5、「刃青年と老兵」

時刻は、ちょうどお昼を回った時間帯の雲一つない良い天気だ。
そんな中を一台の小型バギーが砂煙をあげ、エンジン音を響かせながら走っている。
小型バギーの操縦士は、背中に大剣と刀をクロスさせて背中にしょっていて、見た目は十代後半の好青年、服装は黒の袴だ。
この青年の名前は「カイ」と呼ばれる青年でユリと同じ場所で剣術の修行を積んでいた。
カイは暫く小型バギーを走らせていると、目の前に木陰になっている場所を見つけ、そこまで小型バギーを走らせて停止した。

「ふぅ〜ッ、あれから何日がたったか……」

彼は旅を初めてまだ一週間弱の道のりを考えなら小型バギーのエンジンを切り、木陰に大剣と刀を立てかけ袖口から携帯食料が入った小包を取り出して、その中にある干した兎の肉を手に取り口に咥える。

「うぅ〜ん……ッ……しょっぱいな……」

何とも言えない塩の味を感じながら青空を見上げる。
青空では、ドラゴンとワイバーンが空を飛びながらこちらに向けて手を振ってきたので手を振りかえす。
ドラゴンとワイバーンはそれを見てから微笑み飛び去った。

「随分と中の良いドラゴンたちだな?」
「おや、ワシと同じことを考える若造が居たとは……」
「……んッ?」

カイは横を見ると唐傘を被った白い着物を着て、腰に長さの違う二本に刀を右腰に差した老人が両手を腰の後ろで組んで立っていた。
カイはその老人を見て冷や汗を背中に一筋流した。
それもその筈で、その老人の右頬には狼の刺青があったのだ。

「ま、まさか、こんなところで『一匹狼』に出会えるとは思っても見なかった……」
「ふぉっふぉっふぉッ、若造よ?ワシが誰かわかっているようじゃな?」
「あぁ、『一匹狼』は俺みたいな新米剣士の憧れだからな」
「ふぉっふぉっふぉッ、それは嬉しいものじゃが……ワシみたいな老いぼれを憧れるのは些か申し訳ないの」
「いやいや、嬉しそうな顔をしながらそんなことを言われてもな?」
「これは参った、ワシも老いたものじゃ」

そんなたわいもない話をしながら、『一匹狼』とカイは会話を弾ませていった。
それも、どこか懐かしさを感じながら…――

――――――

時間は過ぎてお昼の二時頃、カイと『一匹狼』は木陰に腰かけながらおにぎりを堪能していた。

「おぉ、これはなかなかの味じゃな?」
「あぁ、なにせ……秘蔵の保存魔法を使った焦し味噌を使ったイワシを包んだ忍びにぎりだからな?」
「ほぉ〜ッ、なかなかの味じゃな?」
「えぇ、そう言ってくれるとセツさんも嬉しいはずだ」

カイが剣術の師匠であるセツの名を出すと『一匹狼』は眉を少しヒクつかせた。

「セツとな?お主は『緒方家(呪われた一族)』の嫁に剣を教わったのか?」
「知っているのか?」
「左様じゃ。ワシはその初代である『緒方修靈』に剣術を教わったのじゃ」
「あ、あの『天剣術師』にだとッ!?」

カイは驚いた表情で『一匹狼』の方を向きながら立ち上がった。
それを見た『一匹狼』は微笑みながらカイを見上げる。

「ほぉ、カイ殿はご存じであったか」
「当たり前だ。あんな人間離れした禁術は『天剣術師』にしかできないだろ?」
「左様じゃ、ワシでも『豪炎剣術』までしか扱うことができなかったものじゃ」
「いや、それもそれで凄いんだが……」
「ならば、試してみるか?」

『一匹狼』はカイを見上げながら刀に手をかけて微笑んだ。
カイは、目を見開いてからガタガタと震わせているのだ。
それもその筈で、カイはセツ以外の『剣術師』を見たことが無いのだ。
ここで引き下がるカイではなくて…――

「その挑戦、是非ともお願いしたい」
「語源が可笑しいぞカイ殿。まぁ、良かろう……それじゃあ、草原の方で一戦やるかの?」
「あぁ、望むところだ」

そう言ってカイは、大剣と刀を背にしょって走って草原に向かった。
『一匹狼』は、それを見てから微笑み「若いのぉ〜」と言いつつ立ち上がり草原に向かった。
草原に向かった二人は三十メートルは離れてから、お互いを見つめ合う。
その間を、風が通りかかり草が揺れる。

「『風剣術師』の弟子カイ……」
「『一匹狼』のイザナミ、いざ純情に……」
「「……勝負ッ!!」」

―――――

あれから一時間がたっただろう草原では剣が重なり合う鉄の音が響き渡る。
カイは大剣で『一匹狼』の一閃をしのぐのでやっとの状態で、『一匹狼』はそんなカイを見ながら微笑みつつ攻撃を止めることなく続く。

「どうしたカイ殿?このままじゃとワシに傷を負わすことは難しいぞ?」
「そんなの……わかってるんだよッ!!」

そう言って、カイは大剣を横に振ったのを『一匹狼』は上に飛んで立っていた位置に着地した。
カイは、それを見てから大剣を片手でもってから刀を鞘から引き抜き、息を整え背中の鞘から刀を取り出して『一
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