『どうしたの?』
幼い僕は公園のベンチで俯いている少女に声をかけた。僕は毎年、姉さんと長期休暇の際にはこの町に訪れていたがこの年は姉さんが中学受験の準備で来れなかった
まあ、新年の挨拶には家族と合流するから、結局は姉さんも来るけどそして……
僕はいつも姉さんと遊んでいる公園に来たんだけど
姉さんがいないこともあり、少し暇だった
だけど、それのおかげか分からないけど目の前で俯いてる少女の様子を気に掛けることができた
『………………』
俯いてる少女は僕が呼びかけても、返事をすることはなくただ無言だった
改めて考えればいきなり知らない人に呼びかけられたら誰だって困ると言うことを当時の僕は知る由もなかった
すると
『あ、進藤だ』
『うわ、本当だ』
『お前がここにいると暗くなるから、どっか行ってくんない?』
いきなり、明らかに『悪意』むき出しの言葉が聞こえてきた
どうやら、僕と同い年くらいの小学生の集団らしい
そして、その言葉が向けられているのはどう見ても僕ではなく、今その場にいる少女だ
少女はその声を聞いた途端に更に顔を下に向けた
僕はただごとじゃないと思って彼らに尋ねた
『ちょっと、君たち』
『なんだよ、お前』
集団に僕が呼びかけると1人が突っ掛るように言ってきた
『いや、君たちはどうして彼女を追いだすのかな?と思ってね』
『そんなもん、決まってるだろ……なあ?』
『そうそう、進藤がいると本当に暗くなるしな』
『それにさ、こいつの親って……』
『……………!!』
その話をしようとした瞬間、少女はいきなり涙を流し始めた
それを見た僕は
『ねえ……』
『なんだよ……ぐっ!!?』
集団の1人の顔面を殴った
なぜ、殴ったなんてわからなかった
だけど、一つだけわかることは
ムカついた……
ただそれだけだった
『な、何すんだよ!?』
集団の他の人間は僕のいきなりの行動に噛みついてきた
それは当然だけどね……
『ごめん……殴ったことに対しては謝る……
だけど、君たちもこの娘に謝れ』
『はあ?』
『なんでだよ?』
『意味わかんないんだけど』
『……………』
僕の発言に彼らは理解できなかったらしい
こういう加害者って自分のやっていることが『悪』だと認識できないことが多い
しかも、相手はまだ子供だ
だけど、それを理由に誰かを傷付けて良いわけではない
件の少女も突然のことに驚き、僕をジッと見るだけだった
『この……よくもやったな!!』
『……………』
『え?―――ぐぇ!!』
僕に殴られた男の子が立ち上がりやり返そうと殴りかかるけど、僕は大振りと大声でバレバレのその拳をかわして、再び殴った
『謝れ』
『ひっ!!』
先程の暴力で実力差に気付いた彼は僕が近づくと怯えだした
ちなみに僕が『暴力』に強いかと言うと僕の家は父親が実家の援助を断っているとは言え、基本的に父親の収入はしっかりしており、比較的裕福な家庭で育ったことで周囲からはそれを理由に嫉まれ絡まれることもあり、相手を怪我を負わせない程度に反撃してたからだ
本当はそんな自分の野蛮さが嫌いで一応、相手に謝っていたけど……
そして、そのまま膠着状態が続いていると
『明君!!何やってるの!!』
『め、恵美さん……』
近くを通りかかった恵美さんが僕たちの状況を見て駆けつけてきた
そして、僕の目の前に来て
『弱いものイジメなんかしちゃだめでしょ!!』
『……はい』
恵美さんは勘違いしていた
しかし、目の前に怯えている少年、その前に立って明らかに威圧的な態度を取る少年、それに恐怖している集団
明らかに僕が弱いものイジメをしていると思われても仕方がない
すると、
『そうだよ、謝れよ』
『そうだ、そうだ』
『あーやまれ、あーやまれ』
今まで、黙っていた彼らは突然僕に対して謝罪を要求してきた
恵美さんは少し、訝しげにしながら僕に対して
『ほら、謝ろうね?』
と優しく言ってきた
僕はそれに黙って頷いて謝ろうとした瞬間
『待って!!』
と今まで、黙っていた少女がいきなり口を開いた
その場にいた全員がそれに注目しだし
彼女の突然の発言に恵美さんが
『どうしたの?』
と聞くと、彼女は涙を流しながら
『その子は確かに内藤くんを殴ったけど……ヒクっ……それは……ヒクっ……私に……グスっ……かばうためで……』
彼女は嗚咽を混ぜながら話したが、恵美さんはそれから何があったか推測できたらしく
それを聞いた恵美さんは僕に顔を向けて
『明君……どうして、本当のことを言わなかったの?』
『だって、殴ったのは本当のことだから』
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