1、「影少女と草原でのお話」

その日は雲一つなく、暖かな風が周囲を駆け回る蒼天の日。
風が走れば草木は音を発しながら揺れ、どこか神秘的なイメージが思い浮かぶだろう。
そんな中をエンジン音を周囲に響かせながら走るバイク、それに跨る黒いコートを羽織った十代の少女。
この少女がこの物語の主役である「ユリ」というドッペルゲンガーだ。
バイクのブレーキレバーを握って、エンジンを切りバイクのスタンドを下した。
黒いコートの舌は黒のワンピースを居ていて、髪は白のメッシュが入ったショートヘアの髪をし、後は普通のドッペルゲンガーと変わることが無い。

「ふぅッ、うぅ〜んッ…」

彼女は目に付けていたゴーグルを外して大きく背伸びをした。
その後に、近くの木影に腰をおろし持ってきた鞄から携帯食料である干し肉を取り出して、それを噛み千切ってゆっくりと味わう。
ユリの口の中では塩が効いた燻製肉の風味が広がり、塩気が多くて普通に喰えたものじゃない。
彼女は鞄から水筒を取り出してコップに飲み物を注ぎ一気に飲み干す。

「しょっぱッ、こんなものを普通に食べれる師匠の味覚が分からないよ」

噛み千切って歯形が付いた干し肉を見つつ、苦笑いを浮かべる。
それから干し肉を半分ほど食べて、保存用の袋に入れ、飲み物を飲み一息入れる。
そのまま彼女は草野クッションに身を任せて大の字になり青空を眺めた。
ユリの夕焼けのように赤い瞳に蒼天の青空の中を楽しそうに飛んでいる小鳥たちが映し出されていた。
ユリはその青空に手を伸ばしてから微笑み始める。
彼女の手元には、一匹のバッタが飛び乗ったのに気付いて手元を見た。
そこのは小さいバッタを負ぶった緑色のバッタがくっついている。

「アナタたちは、恋人同士なのかな?何だか楽しそうにしてそうで羨ましいね…」

彼女は微笑みつつバッタに問いかけた。その問いにはバッタは答えるはずもなく草原へと飛び立ったのだ。
彼女は「ばいばい、元気でね?」と告げて再度大の字になった。
暫くしていると、眠気が彼女に襲い掛かる。それもその筈で、約三時間もの間をバイクで走り続けたのだ。
しかし、そのバイクは普通のバイクでは無く、ガソリンの代わりに乗っている者の魔力を燃料として走るから疲労感と魔力切れを起こすことがある為休む必要があるのだ。

「ふぁ〜ッ……ちょっと眠たくなってきた……」

彼女は、バイクの方に向かいハンドルブレーキを解除してから木影の方までひっぱり、それから荷台の部分に乗せてある寝袋を取り出し、その寝袋に入ってからゆっくりと瞼を閉じたのだった。

―・―・―・―

彼女が眠りについて十分後のことだろう。
草原の先にある森の茂みから何者かが覗いているのだ。

「兄貴、あんなところにのん気に寝てる旅人がいやすぜ?」
「あぁ、そのようだな?」

この茂みで会話をしている薄汚れた服装、腰にはサーベルナイフを鞘に入れて吊るしてあるこの者たちは、おそらく盗賊の者たちだろうと予想ができる。
彼らは二人だけでは無くて約六人と言ったところだ。

「兄貴、あの旅人が寝ている間にでもあの高価そうな乗り物を奪いませんか?」
「それも、良いのだがな?」

リーダーである兄貴と呼ばれる者が目を細くしてユリの方を見た。
男は舌を出して、唇を舐めて彼女の寝顔を遠くから覗く。

「あの上玉だ、おそらくは魔物だ」
「そのようだな?あの黒髪からするとドッペルゲンガーだろ、どうする兄貴?」

盗賊の一員がそう言って男はこういった。

「あの寝ているドッペルゲンガーごと奪ってしまおうぜ?」
『わかりました』

そう言って男たちがユリの方へと近づいた。彼女が起きない様に足音や物音を立てないようにだ。
しかし、盗賊の一人の足元に何か透明なものが引か買った瞬間の出来事だった。

―ちり〜んッ―

何処からか鈴の音がしたと思ったらその盗賊団の一人のこめかみに風穴が開いたのだ。
男たちは呆然としながら倒れる仲間の方を向いていた。

「まったく、寝ている女の子を六人で襲おうというのはどうかと思いますよ?」

男たちは冷や汗を垂らしながら後ろの方を見た。
そこには、黒いハンドガンを握ったユリの姿があった。
寝袋から出て、盗賊たちの方を見て一礼をして微笑んだ。

「初めまして、『歩く銃器』ことユリというドッペルゲンガーです」
「あ、『歩く銃器』だとッ!?」
「お、おい、知ってるのか?」

盗賊のリーダーが部下の一人が大声を出したのに気付いて問いかけた。
それも、怯えながらその盗賊は言った。

「は、はい。白いメッシュが入ったショートヘアに拳銃と言ったら『歩く銃器』と呼ばれるドッペルゲンガーって噂ですぜ?」
「そ、そうなのか?……そんなの知るかッ!!」

そう言って理解ができなかった盗賊のリーダーは怒鳴りながらサーベルナイフを鞘から取
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