―ゴーッゴーッ―
ぐぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!!
悪霊の苦悶に満ちた声が響く中、炎は決して衰えず、むしろ、勢いを増して燃え続けていった。だが、これはこれから始まる苦しみの序章でしかなかった
「まず一つ目に……『色欲』」
私がそう呟き手を伸ばすと悪霊の身を焦がし続ける炎の中から一つの紅蓮に包まれた球体が私の手元に来た。そして、それを握りしめてから私は
「あなたは自らの快楽のために幼子とその家族を苦しめた……ゆえに『色欲』の罪に値する」
―バリィン!―
ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!?
悪霊の『色欲』の罪状を口に出してから自らの手元にある球を握り潰し悪霊は自らの原罪を砕かれたことによりさらなる苦しみを味わった
『色欲』。それは性欲によって生まれる『原罪』だけではなく生命ある者が快楽を得ようとする衝動だ。だが、それが単純に悪というわけではない。誰にも特定の行為を行って自らの快楽を満たそうとする本能はある。たとえ、性欲でなくとも知識を得ることやゲームをすること、スポーツをすることで快楽を得ようとする者もいる。何よりもそれがなかったら『生』はつまらないものになる。しかし、それが他人を傷つけるものになった時、それは罪悪となる。そして、悪霊は友子ちゃんを傷つけることで友子ちゃん自信とその両親を苦しむ姿を見て楽しんでいた
ゆえに悪霊は『色欲』の罪を犯したと言える
「二つ目に……『暴食』」
再び私が『原罪』の名を呟くと先程と同じように玉が私の手元へと来た。それを掴むと
「あなたは生命の価値を忘れた……ゆえに『暴食』の罪に値する」
―バリィン!―
ぎぃやああああああああああああああああああああああああ!!?
悪霊が二つ目の『原罪』も犯していたことから私は再び玉を握り潰した。すると、先程と同じように悪霊の苦しみに満ちた声が響いた
『暴食』。それは名前からすれば食事に関する『原罪』にしか聞こえないが、それは違う。確かに周りが飢えているのに自分だけが食べ物を必要以上に口にして周りを苦しめる『暴食』の罪過だ。だが、それは食事以外にも言えることだ。仕事などで共に協力し合った仲間に自ら手に入れた利益を分けることなく利益を独り占めする者。これもまた『暴食』の食事における罪過と同じ性質を帯びている罪悪だ。そう、『暴食』とは他者に対する労わりや感謝、思いやりを忘れて独り占めしたりする浅ましさのことであり、『貪欲』の罪とも言える。『色欲』と同じようにそれが誰かを傷つけた時、それは罪悪となる
今回、悪霊は別にそう言った『貪欲』の浅ましさは感じられなかったかもしれない
だが、悪霊はもう一つの『暴食』の罪を犯した。それは私が口に出した『生命の価値』を忘れると言う罪過だ。私達、魔物娘も人間もこの世界で生きる貴くて大切な生命の一つ一つなのだ。虫も植物も獣も人も魔物も皆、生きている。一度失われたら二度と帰って来ない大切な生命だ。しかし、それでも私達は生きるためにその生命を奪って生きていくしかない。だからこそ、私達全ての生命は他の生命を大切にしなくてはならないし、周囲への感謝を忘れてはならない。それは夫の精で生きていける私達魔物娘も同じだ。私達も普通の食事はするので生命に対する感謝はもちろんする。そして、何よりも常に私達と共に生きていてくれる夫への感謝も忘れてはならない
そう、この世界に無駄なものなんて存在しないし、無闇に奪われたり、傷つけられたり、失われたりしていいものなんて存在しない。全てには必ず価値があるのだから、全ての生命は尊いのだ
目の前の悪霊は友子ちゃんと言う幼い生命を徒に傷つけ弄び、嬲った。ゆえに『暴食』の罪に値する
「三つ目に……『強欲』」
三つ目の『原罪』の名前を呟くと再び『原罪』が宿る玉が私の元へと飛んできた。そして、それに手を触れて私は
「あなたは……『強欲』の罪を犯していない。ゆえにこの罪で裁かれることはない」
―スッ―
その様に断言した。すると三つ目の玉は炎が息を吹きかけられたようにように静かに消えて行った
『強欲』。それはあらゆるものを欲する衝動。私としては『色欲』と同じように『強欲』自体が罪ではないと考えている。むしろ、強欲なのは良いことだと私は思っている。あらゆるものを欲すると言うことはそれはあらゆるものを手に入れようと必死に努力をすると言う心意気でもある。私は頑張る人間が好きだ。だから、『強欲』は罪じゃないと理解している
だけど、私は同時に『強欲』が罪になる時もあると思っている。『強欲』が罪となるのは他人の物を力づくで奪うときだ。強欲であることは努力家である証だ。しかし、努力をせずに楽をして誰かのものを奪う
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