ep3「飲んだくれの相手はごめんだ」

ここいら一体も春らしいものが見れることがあった。
我が家の少し近くに住んでいるマタンゴが春茸を発見したらしい。
春茸というのはシイタケの亜種だと思ってくれた方が良いだろう。

「今日はどうしようかね?」

俺はリビングにあるソファに横たわって本を読みながらこんなことを考えていた。
ヴァンとセツはというと…―

『……zzz』
「……。」

一昨日の番に森の近くにある街で買ったらしい「鬼の酒」とかいうラベルが貼られた酒瓶をそれぞれ抱きしめて床で寝ていた。
正直言って俺は飲んだくれ共を介護するようなことはしない。
次から次へと飲むのではなくてゆっくり飲む方が好きだからだ。
以前、俺が彼女らに酒を飲もうと提案したときに彼女らは泥酔状態となり俺に無理やり酒を飲まされたことがあるからだ。
まぁ、お仕置き(性的な意味で)をしたからスッキリしたけどさ?
皆も酒には飲んでも呑まれるなと言っておく。

「……はぁ〜ッ」

俺はため息をついてソファの近くにあるミニテーブルに本を置いて立ち上がる。
その後、寝室に向かい毛布を二枚ほど持ってからリビングへと戻った。
まぁ、手っ取り早い話…彼女らに毛布をかけるということだ。
さすがに魔物は人間よりかは頑丈でも気温を感じるのは同じなのだ。

「まったく、世話をかけさせる恋人たちだよ」

何ていいながらも微笑み彼女らに毛布をかぶせて寝顔を拝借。
ヴァンは眠る時は眼帯を外すそうなので素顔を見るのはこれで三回目だろう。
あんがい、可愛い寝顔をしている。
セツのほうは、凛々しくて清楚なイメージを想像させるほどの寝顔だ。
こんな彼女を二名も持っている俺は幸せすぎるのだろう。

「……おっとッ、もうこんな時間か?」

俺はリビングの壁にかけてある掛け時計を見上げた。
短い針は十二時を指しており、長い針もそれと同じ場所を差していた。
とりあえずは、彼女らに胃に優しい料理でも作ってやろうと思いダイニングの方へと向かった。

「さてさて、まずは貯蔵庫の確認をしないとね?」

俺はダイニングにある魔氷結晶が埋め込まれた四角形の貯蔵庫の扉を開いた。
中にあったのは、鶏肉に魔界豚の肉、牛肉…湖で釣れた魚。
…これで何か胃に優しいものが作れるのだろうか?
とりあえずは、健康に良いらしい虜の果実…これのどこが健康にいいんだ?
むしろ、俺がこってり搾り取られるのは間違いないのでこの果物を貯蔵庫の奥にしまい貯蔵庫の戸を閉めた。

「……仕方ない、起こしますかね?」

俺はリビングで寝ている彼女らの方へと足を運んだ。
やはり、まだ眠っているようだった。

「うん、酒くさい」

俺は最初にヴァンの方へと足を運んだ。
ヴァンは仰向けになって酒瓶を抱いて眠っている。
とりあえずは、彼女の頬を突いてみた。

「……うぅ〜んッ」

ヴァンは眉を寄せてから寝返りを打った。
その際に酒瓶は手から離れたので回収しました。
まだ、眠るはずだろうと思ってセツのところに…。

「……じーッ」
「……おはようセツ」
「……シュー、おはよう」

セツは目元を擦りながら立ち上がりのそのそと歩き俺の胸に顔を埋めてきた。
俺は彼女の背の方に腕をまわした…のがいけなかった。
セツが俺の足元で寝ているヴァンを鎌の先端でつついた。
ヴァンは「痛いッ!!」といって思い切って跳ね上がるように体を起こした。

『ずんッ!!』
「……がうッ!?」

―ヴァンの頭がシューの股間に命中しました。―

いらないナレーションをしないで欲しいものだぞ駄作者。
俺はその場で顔を青ざめ股間を押さえつつ倒れ込んだ。

「……クリティカルヒット」
「わふッ、シュー大丈夫?」

彼女らは俺を見下ろすようにして膝に手を付いた。
俺は「おぉぉぉッ」とうめき声をあげながら股間を押さえた。

「……大きくなった?」
「わふぅッ、食べて良いのかな?」
「……ダメ」
「……ちぇッ」

そう言って彼女らは俺の顔を覗き込んで一斉に頬にキスをしてきた。
何だか微笑みながら頬にキスをされてしまった。

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時間はお昼の一時を回った頃だろう。
俺はソファに座り先ほどの本を読んでいる。
ヴァンは俺の右側に座って眼帯の刺繍を縫っていた。
セツは左側に座って俺が読んでいる本を横から見ている。

「……これ、何の本?」
「あぁ、レスカティエの歴史をしるしたものだよ」
「……面白い?」
「暇つぶしにはもってこいの代物だ」

何てセツと話していたらヴァンも「どれどれ?」と言いながら俺にもたれかかり本を覗き込んできた。
ヴァンの方を見てみると右目に彼女のトレードマークである狼の刺繍が施された眼帯がつけられていた。

「ところで……明日は買い物にでも行こう
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