魔界にはジパングと言う場所があった。
そのジパングの北側にある山には小さな村がある。
村の名前は鶯山という名で春になる綺麗な鶯の鳴き声が聞こえることで有名な村だ。
そして鶯山の新たな領主が居た。
その名も鶯山六代目領主の緒方修夢(しゅうむ)。
彼は14という若さで五代目から領主の座を請け負った少年だ。
今日は修夢が領主となってから二日目がっ経った現在。
彼はある場所に向かっていた。
その彼の手には一つの紙包みがあった。
「うぅ〜ん…何処にいるのかな?」
彼は村をキョロキョロしながら歩いていた。
修夢は何処からか聞こえてきた声で修夢は立ち止まる。
「やぁ〜いや〜いッ、ここまでこいこいッ!!」
「こ、このガキがッ!!」
「……またやってる」
挑発的な態度を取っている少女が団子屋から出てきた。
少女の名前は不知火茉莉(まつり)という薄緑色の膝丈が短い着物を着た刑部狸だ。
どうやら修夢は彼女を探していたようだ。
彼は団子屋の方へと足を運んでから彼女に近づく。
「また悪戯をしたの茉莉?」
「うえぇッ!?し、修夢ッ?!……あぁ、いや……その……」
茉莉は修夢に一声かけられてから肩を震わせてすぐさまで振り向く。
その頬は何処か赤らめているようにも思える。
どうやら茉莉は修夢のことを好きなようだ。
「うぅん?僕がここに居るのがおかしいのかい?」
「ち、ちがッ……「捕まえたぞガキッ!!」わ、わわッ!?」
「……あッ」
茉莉が団子屋の店主に襟首を掴まれてから修夢は驚く。
その後に修夢はクスクスと笑い始めるのだった。
「は、はなせぇ〜」
「誰が離すかガキ狸めが……おっとッ、こんにちは領主様」
「こんにちはおじさん……その子を離してもらえますか?」
修夢は首を傾げつつ微笑みながら団子屋の店主に言う。
その店主は困り顔で頭をかきながらこう言った。
「あぁ、領主様には悪いんだが……ちょっとお仕置きをせねばならんのだが?」
「わかってるよ。その後は彼女とお話をさせてね」
「おうよ、がははッ!!」
短めに返事をした店主は微笑むと茉莉を担いでから店の中へと姿を消した。
『お仕置きだこの狸めがッ!!』
『いったーいッ!!』
「お仕置きは暫くかかりそうだなぁ〜」
修夢は店員の女性に団子を注文してから店の外にある長椅子に座り空を見上げる。
彼の目には雲一つない蒼天の空が映し出されていた。
――――――――
暫くしてから店の中から若干半泣き状態で頭を押さえつつ茉莉が姿を現した。
修夢は彼女と共に村の中を歩き始めた。
「あうぅ〜痛い……」
「また、米粉の中に塩を入れたの?」
「な、何でわかったのさ?」
「茉莉のやりそうなことはワンパターンだもん」
そう言ってから彼は茉莉の小さな手を握ってから微笑む。
手を握られた茉莉は頬を赤くしてから修夢を見つめる。
「そ、そうかな?」
「うん、絶対にそうだよ。そうでなかったらばれなかったのにね?」
「はうぅ〜……」
微笑みながら修夢は言うと茉莉は俯きながら顔を真っ赤にする。
彼らを見ている村人たちはこう思っていた。
「領主様はどうしてあの悪戯狸に親しみを?」
「さぁ、きっと好いておられるんだろうさ」
などと村人たちは彼らの姿を見てからニッコリと幸せそうに見るのだ。
それから修夢と茉莉は村はずれにある木の下に座った。
修夢は両足を伸ばして座り茉莉も同じ様に詩を伸ばす。
「ところで私に何の用なの?」
「んッ?あぁ、そうそう……これこれ」
茉莉に用を聞かれた修夢は思い出したかのように彼女に先ほどに紙包みを差し出す。
茉莉は首を傾げてからそれを受け取る。
「これはなんだい?」
「良いから良いから、早く開けてよ」
「う、うん……」
彼女は修夢に何が入っているのか聞いた。
しかし、それは修夢にせかされてしまい聞けぬままでから紙包みを開く。
その中に入っていたものは…―
「……簪(かんざし)かい?」
「そうだよ?それをあげるからさ……もう悪戯はしないでね?」
「えぇ〜……私の楽しみを奪う気か?」
「ちがうよ。僕は君に女の子らしく過ごしてほしんだよ」
「……なッ?!」
突然の修夢の発言により彼女は尻尾と耳を逆立たせながら立ち上がった。
そんな修夢は驚いたがクスクスと口元を拳で隠してから笑い始めた。
彼女の手の中にある簪は都に行かないと買うこともできない白い鈴蘭を模したものだ。
「私の何処が女らしくないんだいッ?!」
「クスクス……だってその口調もさ」
「うぐッ……そこを言うか……」
修夢に言われた茉莉は苦虫を噛みしめたかのような表情を浮かべる。
茉莉の口調は村の住民も「女らしくない」と言われたことがあった。
だから修夢は彼女に女の子らしい発言をさせるための道しるべを作ろうと思って買ったのだそ
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