周囲には空から降ってくる雪で覆われた銀世界が広がる。
何処を見渡しても銀世界で、雪が降る中を歩くのは体力の無駄だろう。
しかし、そんな銀世界を一台のバイクが爆音を響かせる。
バイクの操縦士はヘルメットに黒いゴーグルをつけて何も見えない銀世界をゆく当てもなく走る。
「視界が悪い。これじゃあ、迷子になるのも時間の問題…――」
目の前にある古びた小屋があったのでそこにバイクを止めてから、影に入れてから小屋に近寄る。
その時に、両手で一つの拳銃を持って背を壁に付けて小屋の窓から中を覗く。
中は暗くて何も見えない為、確認することは困難だろう。
彼女、ドッペルゲンガーのユリは中に誰かいるか確認するために小屋の入り口の方へと足を運んび、壁に背をくっつけてから片手で小屋の戸をノックする。
「反応無しかな?」
彼女は拳銃を左腿のホルスターに閉まってから戸をゆっくりと開ける。
そして、勢いよく中に入るとそこには…――
「……えッ?」
ユリの眼の前に広がるものは、誰も居ないはずなのに用意された湯気が出ているシチューとホットミルク。
ユリは、右腿のホルスターに閉まってったサバイバルナイフを持ってから恐る恐る進んでゆく。
すると、足元から何かの視線に気づいたが、反応が遅れて足首を掴まれた。
ユリの足首を掴んでいる手は薄い紫の手だった。
『何者ですか?』
「……ッ!?」
小屋の奥からはアサルトライフルを持ったフードつきの茶色いコートを羽織り、スーツに身を包んだワイトが姿を現した。
しかし、ユリはしのワイトを見てから目を見開いたのだった。
「貴女は、ベレッタさんですか?」
「人間時代の名前を知っている?どちら様ですか?」
「私はユリと言います」
「ユリちゃん?まさか……」
「ま、まさか、貴女がベレッタさんですか?」
ワイフもといベレッタはアサルトライフルを下してからユリの足首を掴んでいた手を見つめる。
その手はユリの足首を離して、勢いよくゴーストが現れた。
「ふぅ〜ッ、お嬢ちゃんユリちゃんだったかぁ〜」
「初めましてですね?ベレッタさんにシスター・スノー」
「はい、よろしくねユリちゃん♪」
シスター・スノーと呼ばれた修道院の服装をしたゴーストはベレッタの横に立ってから手を振った。
ユリは二人を見てから頭を下げ、サバイバルナイフを右腿のホルスターに閉まってからヘルメットとゴーグルを外した。
「随分と話を聞いていたよりも逞しい娘さんですね?」
「本当だねぇ〜ッ?泣き虫で寂しがり屋だって聞いていたんだけどねぇ〜ッ?」
「ど、どこまで聞いているんですかッ!?」
シスター・スノーに昔の頃を言われて顔を真っ赤にしながら声を荒げるユリ。
それを彼女らは静かに笑うのだった。
「ふふふッ、長旅も疲れたでしょうから腰かけなさい?」
「では、お言葉に甘えます」
――――――
小屋の暖炉に火が灯されてから彼女らはご飯を食べ始めた。
温かいシチューとホットミルクは寒い中をバイクで走っていたユリの体を温めるのには十分なほどのものだった。
「ふう〜ッ、暖まります」
「それは良かったよぉ〜ッ、私も作ったかいがあるってものさぁ〜」
「シスター・スノーの料理は絶品よ?」
「そうですね?人間時代は……」
「そ、その話はよしてくれよぉ〜」
テーブルを囲って三人はガールズトークを始めた。
因みにシスター・スノーの人間時代は今もそうだが天真爛漫な美人だった。
シチューを微笑みながら食べるベレッタは容姿端麗で頭脳明晰な美人だったのだ。
そして、会話を止めたのはユリの一言だった。
「どうして、魔物になっているのですか?」
『……。』
ベレッタとシスター・スノーは目を合わせてから真剣な表情になった。
ユリは二人の表情が変わったのを感じてからシチューをすくっていたスプーンから手を離した。
「『あの人』がこの村にやってきたのよ」
「そうだねぇ〜ッ、『あの人』がこの村を葬ったんだ」
悲しそうな表情で話す二人をユリは、手を握りしめて話を聞き始める。
二人の話は、人間時代の話で『あの人』が多くの軍服に身を包んみ銃火器を持ってベレッタとシスター・スノーが暮らしていた村を襲ったのだ。
その村の男は有無を言うこともできないまま無残な姿にされた。
その村の子は、十代までの者は連れ去られれた。
その村の女は、犯されたり弾丸の雨を浴びせられて血を降らせた。
『あの人』は、その光景を見ながら狂ったように高らかに笑っていたという。
「そして、私たちは死にきれないままこの姿になった」
シスター・スノーはユリを見て微笑んだ。
ベレッタも同じようにしてユリを本当の娘かのように見つめる。
「あの日は、忘れることはできないけど……」
「貴女の話を風の噂で聞いていると……」
『申し訳ないよう
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