍を施した眼帯をはめている嫁のヴァンがこっちに歩み寄りながら声をかけてきたのだ。

「向こうの世界ではジパングと言う島国があるから見に行けるよ?」
「そっか……それは楽しみだ」
「……シュー嬉しそう」
「おやおや、セツも居たのか?」

気づいたら横にある柱に背を預け、腕を組んでいる黒装束のマンティス。
手首には大きな鎌がついているが以前までは水色だったのだが赤黒く変色した物をもつ二人目の嫁のセツが居た。

「あぁ、何だかワクワクして落ち着かないんだよ?」
「わふぅ〜ッ、僕も同感だよ♪」
「……同じく」

俺たちはそのまま微笑んでから一緒に桜を見た。

「必ずこの家に帰って来ような?」
「わふぅ〜ッ、当たり前じ
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